第7話第一王子視点 お茶会でケーキを美味しそうに頬張る可愛い女の子を見つけました

俺はアドルフ・エルグラン、このエルグラン王国の第一王子で、今は7歳だ。


生まれた時から俺は王になるために母達から徹底的な帝王教育をされている。


母は、元々サンテール侯爵家の出身で、国王である父の婚約者候補として現ラクロワ公爵夫人らとの婚約者候補の争いに勝ったのだそうだ。

これで王妃になれるとの母の思惑は、父が今まで候補にも挙がっていなかった伯爵令嬢と婚約してしまって打ち砕かれたのだ。

そして、その伯爵令嬢が王妃になって、母は側妃となったのだそうだ。


これは母にとって屈辱以外の何物でもなかった。伯爵令嬢は、お妃争いに負けて頭にきた現ラクロワ公爵夫人に唆されて、父と深い仲になったのだとか。


侯爵令嬢だった母が、伯爵令嬢の下にいるという屈辱は、その伯爵令嬢が第二王子を産んだ産褥の中で亡くなるまで続いたのだった。一説によると母が毒殺したというのだが、いくら母でもそこまではしないと信じたい。


母はその屈辱を晴らすために、私が物心つくと同時に王になるべく教育をし始めたのだ。

今は母が王妃になったのだから、そこまで思い詰めてやる必要はないと思うのだが、母は何故か3年下の弟をとても気にしており、俺は余りやりたくない帝王教育を課されていた。


今回の婚約者選定のお茶会もまだ早いのではないかと、父が言ったのも聞かずに、なにかに急かされているように母が開いたのだ。


母としては、武のルブラン公爵家の令嬢を私の婚約者にしたいみたいだったが、私としては姿絵を見た瞬間、願い下げだった。どう見てもその姿は筋肉隆々のゴリラ女で、さすがの私もこんなゴリラ女を婚約者にするのは嫌だった。

普通は姿絵というものは、現実よりも良く描くのだ。良く描かれてこの絵だとすると、本物はもう化け物みたいな奴に違いない。

騎士たちからルブラン公爵令嬢の話を聞くと、その令嬢は5歳の時に大人でも入るのを躊躇する『魔の森』に一人で入り、その主のフェンリルを子分にして出てきたんだとか。


そんな化け物女は絶対に嫌だった。


母も流石にこの姿絵を見て、それ以上俺に勧めてくることはしなかったが。




お茶会は本当に面倒だった。今までに何回か母のお茶会に参加させられているが、その度に令嬢たちが俺に群がって来るのだ。俺は婚約者候補をこんなに早く選ぶつもりはなかったが、母にやいのやいの言われて参加したにすぎない。


そして、女どものくだらない話につきあわされて、果ては俺を巡って女どもで喧嘩になるのだ。


お茶会が始まって早速女どもが俺に群がってきた。本当になんとかしてほしい。

俺はくだらない話に付き合うのもすぐに飽きて周りを見ると、一人だけ離れた所に女の子が座っている。


何故こいつ一人だけそこにいるのだ?


その子は青いくりくりした目を見開いて、ケーキをとても嬉しそうに食べているのだ。

俺は女どもに群がられるのもムカついたが、無視されるのもムカついた。

王子様の俺よりもケーキのほうが魅力的なのか?


「ちょっと失礼」

俺は群がる女どもから抜け出ると、その女の子の横に行ったのだ。



「美味しい! 本当に生きてて良かった」

女が大げさに感動しているのだが、


「そんなにうまいのか?」

俺は思わず聞いていた。


「うっ」

女の子は話しかけられるとは思ってもいなかったらしく喉をつまらせてくれたんだけど。


「おい、大丈夫か」

背中を俺は慌てて叩いて、水を飲ませてやった。


「もう、いきなり話しかけないでよ」

女は俺にタメ口で文句を言ってきた。

俺は女の子にタメ口で話しかけられるのは初めてで新鮮だった。


「なんであなたがここにいるの?」

女はやっと俺が誰なのか判ったみたいだった。


「いや、あまりにも美味しそうに食べているから」

俺が言うと


「そう、このケーキ、口の中でとろけて本当に美味しいのよ」

「そうなのか?」

普通のケーキと変わらないように見えるが?


「一口食べて見たら」

女の子はそう言うと一口分に切ってあったケーキを俺の口の中に入れてくれたのだ。


「えっ」

「きゃっ」

「あの娘、殿下に食べさせした」

周りがなにか叫んでいる。


「本当だな。こんなに美味しいケーキがあったんだ」

こんなケーキは食べ飽きているのだが、俺は女の子の関心を買いたくて頷いていたのだ。


「でしょう。本当に王宮のシェフって最高よね」

そうしたら女の子はニコリと微笑んでくれたのだ。


それがとても可愛かったのだ。

俺が恋に落ちた瞬間だった。


自分でも真っ赤になったのが判った。


キャーキャーと周りの女の子の声が煩いんだけど。


「アド!」

そこに来なくていいのに俺の側近のジルベールが呼びに来た。

俺は仕方なしにその場を離れて、女たちの所に戻ったのだ。

でも、俺はいい加減に婚約者候補の姿絵を見ていたからか、こんな可愛い子が婚約者候補にいたのを思い出せなかった。


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『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://kakuyomu.jp/works/16816927863351505814


が皆様の応援のお陰様で『次にくるライトノベル大賞2023』ノミネートされました。

https://tsugirano.jp/



まさか、ノミネートされるなんて思ってもいませんでした。

全部で2000冊以上ある新刊の中からの選出に感動しています!


本当にありがとうございます。

推薦して頂いた方には感謝の言葉もございません。もう気分は皆様のおかげで感謝感激雨あられです。(古い!)

ここに載ることが出来るなんて夢みたいです!

それも上から五番目、パソコンでは一列目です。(あ行だから当然なんですが……)


そして、ここから本投票です。単行本は60冊ノミネートされていてベスト10になればデカデカと発表されます。皆々様の優しい心遣いでベストテンに入らせていただければ…………


投票して頂けたら嬉しいです!


このお話も面白くなるよう必死に書いていくのでよろしくお願いします。

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