第5話 突っかかってきた公爵家の娘を撃退しました

「アド!」

そこに王子の側近と思しき人が呼びに来たのだ。


まあ、良いか、もっとこのケーキ食べたいと思ったときだ。


もうそのケーキは残っていなかったのだ。


私は知らなかったが、私があまりにも美味しそうに食べるからみんながこっそりと食べていた事に。


ええええ!

やっちゃった。最後の一つを王子の口の中に入れちゃったみたい。


私はがっかりしたのだ。


「ちょっとそこのあなた」

その時、私の横から声がかけられた。


「なあに?」

私は横の女の子を見た。

茶髪の女の子はむっとした顔をしていた。でも、怒った顔もとてもきれい。


「あっ、ゴメン、あなたもあのケーキ食べたかったの?」

「それは私もそのケーキは好きですけど……そうじゃなくてね、あなた、殿下がここまでいらっしゃったのは私に話しかけるためにいらっしゃったのよ。それを何横取りしてくれたのよ」

女は理不尽なことを言ってくれたんだけど……


「そんなの知るわけ無いじゃない。話したかったらあなたが話せばよかったでしょう」

私はムツとして言った。そもそも王子から話しかけられたから、美味しいケーキの最後の一個を王子の口の中に入れる羽目になってしまったのだ。こいつが先に話しかけてくれていたら私もケーキをもう一つ食べられたのに!


「ちょっと、そこの貴方。何よ、その言い方。こちらの方が誰か知らないの?」

その横のこれまた薄い茶髪の女が言ってくれたんだど。このお茶会で私より上位の子なんて王妃様と王子様以外はいないはずだ。愚痴愚痴言われる筋合いはないと思う。


「知るわけないでしょ」

私はむっとして言い返した。普通は自己紹介して話しかけろよ。


「聞いて驚いても遅いわよ。こちらのお方はラクロワ公爵家のご令嬢グレース様よ」

女が得意になって言ってくれたんだけど。


そうか、こいつが宿敵ラクロワ家の娘のグレースか!

アリスとかシモーヌとかが煩かったのよね。グレースだけには絶対に負けないようにって。私はどうでも良かったんだけど。


「ああ、あんたがごうつくじいのところのお孫さんなのね」

私は頷いてやった。ラクロワの先代が良く我が家のおじいちゃんの所に遊びに来ていたのだ。その前ラクロワ公を祖父が業突張りの爺さんと言っていたのだ。


「ご、ごうつくじい……って何?」

このグレースはごうつくじいさんの事を知らないみたいだった。

「えっ、私も良くは知りませんわ」

隣の女もわからないみたいだった。


「というか、あなた誰なの。私は名乗ったんだから名乗りなさいよ」

グレースがきっとして言ってくるんだけど。

周りの取り巻きに名乗らせたのよね……

本当に面倒くさいわ!


「私はフランソワーズよ」

「フランソワーズ?」

「そう、フランソワーズ・ルブランよ」

私は何でも無いように言った。


「えっ」「ヒェぇぇぇ」

「も、申し訳ありません」

「お、お願いですからいきなりお手打ちは止めて下さい」

グレースの横の二人が悲鳴を上げて平伏しそうになっているんだけど。

その姿に私も唖然としてしまったんだけど。



「ええええ!」

「あの子が泣く子も黙るルブランのゴリラ娘?」

「何でも魔物を掴んでは投げるっていう」

「魔物たちもその姿を見ただけで逃げ出すんでしょう」

「見た目はゴリラよりもすごいっていう」

なんか外野が煩いんだけど。


「でも、どう見ても普通の女の子よ」

「というかめちゃくちゃ普通の令嬢なんだけど」

「誰よゴリラ娘なんて言ったのは」

「リシャール様よ」

「私もリシャール様がそうおっしゃっているのを聞いたわ」


私の聞きたいことまで皆言ってくれた。誰だ? リシャールって。私は今度リシャールって奴に会ったらとっちめてやろうと思った。


「別に取って食べたりしないわよ。座りなさいよ」

「いえ」

「私達はこれで」

「失礼します」

二人はさああああっと逃げていったんだけど。


「ちょっと待ちなさいよ」

グレースまで二人を追って逃げていったんだけど。


私の周りから誰もいなくなってしまったんだけど……


他の皆は、私を遠巻きに見ている感じなんだけど。


動物園の動物ってこんな感じなんだろうか?


まあ、いいか、私は一人でケーキを堪能したのだった。


***********************************************************************************

『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://kakuyomu.jp/works/16816927863351505814


が皆様の応援のお陰様で『次にくるライトノベル大賞2023』ノミネートされました。

https://tsugirano.jp/


まさか、全部で2000冊以上ある新刊の中からノミネートされるなんて思ってもいませんでした。

これも本当に応援して頂いた皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

それも上から五番目、パソコンでは一列目です。(あ行だから当然なんですが……)


本投票もよろしくお願いします。


フランとアドの仲はどうなるのか? これからどんどん話は進んでいきます。

こちらもブックマーク等して頂けたら嬉しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る