第20話 王妃様のバラを手折ったと怒られている女の子を近衛から助けた拍子にバラの木を傷つけたので、一緒に怒られることになってしまいました。

なんで!フェリシー先生がここにいるの?


私は唖然とした。


先生の後ろに王宮から派遣されていた侍女がいるのを見て、理由がわかったんだけど。

侍女たちは何も知らないふりして監視してくれていたのだった。

何もフェリシー先生に報告しなくても良いんじゃないかと私は苦情を言いたかった。


それから私はアドとメラニーと一緒に延々2時間怒られ続けたのだ……



メラニーの侍女は弟が病気で、その病気に効くと聞いた高い薬を売ってもらえるということで、その騎士、何とその男は近衛騎士だった、から薬を買ったのだそうだ。けれどもその薬は偽薬で、ほとんど弟の病気には効かず、借金だけ嵩んでしまい、更に、騎士から脅されることになったというのだ。

元々騎士はメラニーに近付くために侍女に近づいたらしい。

メラニーを攫う気だったのだろうか?



「お嬢様。申し訳ありませんでした」

メラニーに土下座する勢いの侍女は、結局メラニー付を外されて、その家族の住んでいる地方の支店に転勤させられたそうだ。でも、その、侍女には高価な薬が与えられたのだとか。私はメラニーから聞いて、ホッとした。


「さすがメラニーね」

私が感心して言うと


「侍女が困っているのに気づけなかった私が悪いのよ」

メラニーは殊勝にもそう言うんだけど、そんなの6歳の子供には絶対に判らないって。


もっともメラニーは大人びていて精神年齢は30のおばちゃんだと言っても十分に通用したけれど……。流石に怖くて本人にはいえなかったけれど。




そして、翌日、私とメラニーはフェリシー先生の補講を受けに行くために、中庭を歩いていた。

なんで補講まで……私は不満だったが、文句を言えば補講が倍になるのは確実だったので、ここは素直に従うことにしたんだけど。



その途中で、私は青いバラを手にした女の子が騎士に怒られて泣いているのを見つけたのだ。


「貴様どういうつもりだ。これは妃殿下が大切に育てていらっしゃるバラなんだぞ。それを勝手に摘むなど、どういう事だ」

騎士に手を掴まれて女の子は泣いていた。


私はそれを見て切れた。騎士が女の子を泣かすなどどういう事だ? それがどういう理由かなんて関係ない! 我が家でそんなことしたら、お父様の死の特訓行き確実だった。


「ちょっと、あんた! 何を女の子泣かしているのよ!」

私は騎士に、詰め寄ったのだ。まあ、子供に詰め寄られてもどうという事はないと思うが。


「何だ、貴様は」

騎士は慌てて、私を見た。


その時には、私は騎士の手を払って女の子から手を離させたのだ。


「ちょっと、あんた何しているのよ。女の子の手の跡になっているじゃない!」

この騎士、女の子の手に跡を残す程きつく握るなんて、何て奴なの!


切れた私は騎士を思いっきり押したのだ。


ダン!


騎士はその王妃様のバラに突っ込んで、バラをめちゃくちゃにしたのだ。


ちょっと、やりすぎたかと思ったけれど、私はその時は切れていたのだ。


ドボンっ。


騎士はそのまま、噴水に突っ込んでいた。

せいせいした。私は後先の事を考えていなかった。


「貴様、よくもやってくれたな」

騎士は青筋を立てて、起き上がると私に掴みかかろうとした。


何ならこの騎士燃やしてやろうか?

私はやる気満々だった。


「何をしている」

そこへ更に偉そうな男が歩いてきた。


「ボラン近衛騎士団長」

騎士の男は嬉々として騎士団長に駆け寄った。


「実はこの女たちが王妃様の青いバラの木をめちゃくちゃにしてくれたのです。

騎士は私達を指さして言った。


「注意したところ、いきなり突き飛ばされまして」

「ふんっ、何を言うのよ。あなたがこの女の子を虐めていたんでしょ。そもそもこの木をめちゃくちゃにしたのはあなた自身じゃない。近衛のモラルもめちゃくちゃね」

私は言い切ってやったのだ。

「何だと小娘。貴様近衛騎士団に喧嘩を売るのか」

男は憤って言ってきた。


「ちょっとフラン様。近衛に喧嘩売るのはまずいです」

メラニーも止めようとするが、


「ふんっ、フランと言うとルブランの小娘か、父の七光りで威張っているのか。ルブラン家も困ったものよ。年上の敬い方も知らないとは」

「そう言う事はちゃんと近衛を指導してから言いなさいよ。この騎士、女の子の手を跡が残るくらい強く握っていたのよ」

「我が近衛は王族をお守りするためにいるのだ。その王妃様の手ずからのバラを無断で手折るなど許されないだろう」

近衛騎士団長は言うんだけど。


「私、王妃様から言われたの。バラの花を一本とっても良いって」

女の子が泣きながら言ってくれたんだけど。


「そんなわけ無いだろうが、王妃様がこのような小娘に許されるわけは」


「ボラン、どうしたのですか」

そこへ声がして、王妃様が現れたのだ。


「王妃様。この小娘が王妃様のバラを一本折ってしまいまして」

「それがどうかしたのですか。私がそれを許したのです」

「えっ」

王妃様の言葉に近衛騎士団長は固まっているんだけど。


「なのに、この近衛騎士はその子を泣かしていたのです」

私はニヤリと笑ったのだ。

「いや、あのその」

近衛たちの慌てふためくところを私はニヤニヤ笑いながら見ていたのだ。

途中までは


王妃様がバラの木を見るまでは。


「きゃっ、どうしたのですか。この木は。ボロボロになっているではないですか」

王妃様が悲鳴を上げたのだ。


「この騎士が突っ込んでいったのです」

「この女が私を押したのです」

「何よ。あんたが突っ込んだんでしょ」

「お前が押したんだろうが」

私達は罪のなすり合いをしたのだが、


「フランソワーズ、ボラン、どういうことですか!」

王妃様の怒声が響いたのだ。

私達はそれから延々と王妃様に怒らせれることになったのだった

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さて、メラニーの運命やいかに……


『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://kakuyomu.jp/works/16816927863351505814


が皆様の応援のお陰様で『次にくるライトノベル大賞2023』ノミネートされました。

https://tsugirano.jp/


なんと上から五番目に載っていました(あ行だから当然なんですが)

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