第29話鉱山に不吉な気配を感じました
今回の鉱山への移動では、また、候補者四人で一つの馬車に乗った。
今回はおやつの持ち込みは厳禁だとフェリシー先生からきつく言われたけれど、1時間もかからない移動で流石の私もおやつを食べる事は無いと思っていたのだ。
なのにだ。
「フラン様。これはいかがですか?」
メラニーが馬車に乗るなり、持ってきたリュックサックの中からお菓子を取り出してくれたのだ。
それもなんと、アドが並んで買ってきてくれたというハッピ堂の焼菓子だったのだ。
「えっ、メラニー、フェリシー先生はお菓子は禁止だって仰っていらっしゃったんじゃないの」
私が驚いて聞くと、
「ま、別に少しくらい良いのではないですか」
メラニーが平然と言ってくれるんだけど。
「いや、でも」
躊躇する私を前にメラニーが1つ目を食べてしまったのだ。
「うそ、メラニー、あなたが先生の言うことを守らないの?」
グレースが驚いて聞いた。そうだ。そもそもメラニーはフェリシー先生のお気に入りのはずなのだ。
「別に1から10聞く必要はないかと。ここでお菓子を食べたところでどうなるものでもないですし」
平然とそう言うとメラニーは私の口の中に1つ入れてくれたのだ。
「美味しい!」
私は唖然とする前にとろけるお菓子に感激した。
ま、確かに今更一つくらいマイナスが増えたところでどうなるものでもない。
「えっ、そんなに美味しいの? じゃあ、私も一つもらうわ」
ピンク頭もあっさりと食べてくれた。
「グレース様は食べられないのですか?」
「私はいらないわ」
「そうですか。このお菓子はハッピ堂の新作なんだそうです。せっかくお持ちしましたのに、残念ですわ」
そう言うとメラニーがもう一つ食べるんだけど。
「そうなんだ。グレースは要らないんだ」
私がもう一つ食べた。
グレースは悔しそうにそれを見ていた。
「本当に食べないなら、私があなたの分も食べてあげるわ」
ピンク頭が強引に残ったお菓子に手を出そうとした。
「ちょっと待ってよ。私は何も食べないとは言っていないわよ」
グレースはそう言うと慌てて、手を伸ばして食べたんだけど。
「えっ、あなた食べないんじゃないの」
ピンク頭が白い目でグレースを見た。
「何も食べないなんて言っていないじゃない。あなた達を減点させるのは忍びないから食べてあげたのよ」
「良く言うわね。さっきから食べたそうにしていたのに」
「グレース様は本当に新しいものに弱いですのね」
グレースの言い訳にピンク頭とメラニーがからかうんだけど。
いつの間にこれだけ仲良くなったんだろう。最初は最悪だったのに!
「フランの食い意地には負けるわよ」
「それはそうです」
「当たり前でしょ」
三人が何か酷い事を言ってくれている。
「何言っているのよ。私は食い意地なんてそんなに無いわよ」
「どこがよ」
「誰が信じるんですか」
「鏡見なさいよ」
私のひと言に三人が一斉に反論してくれるんだけど。
「……」
ムカついたけれど、それよりも私は気になることがあった。
何か鉱山に近付くにつれてこの領地に入った時に感じた禍々しい感じがどんどん大きくなってくるんだけど……
こんな感じは今まで感じたことも無かった。
絶対に何かいる。
「それよりも、あなた達は馬車に残ってた方が良いわよ」
私は残りの三人に警告してあげたのだ。
「はあああ」
「何言っているんですか」
「自分一人だけ点数上げようと言うの」
三人がむっとして私を見てくるんだけど
「この鉱山には何かいるわよ」
私が言ってあげたんだけど。
「フラン様より、強いものはいないでしょう」
「そうよ。魔の森の主を跪かせたあなた以上の化け物がいるわけないじゃない」
「何しろ我が国の剣聖を張り倒したんだから」
折角三人には警告してあげたのに、三人とも酷い事を言ってくれた。
ちょっとこの感じは私でもやばいと思ったのに……。
「もうどうなっても知らないからね」
私は最後の警告をしてあげた。
*************************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございます。
この話もあと少しで完結です。
つぎラノ投票まだの方は是非ともよろしくお願いします。
https://tsugirano.jp/
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』上から五番目にノミネートされています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます