第27話いい加減な近衛騎士も礼儀作法の先生の脅しには必死に従いました

なんと、次の日の朝に行方不明になった少女は見つかったと報告がきた。騎士達もやればできるじゃない! 私はホッとしたのだ。これで行方不明の者たちの行方もある程度の事は判るだろうと私は思ったのだ。詳しい報告を聞くまでは。


なんと、娘は村の中を歩いているのを保護されたそうだ。

何でも、馬車に乗せられて気付いたら馬車から落とされたらしい。

何分早朝だったもので、誰も見ていたものがいなかったそうだが。


「で、奴らのアジトは判ったの?」

私が報告に来た近衛騎士団長に聞くと、


「いえ、それは」

騎士団長が首を振ったのだけど。

こいつら、何やっているんだろう?


「他に行方不明になった人々は見つかったの?」

「いえ、それもまだ」

「直ちにその救出された女の人がどこから運ばれてきたのか探りなさい」

私が半分切れて言うと、

「それは難しいでしょう。女は目隠しされていたんですよ」

騎士団長が何を言っているのかという目で私を見てくるんだけど。


「そんなの当然でしょ。でも、少なくとも馬車から転がされたんだったら馬車がどちらの方向から走ってきたかは判るでしょう。その方向を虱潰しに探したの」

「いえ、それは」

騎士団長が口を濁した。


「エリクは何をしているの」

私が私の部下のことを聞くと


「エリク殿は現場に残られて色々と調べられているようでしたが」

「じゃあなんであなた達はここに帰って来たの? あなたも直ちに戻ってエリクを手伝いなさい」

「なんで私がエリク殿を手伝わなければならないのですか」

「騎士団長。今の総指揮官は私です。その私に逆らうのですね」

「いえ、そのような」

不満タラタラでボランは言ってくれるんだけど。

こんな使えないやつをよく近衛にしておくものだと私は呆れた。我が家なら直ちに魔の森の警備に回してやるのに。そうすれば少しは使えるようなるだろう。


「フランソワーズさん。いつまでやっているのですか。午後の授業は始まっているのですよ」

そこへ怒り顔でフェリシー先生が来た。また厄介な奴が……


「しかし、まだ事件が」

私が言い募るが、


「その事はあなたがやらなくても近衛騎士団長がやってくれるでしょう」

さも当然とばかりにフェリシー先生が言ってくれた。


「しかし、一刻も早く人攫いのアジトを見つけないと攫われた人たちが……」

「それも当然騎士団長らがやってくれるでしょう」

フェリシー先生は言ってくれるんだけど。


「騎士団長。そうですわよね」

ニコリとフェリシー先生が笑って騎士団長を見た。

「それは当然です」

騎士団長も頷いてくれるんだけどねこんな奴らに任せたらいつまでかかるか判ったものではないではないか……


「聞きましたか。フランソワーズさん。近衛騎士団長は今日の夜までには必ず敵のアジトを見つけ出してくれるそうです」

「えっ、いや、ローランド男爵夫人、そんなことは」

騎士団長は慌てて否定しようとした。


「なんですか。ボラン伯爵。まさか出来ないとおっしゃるのですか」

フェリシー先生の周りの温度が二、三度下がったような気がした。


「い、いえそのような」

何故か騎士団長が口ごもる。何故かいつも威張りまくっている騎士団長もフェリシー先生の前では大人しい。

「そうでしょう。そうでしょう」

フェリシー先生は頷いてくれた。


「ただ、最近、私は近衛騎士たちの規律が乱れているのではないかと思うのです。ついこの前も誘拐未遂がありましたし」

そういうとフェリシー先生は騎士団長を見たのだ。


「まさか、近衛騎士団全体でその件についてかかわっていたということはありますまいでしょうね」

「と、当然です」

「判りました。半日位内で誘拐犯のアジトを見つけられたら陛下に上申することは止めますが、もし、半日位内で敵のアジトが見つからない場合は、陛下に上申して近衛騎士に1ヶ月の礼儀作法補講を全員に実施いたしますから覚悟をしておいて下さい」

「そ、そんなむちゃな」

「なら三時間以内にしましょうか? すでに陛下には話してはあるのです。陛下も私の意見には頷いておられましたが」

そのフェリシー先生の言葉に近衛騎士たちはびくりと飛び上がったのだ。


「判りました。直ちにやります。おい、行くぞ」

騎士団長は慌てて近衛騎士達と飛び出していった。


近衛騎士たちもフェリシー先生の補講は嫌みたいだった。


「さ、フランソワーズさんもこれでちゃんと勉強ができるでしょう。あなたのような子供が指揮を取るなどまだ早すぎるのです。今は大人に任せておきなさい」

フェリシー先生はとてもまともなことを言ってくれるんだけど、それは礼儀作法についてもそう言ってほしいと思う私は間違っているんだろうか?


私はつくづくそう思ったのだ。

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