第35話 王子様が婚約の申込みをしに、お菓子の家を持ってきてくれました。

領地にお母様に強引に転移で連れて帰られてから大変だった。


お母様の訓練という名の下の可愛がりは、本当に悲惨だった。


衝撃波で地面に叩きつけられて、爆裂魔術で燃やされて……


実の娘にここまでやるのかと何度思ったことか。


このきれいなお肌に跡が残ったらどうするのよ!


もう一方的なサンドバック状態だ。


魔王はこれとお父様の二人がかりでやられたのだ。魔王が少しは可哀想になった。そりゃあ、二人を恨みもしよう。


あの魔王に食べられた伯爵にしろ、母にこっぴどく振られてその逆恨みだったらしいし……

本当に私にとって迷惑以外の何物でもない母なのだ。


父はその母に逆らって私を助けようとして、逆に母にこてんぱんにやられていたけれど。


良くお父様はこんな母と結婚しようとしたものだ。


しかし、偶に二人でイチャイチャしてるので私ではわからないなにかがあるんだろうか?




そして、今日も母にボロボロにされた。

城までフラフラになりながら歩いている時だ。


訓練場に人だかりができていた。


なんだろう?


私が近寄っていくと

「お館様。そんな小僧やっつけてしまいなされ」

「先々代の恨みを晴らして下さい」

「殿下、少しは頑張って!」

騎士たちがワイワイやっている。

戦っているのはお父様とアドじゃない!


しかし、アドは剣豪と言われる父の前に既にぼろぼろになっていた。


もう立っているのが精一杯みたいだ。


「小僧、降参するか」

お父様がアドになんか言っている。


「まだまだ、私は決して諦めません」

アドは必死に剣を構えている。


何をしているんだ。アドは。お父様に勝てるわけはないじゃない。


私が止めようとしたところをエリクが手で押さえてきたんだけど。


「姫様。殿下にも男の意地があるのです」

「エリク、何言っているのよ。アドがお父様に勝てるわけはないじゃない」

私が言った時だ。


アドの体が、一瞬地面に沈んだ。


そして、そこから一直線に飛び出したのだ。飛び出す矢のように。一気に加速して、ただ一に、突っ込んでいった。


お父様が弾こうとするが、アドの腕だけが伸びて一瞬お父様の額に触れていた。

次の瞬間、アドは地面に叩きつけられていた。


「アド!」

私は慌ててアドに駆け寄っていた。


「ふんっ、小僧! 少しはやるようになったな」

お父様はアドを一瞥すると、去っていった。さり際にお父様の額から一粒の血が流れ落ちたのが見えた。



「あっ、フラン」

アドが私の腕の中で目を開けた。

「もう、何むちゃしているのよ」

「男にはやらないといけない時があるんだよ」

「お父様に挑みかかるなんて無茶よ」

「でも、フランを得るためには絶対に一太刀浴びせないといけなかったんだ」

アドが言い張るんだけど。


「一太刀っていうか、一針は届いたと思うけれど……私を得るってどういう事?」

私が聞くと。


アドがフラフラと体を起こした。

「アドまだ、寝ていないと駄目だって」

私は言うがその手を押さえてアドが私の前に跪いてくれたんだけど、


「フラン、私と婚約して下さい」

そう言って手を差し出してきたのだ。


「えっ」

私は驚いた。


「フランに申し込む条件が公爵に一太刀浴びせるということだったんだ」

「それでお父様とやり合ったの?」

私は呆れて言った。

でも、それが女心に嬉しくもあった。そこまで努力してくれたんだ。

普通はそこで頷いてアドの手をとるところなんだけれど……


でも、頷こうとして厳しいフェリシー先生と王妃様の顔が私の頭の中にちらついたのだ。


アドと婚約したら今までみたいな気楽な生活はおくれないに違いない。

恐怖の礼儀作法の授業が食事の間も続くのかと思うとゾッとしたのだ。



「だめか?」

アドが心配そうに私を見るが、

「だって王妃様とかフェリシー先生が……」

私は懸念事項を言ったのだ。


「あれを!」

アドがそんな私の前に合図した。


ゆっくりと大きな木箱に包まれた巨大な物を載せた馬車が引かれてきたのだ。


「何、これは?」

そう聞く私の目の前で箱が開けられたのだ。


「ええええ! これってお菓子の家?」

そう、そこには巨大なお菓子の家があったのだ。

クリームに彩られて壁はチョコレートだろうか。窓は飴の成分でキラキラ虹色に光っているんだけど。そして、表札にはアドとフランの家とデカデカと書かれている。その前に寄り添う、私とアドの人形まであるのだ。

私はそれを見て感動したのだ。


「そう、これは王宮のシェフたちが腕によりをかけて作ってくれた正真正銘お菓子の家だ。彼らは俺の婚約者になる者の為に作ってくれたのだ。でも、フランがなりたくないのなら……」

アドが残念そうに言ってくれた。


「なる。なるわよ」

私はお菓子の家を前に即答したのだ。


「えっ、姫様」

「それはあまりにも」

「やはりフラン様は花より団子ですな」

騎士や侍女たちの残念な声は無視して私は早速かじりついていたのだ。


「本当に、美味しい。これって最高」

私は大いにお菓子の家を堪能したのだ……


でも、私は時のことを後でどれだけ反省したことか……

それは別の物語だ。


でも、6歳の女の子は普通はお菓子に釣られるわよ!

私は心の奥底から叫んでいた。





おしまい

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ここまで読んで頂いてありがとうございました。

これにて完結です。

評価等まだの方はぜひともよろしくお願いします。


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また、閑話等上げていく予定です。




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小さいフランの大冒険『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません外伝』王子様に執着された無敵少女、魔王だって怖くありません。でも、王妃様とマナーの先生は苦手かも…… 古里(furusato) @furusato6

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