第17話 王宮の食事を食べられないのでもうやめて帰ろうと思った時に王子様がお菓子を持って忍んできてくれました

王宮のおいしい食事を食べ放題という事でこの婚約者選定会に出る事にしたのに、その食事の時も礼儀作法を厳しくさせられて、私は満足に食事もとれなくなってしまった。

歩く姿勢だけでなくて、ナイフとフォークの使い方もなっていないと注意されたのだ。

私も一応公爵家の人間で、ピンク頭みたいに音を立てて食べていないのに、優雅さに欠けるとか言われて何度もやり直させられて最悪だった。


ピンク頭よりは余程マシなのに……

そう文句を後で言ったら、「当たり前でしょ。平民の私と公爵令嬢のあなたを比べないで」

ピンク頭に言われたけれど、まあ、そのとおりなんだけど、なんか違う!

いくらお貴族様とはいえ、6歳にそこまで求めるか?


口の開け方が大きいだの、小さく開けたらはいらないじゃないと思ったら、その小さな口の大きさに合わせてもっと小さく切れだの……何回もやり直しさせられて、殆ど時間内に食べられなかった。

それにそんなに小さく切ったらほとんど食べられないじゃない! 食べた気もしないし……


当然デザートなんて、食べる時間もなかった……


そんなこんなで王宮で与えられた部屋に帰った時は、もうフラフラだった。


「もう帰りたい」

私はぽつりと言った。

こんなの詐欺だ。アドがデザート食べ放題だと言ったから参加したのに……全然食べられないし。


さすがの私も我慢も限界だ。


それにお腹空いたし……


成長期の子供に食べさせないってどういう事だ?


私も少し怒りだした時だ。


どさりとバルコニーから音がしたのだ。


すわ、曲者か?


剣を取ろうとして持って来ていないことに気づいた。


エクちゃんを持っていこうとして、シモーヌらに止められたのだ。

アリスと呼ぼうとして連れてきていないことに気付いた。


王宮の客室にはアリスを連れてくることも出来なくて、王宮の侍女が交代で詰めてくれてるんだけど、まだ親しくない、と言うか、普通侍女は戦闘に向かない。それに侍女も採点していますから言動にはくれぐれもご注意くださいとシモーヌには注意されているんだけど……。

こんな風に、食事も満足に食べられないんならアドの婚約者に何かなりたくないと思うんだけど。


それよりも外の不審な奴への対応だ。


まあ、剣が無くても私一人で魔術で対応できるんだけど。


私の魔術の腕前は剣術の上を行く。考えたら剣聖も魔術で弾き飛ばしてやればよかった。ルール違反だと思ったらから使わなかったけれど。お母様から言われて腕にお守り付けているけれど、いざとなったら捨てなさいって言われているんだけど、いざという時に捨てるお守りってなんだろう?

そう聞いたら、「あなたの周りの人たちのためのお守りよ」ってお母様が訳のわからないこと言っていたけれど……


外を見ると上からロープを投げ入れられたみたいだ。


誰かが下りてくるのか?


私は弾き飛ばすか丸焼きにするか悩んでいた時だ。


するすると小さい影が下りてきた。


「フラン!」

私が攻撃しようと構えているのを見た驚いたアドがいた。


「アド!」

私も驚いた。


「しっ」

口元に指をあてたアドが私に注意してきた。

どうやら、侍女に内緒で降りて来たらしい。


私は取り敢えず、アドを部屋の中に入れて、端にあった机の前に座らせる。


「アド、食事もちゃんと食べられないんからもう、止めて帰りたい」

私がぼそっと行った時だ。


アドが背中のリュックから箱を取り出してくれたんだけど。


「えっ?」

箱を開けるとそこには私の大好きなとろけるケーキが入っていたのだ。


「さあ、食べて」

「本当に、有難う」

そう言うと私はケーキに食らいついていた。

「美味しい」

私は幸せな気分になった。本当にこのとろけるケーキは私を幸せな気分にしてくれるのだ。


「これから毎日ケーキ持ってきてやるから、頑張って」

アドが言ってくれるんだけど。


「ええええ! でもこんな生活ずうーーーーっとは嫌だ」

「何言っているんだよ。他の貴族の家もどこもかしこも似たようなものだよ。大人になったら皆やらないといけないことだから」

「えっ、そうなの」

「そうだよ。フランのところのお母様も王宮ではマナーは完璧だったぞ」

「うーん、まあ、お母様はね」

外面は良いのだ。内面は鬼だけど。子供の私を平気で魔物の中に放置するし……


「ほらもう一個」

私の口の中にアドがケーキを放り込んでくれた。


「あ、おいひい」

このケーキなんでこんなに美味しいんだろう……


私が文句を言おうとする度に、アドはケーキを放り込んでくれたんだけど……


結局単純な私はアドのケーキ攻撃の前にあえなく続けことにしてしまったのだった。


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まだ、花より団子のフランでした。


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