第6話 王子様の部屋で見せてもらった私の姿絵は本当にゴリラ女でした。

「これも美味しい」

私がケーキを食べまくっている時だ。


「変だな、どこにもゴリラに似た女なんていないじゃないか」

男の声が後ろからした。

「リシャール、お前がルブラン公爵令嬢は魔獣を取っては掴んで投げ飛ばしてるほどの怪力で、容姿はゴリラそっくりだって言ったんだぞ」

私はその声を聞いて、プッツン切れていた。

そうか、コイツラが私の変な噂を流したのか。


とっさに私は足を突き出したのだ。シモーヌが見ていたらお説教コース一直線だっただろう。


ものの見事にリシャールと言われた男は私の足に引っかかってそのまま地面に激突してくれたのだ。



「痛ってええええ」

男は手と顔を押さえていた。

男たちは私よりも一回りくらい大きかった。12才前後だ。このお茶会では最年長だろう。

まあ、最年長だろうが、無かろうが私をゴリラ扱いしてくれたリシャールは許せなかったが。


「あああら、御免遊ばせ」

私はそう言うと優雅に立ち上がったのだ。



「お前、何してくれるんだよ」

リシャールがムッとして私を見下ろしてくれた。


「それを言いたいのは私よ。あなたがお探しのフランソワーズ・ルブランは私ですけれど」

私は精一杯背伸びして言ってやった。


それを言った時の二人の格好は見ものだった。


「ええええ!」

「リシャール、どこがゴリラだよ。普通に可愛い女の子じゃないか」

相棒が言ってくれるが

「いや、だって俺は王宮騎士団からフランソワーズ嬢は魔物を取っては投げ捨て取っては投げ捨てしているって聞いたぞ」

リシャールが私が言ってくれるんだけど……たしかに魔物退治は普通にしているけれど、取っては投げ捨てはしていないはずだ。


「そんなわけ無いじゃない」

「うーん、それに、俺はアドからフランソワーズ嬢の姿絵を見せてもらったけれど、本当にゴリラ女だったぞ」

リシャールが言ってくれるんだけど、それはどういう事だ?


「アドって誰よ?」

私は目を据わらせていった。


「アドルフだよ」

「アドルフって?」

「お前、何言っているんだよ。この国の第一王子殿下だろう」

「ああ、そんな名前だったわね」

そう言えば最初に王妃様がおっしゃっていたようにも思う。

まあ、あんまり興味がなかったから聞いていなかったのだ。


でも、その王子様のところにある姿絵がゴリラってどういう事だ?


「判った。そのアドが持っているのね。ゴリラの姿絵を」

私は確かめに慌ててその王子様のところに行ったのだ。


さっと見ると。王子様は女の子に囲まれてその相手をしていた。


でも、見た感じ退屈そうだ。これなら良いだろう。


私のゴリラ絵の方が大切だ。もし、この王子様が書いたのならば絶対に〆てやる。


私はやる気満々で王子様の前に行ったのだ。


「あなた、ちょうど良かったわ」

私はおなざりに返事している王子様のところに行くと


「ちょっと来てくれる」

と強引に王子様の手を引いたのだ。


「えっ、ちょっと」

「あちらでリシャール様が呼んでいますわ」

そうささやくと強引に王子様を立ち上がらせてリシャールの所に連れて行ったのだ。


「あちゃーーー、本当に連れてきたのかよ」

リシャールは呆れて言ってくれた。


「何だ。リシャール?」

「いや、フランソワーズ嬢が自分の姿絵を見たいとおっしゃられてだな」

「えっ、あれをか?」

王子様は驚いて私を見た。


「あなたがフランスワーズ嬢?」

王子が私の顔をまじまじと見たんだけれど……とても驚いた顔をしている。


「やっぱりあなたがゴリラ絵を描いたの?」

ムッとして私が言うと、


「いや、俺は描いていないぞ!」

「よく言う。こんなゴリラ女は嫌だとか言っていたじゃないか」

「それを言うならばお前だろう! こんなゴリラ女と見合いなんて俺なら逃げるって言っていたじゃないか」

二人が罪のなすり合いをしているんだけど。


「どうでもいいわ。見せて頂戴」

私が手を差し出すと


「見ても怒るなよ」

王子様が言うんだけど、変な絵だったら怒るわよ。当然!



私は連れて行ってもらった王子の部屋が立派すぎて驚いた。私の部屋とは全然違う。

机もソファもとても立派な物だった。子供の私が見てもそう思ったのだ。

まあ、貧乏公爵家と比べるのが間違っているとは思うけれど。


「これだけど」

王子様が見せてくれた絵は本当にゴリラそのものだった。

何なのだ。この毛むくじゃらの毛が全身に生えていて真っ黒なゴリラが服を着ているんだけど。

「何なのよ。これは」

私はその絵を見てビリビリに引き裂きたくなった。


「見てみろよ。フランソワーズ・ルブランになっているだろう!」

王子様が下に書いてある文字を指差した。


「だろう。俺が言うのも納得できるだろう!」

リシャールが合意を求めて言ってくるんだけど。


「誰よ、こんなのを作ったのは?」

「いや、こういう姿絵は基本的にお前の家から贈られてくるものだと思うぞ」

リシャールが言ってくれるんだけど、ちょっと待ってよ! これはどういう事?


ブルブル震える私を見て、王子様も怖れたみたいだった。


「この絵はこちらで処分しておくから、それよりも王宮料理人が腕によりをかけたケーキを持ってきてもらったんだ。一緒に食べないか」

王子様が笑って言ってくれた。


「いいや、それよりも犯人を捕まえないと」

「まあ、良いじゃないか」

王子様が出してくれたのはさっきのとろけるケーキだったのだ。


私の目が点になる。


「ほら、一つ」

王子様は私の口の中に一つ放り込んでくれた。


「美味しい」

口の中で本当にとろけるのだ。


私は犯人捜しは取り合えず、後にすることにしてケーキを楽しむことにしたのだ。

話してみたらアドも側近二人も気さくで話の分かる三人だった。


この時間が終わる頃には、私達は王子様を「アド」と私のことは「フラン」、二人の側近を「リシャール」と「ジルベール」と気安く呼べるようになっていた。


王都で私に男友だちができた瞬間だった。


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フランは男友達のつもり……アドは?


これからもどんどん続き書いていくつもりです。


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