第28話 魔王の待つ鉱山に皆で向かいました

フェリシー先生の脅しがあったからか、それから三時間後にはアジトが発見された。

住民から怪しい建物があるとの通報があって騎士団が直行したんだそうだ。でも、既に誰もいない状態だった。

帰って来た騎士たちはみんなとても喜んでいた。でも、犯人たちは全く捕まっていない状態だった。

こんなのでは喜べない。


それに、何かすべてがお膳立てされているみたいで、変だった。何故このタイミングで通報があるのだ?


でも、そう思ったのは私だけだったみたいで、みんなとても喜んでいた。


伯爵など

「近衛騎士団長のお陰で領内の行方不明者が見つかって感謝の言葉もありません。本当にありがとうございました」

と胡散臭い笑顔で言っていた。


単純な騎士団長は喜んでいたけれど、絶対に何か変だ。


私はそれとなく注意することにしたのだ。

まあ、私一人ならば余程の事がない限り大丈夫だけれど、グレースやメラニーまではなかなか守れない。


「まだ犯人が捕まっていないからあなた達も注意した方が良いわよ」

私が言うと


「まあ、フランったらこの離宮のような伯爵邸にいるのだし、近衛の方々が守ってくれているから問題ないでしょ」

グレースは言うし、


「エリク様。怖いです」

と言ってピンク頭は私の騎士に縋りつくんだけど。

まあ、誰が一番強いか即座に理解したピンク頭は凄いと思うけれど……いや、こいつは絶対に顔で選んだだけだ。

でも、縋りつく相手は誰でもいいのか? 私はピンク頭の無節操ぶりに頭を押さえた。


「私の事よりもフランソワーズ様は大丈夫なのですか? 公爵家のご令嬢ですし、狙われやすいのでは」

メラニーが心配して言ってくれたのに、


「大丈夫よ。フランは皆が恐れる『魔の森』もわが物顔で歩けるのよ。今では魔物の方がフランを見かけたら逃げ出すんだから」

「嘘ーーーーー。凄い、普通は魔物から人間が逃げ出すのに、魔物が逃げ出すなんて! 魔物にとって魔物以上の存在って、超化け物?」

グレースの言葉尻に乗ってピンク頭が言ってくれるんだけど、超化け物って何よ!


「ローズ、そこは魔王じゃない?」

「そっか、魔物の王で魔王ね」

二人は私を見て笑って言ってくれるんだけど……


ふん、ムカついたからこいつらは守ってやらない!

私は心に決めたのだ。




そして、今日の午後からは鉱山見学だった。


エルグラン王家の力の元となった鉱山を見に行くんだそうだ。


「なんか面倒くさい」

ピンク頭がぶつぶつ言っている。


私は鉱山なんて行ったこともないので、行く気満々だったんだけど……


「アンタなんて格好しているのよ」

ピンク頭が私の格好を見て馬鹿にしてきた。


「何言っているのよ。鉱山に入るんでしょ。出来るだけ動きやすい格好しないといけないじゃない」

私がさも当然のように言った。


「でも、何よ、そのダサい格好は」

「はああああ! 何言うのよ。鉱山に行くのにはとても動きやすい格好よ」

私は自慢げに服装を見せたら、皆から白い目で見られてしまった。メラニーまで私を残念なものを見る様に見るのは何故?


私は黒と緑と茶色の彩色の上着に長ズボン、更にはヘルメットまでかぶっていたのだ。でも、皆はワンピース姿に靴だけは動きやすい靴なんだけど。


「フランソワーズさん。私は確かに動きやすい格好とは言いましたが、その恰好はさすがに」

先生まで言ってくるんだけど。

「でも、鉱山で働く人はこういう格好って聞きました」

私の言葉に先生は首を振ってくれた。


「まあ、良いでしょう。時間もありませんし。でも、その腰の剣は置いて行きなさい」

「えっ、でもこれは私のお守りで」

私が腰のエクちゃんを大事そうに持つと、


「戦いに行くわけではないでしょう。どこの国に鉱山の見学に行くのに宝剣を持っていく者がいるのですか」

「でも、エクちゃんが連れて行けって訴えてくるんです」

「いい加減にしなさい。フランソワーズさん。剣が物を言うわけは無いでしょう」

フェリシー先生が怒り出したんだけど……

「エクちゃんがそう言うのに……」


私は怒りのフェリシー先生と剣を見比べて諦めたのだった。

この剣幕のフェリシー先生に逆らうのは得策ではないと。


でも、先生の機嫌を損ねても剣を持っていけばよかったと後で後悔することとになったのだ。

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