第2話 王子様の婚約者選定のお茶会にお菓子に釣られて出席することにしました

私、フランソワーズ・ルブランは丁度その時は六歳になっていた。


我がルブラン公爵家はこのエルグラン王国の北東に位置しており、その北部には広大な『魔の森』が広がっていた。我が公爵家はその『魔の森』からの魔物の侵入を防いでおり、強力な軍事力を誇っていた。何しろこの大国エルグラン王国の武力を支えるのは我がルブラン公爵家なのだ。


父のテオドールは我が国の『剣聖』と並ぶ剣の実力を持っており、母は他国からは『破壊の魔女』の二つ名で怖れられている世界最強クラスの魔術師だった。

当然その下にも名だたる騎士や魔術師が揃っていたのだ。

そんな中で育った私は剣術や魔術はそこそこ使えたが、礼儀作法はそれなりだった。


そのルブラン公爵家の長女がこの私、フランソワーズ・ルブランなのだ。


剣術は日々、父麾下の騎士や、父自身に鍛えられ、魔術は母やその配下の魔術師に鍛えられていたのだ。


そんな我が公爵家だが、食事は貧しかった。質実剛健、質素倹約とデカデカ書かれた紙がいたるところに張られていて、贅沢は敵だ、好き嫌いはいけないとか、折にふれて言われるんだけど。

何故この大国エルグラン王国の武のルブランと他国に怖れられている我が公爵家の食事が貧しいかと言うと、2代前の曾祖父様がラクロワ公爵家に嵌められて、領地半減になったからだそうだ。

ラクロワ公爵家は武のルブランと並びこの国を支える文のラクロワと言われており、宰相や文官を次々に輩出している家なのだ。頭は当然我が家よりも良いはずだ。

だからそんな奴と口で争っても勝てるはずはないのに、馬鹿な曾祖父さんはやってしまい、ものの見事に負けてしまったのだ。

本当に馬鹿だ。


そして、領地半減になってもなお同じだけの戦力を整えているので、食事が貧しくなるのは仕方がないのだ。


それと我が領地は税金の額が3割と他領よりも少ないのだ。なんでも、我がルブラン家のご先祖様がそう決めたらしい。他領は4割は当たり前で、他国では5割のところもあるのだとか。

当然、領民の我が公爵家への忠誠は高く、いざとなれば全領民50万人が武具を持って我が城に馳せ参じてくれることになっていた。


でも、それは良いんだけど、偶には美味しいものをお腹いっぱい食べたいと私は思うのだ。


まあ、魔物の肉は食べ放題なんだけど。


偶には魔物肉とピーマンのハンバーグでなくて、牛肉のステーキが食べたい……



「フラン、ちょっといいかしら」

「なあに、お母さま?」

私は母に呼ばれて少し警戒した。


何しろこの前は『冒険』と言われて喜んで行ったら、食べ物もほとんど無しに100キロも離れたところから歩かされるところだったのだ。

次やるなら絶対に食べ物は五日分はもらわないと行かない。ケーキは三個くらいはもらわないと、絶対に行かないんだから……

私は子供心にそう誓っていたのだ。


「実はね、王妃様からお茶会の招待状が来てね。あなたにも来て欲しいとの事なのよ」

「『お茶会』ってなあに?」

そう、無知な私は知らなかったのだ。それが女のどろどろした戦いだなんて。


「そうね、おめかしして着飾ってみんなでお茶を飲むところなの」

「うーん」

私は難しい顔をした。


「どうしたの? きれいな衣装を着れるのよ」

「走り回れないから嫌だ」

私は首を振って言った。この時は飾りのついた衣装を着るよりは剣を持って『魔の森』を駆け回っていたかったのだ。


「えっ、おいしいお茶も飲めるのよ」

「この前のお茶は苦かった」

そうだ。この前飲まされたのは、東の国から来た今王都の貴族の間で流行っているという抹茶とかいうもので、とても苦かったのだ。


「あれは特別よ」

お母さまは笑って言った。


「そう、それは残念ね。王宮のシェフがよりをかけて作ったお菓子やケーキがいっぱい出てくるのに」

「行く! 絶対に行く!」

私は即決だった。


今なら絶対に断ったのに、単純な私はお菓子やケーキに釣られてしまったのだ。

だって我が家にいてもそんな物はめったに食べられないのだ。釣られても仕方がないわ!


私はその時はそのお茶会が王子様の婚約者選定のお茶会だって知らなかったのだ。

おいしいお菓子に釣られて行ったのが間違いの始まりだった。

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『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://kakuyomu.jp/works/16816927863351505814


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https://tsugirano.jp/


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