第12話5人の候補者を集めて選定会が始まりましたが、メンバーも選定する先生も変な人が多いです。

結局、アドの婚約者選定会は5人の女が集められて行われることになったのだ。


私達は王宮の会議室のような所に集められたんだけど、この前のお茶会に出たメンバーから基本は選ばれたそうだ。


赤髪の女の子を見たら

「げっ、悪役令嬢」ってその子が呟くのが聞こえたんだけど。

悪役令嬢ってなんだろう? 私には良く判らなかった。


でも、そこで、目立つピンクの髪の女の子を見つけた。女の私が見ても結構可愛い。それにまだ子供のはずなのに、胸が少しあるように見えるのは気のせいなのか?

こんな髪色の目立つ子いたっけ? 私が不思議に思っていると


「なんでヒロインがいるの?」

また赤髪の女の子が呟くのが聞こえたんだけど……

何のことか聞こうと思った時だ。


「あっ、王子様だ」

そう言うとそのピンク頭の子はいきなりアドに向かっていって腕にしがみついたのだ。


「えっ」

流石のアドも驚いていたが、

「殿下。ぜひとも私をお選び下さい!」

いきなりアピールしているんだけど。


何なのよ! あの子は!


流石の私もむっとした。なんか抱きつかれてアドが少し嬉しそうにしているように見えたんだけど……

それもムカついた。


「ちょっと、そこ、何をしているのですか」

メガネをかけた怖そうな女が注意した。


「すみません。ローズ。殿下からすぐに離れるのだ」

教会の服を着た男が慌ててピンク頭をアドから引きはがす。


「むやみに異性に触れてはいけないと教会では教えないのですか」

「いや、ローランド夫人。この子は元々孤児でして中々すぐには礼儀作法を身に着けられないのです」

「そこをきちんとするのが枢機卿の役割ではありませんか。今回婚約者選定候補の中に無理矢理入れられたのは枢機卿ですよ。それがこの様な子では」

「フェリシー、そろそろ時間よ」

「判りました。枢機卿くれぐれもよろしくお願いしますね」

怒り出した女に王妃様がおっしゃられて女は中央の壇に立った。


「皆様。私はフェリシー・ローランド。王宮の礼儀作法の教育を行っております」

ニコリと笑ってくれるんだけど、礼儀作法って私の一番苦手な奴だ。


「今回、アドルフ殿下の婚約者の候補者の皆様の礼儀作法に対しての教育を担当させていただきますので、よろしくお願い致します」

ええええ! それって最悪じゃない! アドはお菓子を美味しく食べていたら良いだけだって言ってくれたのに!


「私から今回の担当者を紹介させて頂きます。今回の責任者のマチアス・ファリエール宮内省長官です」

紹介された長官の顔は青白かった。そして、長官が私をちらりと見たのだ。その瞬間私はゾワリと悪寒が走ったのだ。なんでだろう……まだ、何も悪いことはしていないはずなのに。

母か父が酷いことをした可能性はある。できる限り近寄らないでおこうと私は心に誓ったのだ。


「マチアス・ファリエールです。よろしくお願いします」

ニヤリと笑った。その笑顔もとても不気味だった。


「そのとなりがエンゾ・ブロワ子爵で皆さんがいずれ入られる王立学園の学園長をしていらっしゃいます」

「エンゾ・ブロワです。よろしくお願いします」

こちらは人のいいおじいちゃんだった。


「そして、その隣が我が国のいえ、世界の剣聖であられるクレール・デュポア様です」

「宜しく」

軽く剣聖は頭を下げた。


そうか、こいつが剣聖か、いつもお父様が「あいつは性格が歪んでいる」とか「変態だ」、「しつこい」とか散々ブツブツ言っている。剣の勝負は互角だそうで、お母様を巡って熾烈な争いがあったらしい。お父様に言わせると楽勝だったそうだが……。お母様を勝ち取ったので、あまりにも可哀想だったから、剣聖の座は譲ってやったとお父様が自慢していたけれど、本当のところはわからない。


「そして最後がブノワト・オスマン嬢で魔術論理の先生です」

「ブノワト・オスマンです。神の導きでこのような所に来させていただきました。神に感謝を」

また、変なのが出てきたというのが私の素直な感想だ。

それに我が家と教会は喧嘩しているんですけど……


「では、候補者の紹介です。まず、グレース・ラクロワ公爵令嬢です」

最初はグレースかよ。

私は少しムッとした。


また、お父様が煩いのだ。なんで最初に我が家が紹介されなかったとか……文句はフェリシー先生に言って欲しい。


「グレース・ラクロワです。今度は殿下とゆっくりとお話したいです」

なんかグレースがぶりっ子している。それと連れ出した私への嫌味だ。本当にしつこいやつは嫌だ。


次は私だろうと心の準備をしていると

「次はリアーヌ・ギャロワ侯爵令嬢です」

言われて私は心の中で盛大にコケた。


「おい、フェリシー、次はフランだろう!」

アドも横から怒っているんだけど。


「殿下。この順番は地位ではなくて推薦者の年齢の順です」

と言われてしまった。

「推薦者?」

「はい、グレース嬢は学園長が、リアーヌ嬢は剣聖が推薦されました」

なるほど、確かに年は上そうだ。特に学園長は確実に。


「宜しいですか? ではリアーヌ嬢」

「リアーヌ・ギャロワです。この中では一番の年上ですので候補者の皆さんも困ったことがあったら何でも相談して下さい。個人的には剣聖様の一番弟子ですので、フランソワーズ嬢とは是非ともお手合わせいただきたいです」

ニコっと笑ってくれるんだけど、まあ、年は後で聞いたら12歳だそうだ。女の私から見てもとても美人だ。体つきも出るところは出ていた。ふんっ、大きくなったら私も出るわよとこの時は思っていたのだ……


「次はメラニー・バロー男爵令嬢。彼女の家はバロー商会を経営していて私が礼儀作法を教えている関係で、推薦させていただきました」

ふうん、この赤髪メラニーっていうんだ。


「メラニー・バローです。このようなところに本来出るのはおかしいとは思うのですが、何事も経験になるからとフェリシー先生に言われてここに参りました。皆様方のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します」

その子は完璧な礼を見せてくれた。


私はその挨拶に固まってしまった。何だこいつは、これで本当に子供なのか? 絶対に大人だろう!

でも、メラニーはどう見ても子供なんだけど……


「続いてローズ・ボアさん」

「ちょっとフェリシー、フランが一番最後なのかよ」

フェリシー先生の言葉にアドが切れていった。

私もさすがにそう思ったんだけど、でも、待てよ。この先生方の中で私を推薦してくれそうな人はいそうにないんだけど……


「殿下。フランソワーズさんの推薦者は殿下なんです。殿下が一番お若いと思いますが」

「えっ」

「俺が推薦者なのか?」

私に続いてアドまで驚いているんだけど。


「今回の選定者の中からフランソワーズさんを推薦する方はいなかったのですが、殿下が是非にとおっしゃられたので」

「えっ、それってもう殿下の婚約者が決まっているってことよね」

メラニーがボソリと呟いた声が何故か会場内に響き渡った。

「何言っているのよ。ヒロインは私よ」

ピンク頭が叫んでいるんだけど。

「でも、殿下のお心がフランソワーズ様にあるなら、もうそれで決まりかと」

「そうそう」

なんかアドが大きく頷いているんだけど。


「メラニーさん。それを決めるのは我々選定会です」

フェリシー先生がアドを無視してきっとメラニーを睨んで言ってくれたんだけど。


「ローズ・ボアです。フランソワーズさんと違って私は神様のお導きでアドルフ殿下の婚約者になることが決まっています」

このピンク頭言い切ったんだけど。


「何を言っているのよ。殿下の婚約者は私よ」

「ちょっと待て、俺の婚約者はフランだ」

グレースとアドが反論するが。


「皆さん、静粛に」

フェリシー先生の声が会場に響き渡った。


「座は最後にフランソワーズ・ルブラン公爵令嬢」

「フランソワーズです。皆にはフランって呼んでもらえたら嬉しいです。とある方からお菓子が好きなだけ食べられると聞いてこの会に参加しました。よろしくお願いします」

私は元気よく子供らしく挨拶したのだ。


私の挨拶に何故か王妃様とアドと後ろに控えていたアリスらが頭を抱えていたけれど、私の本心なんだから仕方がないじゃない!

**************************************************************

ついに女の戦いが切って落とされます。

フランとアドは果たして婚約できるのか?

続きをお楽しみに。


この物語のヒロイン達が学園生になった、書籍化された物語。

『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://kakuyomu.jp/works/16816927863351505814


が『次にくるライトノベル大賞2023』になんと皆様方の応援のお陰様で

2000冊の中からノミネートされました。

https://tsugirano.jp/


あ行なので5番目に載っています。

単行門部門ベスト10目指して頑張るので

是非とも投票して頂けたら、とても嬉しいです!


下にリンク張っています。


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