第23話 伯爵領の人攫いの捜査を自分中心にやると宣言しました

「皆様方、ようこそ、お越しいただきました」

私達は珍しく笑顔の伯爵に迎えられた。


なんか胡散臭い笑顔だけど。機嫌がいいのは事実だろう。


私達は先生に怒られて最悪だったけれど……


「お招き頂きありがとうございます」

私達を代表してグレースが挨拶する。


「これはこれはグレース嬢、わざわざ礼を言って頂けるとは痛み入りますな。他の皆様方もこのように遠くまでお越しいただいてお疲れでございましょう」

伯爵は皆を見渡した。相変わらず、私は無視だ。

というか、敵意すら感じるのは私の気のせいだろうか?


私は何も気に障ることした記憶はないのだけど。絶対に原因はお父様かお母様だ。

あの二人は周りのことも考えずに何でもやりすぎるのだ。そのために子供の私がどんな目に合うか考えてほしいんだけど……


「お部屋を準備してありますからな。侍女たちに部屋に案内させましょう」

伯爵の言葉に甘えて私達は部屋に入ることにした。


「うわー、広いわ」

私は案内された部屋に驚いた。王宮の客間に比べても広かったのだ。


「それはようございました。我々も公爵家のご令嬢をお迎えするなんて久々のことでして」

戸惑ったようにまだ若い侍女さんが言ってくれた。


「そうなんだ。まあ、私は公爵家の令嬢とは言っても関係ないけれど」

私が言うと


「何を仰っていらっしゃるんですか。ルブラン様と言えば武のルブラン家としてこの国では知らないものはおりませんよ」

「名前だけはね」

私が自嘲気味に言った。

「何しろ、貧乏な公爵家なの。お菓子が食べられないくらいの」

「そのような事は無いでしょう」

侍女さんは笑って取り合ってくれなかったが、事実なのに。


外を見ると遠くに田んぼが見えてのんびりした風景だった。


たまにはぼうっとしていたいと思ったんだけど、そんなの許されるわけもなく、即座に研修という名の授業が始まったのだ。


そして、食事時も礼儀作法の授業はそのまま続いて、夕食までもいつものごとく殆ど食べられず、来る時に食いだめしていて良かったと私は思ったのだ。


補講は王宮にいるときだけという私の甘い予測はことごとく覆されて夜遅くまで補講があったんだけど……

ちょっと待ってよ。子供は10時間は寝なくちゃいけないのに……。


でも、ベッドに入っても中々眠れなかった。


グーグー


お腹がなるのだ。


「お腹すいた」

私は起き上がった。


厨房にいけば残り物か何かあるかもしれない。


ゆっくりとベッドから抜け出したのだ。


隣の部屋の控えの侍女のおばちゃんは何故かいなかった。


これはラッキーだった。


私は一階の厨房目指して歩き出したのだ。


でかい屋敷というか宮殿に見張りの兵士はほとんどいなかった。


まあ、我がタウンハウスもそうなんだけど、人を雇う余裕はあんまりないのだ。


でも、我が家は私とかお母様の障壁があれば完璧だけど、この屋敷には障壁はかけられていない。


こんなので大丈夫なのかと思わないでもなかったが、田舎だから問題ないのだろうか?


厨房の場所を聞いておいて良かった。


私が厨房の側に行くと、その近くの部屋から明かりが見えた。


そっと近寄ると私の侍女さんがいた。


「クレールさん。娘が帰ってこないのです。もう3日も。何とか伯爵様に伝えて頂けないでしょうか」

女の人が私の侍女さんに頼み込んでいた。娘が帰ってこないって人攫い?


「あなたの言いたいことはよく分かるわ。でも、騎士団には届けたんでしょ。それを伯爵様にお話したところでそれ以上出来るとは思えないわ」

侍女さんは言うんだけど、女の人は必死だった。


「でも、心配で心配で」

「それはそうでしょう。だけど、騎士団が動いてくれているんでしょう。ならすぐに見つかるはずよ」

「しかし、娘で3人目なんです。今年に入ってから村で行方不明になる娘が。こんな事おかしいです。騎士団が絡んでいるんじゃないのかと言う人もいて」

「デジレ、そう言う事は口にしてはいけないことだわ」

クレールさんが注意するんだけど。


「ちょっと、あなた達、そんなに多くの人が攫われているの?」

私は黙っていられなくて思わず口を出してしまった。


「フランソワーズ様。どうしてここへ」

侍女さんが慌てて立ち上がった。


「それよりも、今年に入って3人もの娘が行方不明になるなんて絶対におかしいわ。我が領内なら間違いなく、山狩りをするわよ」

私がしゃしゃり出たのだ。


「しかし、フランソワーズ様。我が騎士団も決して手をこまねいているだけではないかと」

「でも、1つの村で3人でしょ。調べたらもってと行方不明者がいるかも知れないわ。王都には報告したの?」

「いや、それは判りかねますが」

侍女さんが困惑した表情をした。




「何をしているのだ?」

私達が騒いでいる時だ。不機嫌な声がした。


「伯爵様」

侍女さん達は慌てて頭を下げた。そこには騎士たちを引き連れた伯爵が立っていた。


「伯爵。3名もの行方不明者がこのものの村から出ているということですが、どういうことですか?」

私が問いただした。

「何を言う。子供が絡んでくる話では無かろう」

伯爵の言葉に私はプッツン切れた。


「だまらっしゃい! 伯爵風情が!」

私は売られた喧嘩をかったのだ。

「何だと、いくら公爵の令嬢とはいえ、私は由緒正しいファリエール伯爵だぞ。子供に指図されるいわれはないわ」

伯爵が言い切ってくれた。

「そうだ。公爵のいを借りる子供くせに偉そうに」

その言葉尻に乗って今回特別についてきた近衛騎士団長も言ってくれた。


どいつもこいつも口だけは達者だ。

そう言う事はちゃんと仕事をしてから言って欲しい。



「エクちゃん!」

私は、それを無視して大声で叫ぶと、私の目の前に私の愛剣エクちゃんが突如現れたのだ。


そう、この剣は私が呼べばどこからでも現れるのだ。今回は特別にタウンハウスから持ってきたのだ。まさか、使うことになるとは思ってもいなかったが。


「そ、その剣は宝剣、エクスカリバー」

驚愕した目をして近衛騎士団長が言った。


その中私はその宝剣を抜いて地面に突き刺したのだ。


「我今この時をもってこの剣をして指図する者なり」

私はそう言うと宝剣を離宮の床に突き刺したのだ。


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ここまで読んで頂いて有難うございます。


『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/


が皆様の応援のお陰様で『次にくるライトノベル大賞2023』ノミネートされました。

https://tsugirano.jp/


なんと上から五番目に載っていました(あ行だから当然なんですが)

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