第33話 付けているのを忘れていた魔封じの腕輪を外して魔王をやっつけました

私を魔王の生贄にしようとした伯爵が私のエクちゃんに弾き飛ばされて魔王の口の中に消えて行った。

可哀想だけどこいつが今までにしたこととは到底許されるべきではない。こいつのせいで何人の女の人の命が失われたことか。後で聞いた事だが、魔王のためにこの伯爵領の騎士団が主体で人さらいを行っていたらしい。許されるべきことでは無かった。多くの騎士が騎士身分はく奪、処刑、あるいは牢に入ることになったらしい。


当然それを命じた伯爵は命をもってして償われるべきだと私は思った。



そして、待ちに待ったエクちゃんが私の手の中にぴたりと納まったのだ。


魔王は何も気づかずにその私を口の中にそのまま放り込んだのだ。


私は剣を構えると思いっきり突き刺した。


「ギャーーーーー」

魔王のこの世とも思われない凄まじい悲鳴と共に、私は外に放り出されていた。


「ウワーーーー」

魔王は苦しさに坑道内をのたうち回っていた。


その振動で石が落ちてくる。


私はすべて障壁で防いだ。


のたうち回って、飛んで来た触手の一部をエクちゃんで叩き斬る。


「ギャーーーー」

また、魔王が痛みに叫んでいた。


斬られた触手はそのまま金色に輝くと消え去った。


「うーん、浄化されたのかな?」

私は呟いた。

こうなったらやるしかあるまい。


他の皆はいつの間にか坑道からは逃げ出したみたいだ。


これなら思いっきりやれる。


私が剣を構えた時だ。


「おのれ、小娘、よくもやってくれたな」

立ち直った魔王が憎悪の気配を私に叩きつけてきた。


「もう貴様だけは許さん」

魔王が叫ぶと周りのおどろおどろしい気配が収縮した。


そして、

「食らえ、地獄の一撃」

凄まじいおどろおどろしい気が私に襲い掛かって来たのだ。


「負けるか!」

私はエクちゃんをその奔流に叩きつけたのだ。


ガンッ


おどろおどろしい流れはエクちゃんに切りつけられて坑道の横にぶつかっていた。


ダアーーーーン!


凄まじい大音響とともに坑道全体が大きく揺れた。


石が一杯落ちてくる。


私はそれを障壁で防ぎつつ、耐えた。


振動の終わった後には巨大な横穴が開いていた。


「おのれ、小娘め」

魔王は今度は触手攻撃に変えたみたいだ。


しかし、エクちゃんを持った私には効かない。


私は次々に迫りくる触手を斬り刻んだのだ。


その度にさすが宝剣、斬り取られた触手が金色に光って浄化されていく。


「くっ、これでは埒が明かんか。ではこれでどうだ」

魔王がどす黒く光った。


「魅了じゃ」

そして、光が去った後には、そこには胡散臭い金持ちのボンボンが立っていたのだ。


私はぽかんとした。


一体魔王は何がしたいんだろう?


そして、気持ち悪い微笑みをこちらに向けてくるんだけど。


「そこの小娘、こちらに来よ。可愛がってやるぞ」

私の背筋に怖気が走った。


「何やってくれるのよ。喰らえ」

私はエクちゃんを構えるや、渾身の力で叩きつけたのだ。


「ギャーーーー」

胡散臭い男は私が切りつけた途端にまた、おどろおどろしい化け物に変わった。


私に切りつけられて粘液を撒き散らしながら。


「おのれ、おのれ、もう許さんぞ」

そう叫ぶと魔王はその体ごと私に襲いかかってきたのだ。


のしかかるように。

「くっそう」

私は必死にエクちゃんで斬りつけたが、エクちゃんで斬れるのはほんの少しで少ししか浄化できない。


このままでは私は魔王に押しつぶされてしまう。


そんな時、私は右手にした緑の腕輪に気付いたのだ。


そう言えばいざという時はこの腕輪を外せってお母様に言われていたのだ。


私はそれを外した。


腕輪を外した途端に、

ダアーーーーン

と一気に私の魔力が膨れ上がったのだ。


じゃまになった腕輪はそのまま魔王の口の中に放り込んだ。


「ギャーーーー」

魔王が叫んだ。


魔王はのたうち回っている。私につけられた腕輪ってそんなに酷いものだったんだろうか? まあ、あの母のやることだからそうかもしれない。私は少しムカついた。


そして、私は魔王と距離を取る。



私は自分の体の溢れかえる魔力の多さに驚いていた。


「何よ、これ、魔力が溢れかえっているんだけど」

戸惑ったが、これなら魔王にも勝てる。

私は喜んで剣を握り直した。


「き、貴様、何だ、その魔力は」

魔王は焦って叫んできた。


「ふんっ、行くわよ」

私はエクちゃんを振りかぶると一気に魔王に斬りつけたのだ。


「ギャーーーー」

魔王の絶叫が響き渡った。左の三分の一が金色に光って浄化されたのだ。


そして、もう一太刀。


「ギャーーーー」

更に魔王の叫びが続く。


更に右の半分が浄化された。


「待ってくれ、頼む。見逃してくれ」

なんかいきなり魔王が命乞いを始めたけれど。


お父様やお母様はここで見逃してやったって言っているけれど、そんな事したから多くの領民が死んだのだ。私は許すわけにはいかなかった。


「お前に殺された人々の恨み思い知りなさい」

そう言うと私は渾身の力を込めて魔王に斬りつけたのだ。


「ギャーーーー」

魔王は叫ぶと同時に全身が金色に光って全て浄化されたのだった。


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本来の魔力で魔王をも圧倒したフランでした……


ここまで読んで頂いてありがとうございました。


評価等まだの方は是非ともして頂けたら嬉しいです!

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