第14話「反撃の弓矢」

天界が堕天使に襲撃され天界の街は壊滅状態に陥った。

天界の危機を知り戻って来たパラディオンと堕天使ヴァグレスが激しい戦闘を繰り広げていると、ヴァグレスの仲間の堕天使達が到着し、天界の明け渡しを要求してきた。

今、パラディオンと天界に最大のピンチが迫っていた。


「天界を明け渡せだと?ふざけるな!!」

「フンッ……まぁ、そうだろうな……今回はほんの挨拶程度だ。我々は一度引き上げる。ただし、次は天界の全てを貰い受ける……」

そう言ってアルガムは背を向ける。

「待て!!」

パラディオンは後を追う。

「はっ!」

レグザムがパラディオンに闇のエネルギーの刃を放った。

「うわっ!?」

「パラディオン……貴様の首は俺が貰う……」

レグザムはそう言い残し他の堕天使達と共に去って行く。

「くっ……堕天使……」


パラディオンは変身を解除。

アルスがシャルル達と合流する。

「お兄様、こっち!」

「シャルル……大丈夫か?」

「ええ……私は大丈夫……でも……」

シャルルは心配そうに兵士の方を見る。

「アルス様……シャルル様……大変申し訳ありません!!私以外の兵士は全滅……街を……守れませんでした……」

兵士は酷く落ち込んだ様子で大粒の涙を流していた。

それは恐怖と無力さへの悲観の入り混じった複雑な涙だろう。

そんな兵士に対してアルスが声を掛ける。

「そんな事はない……何より命があるだけ良かったじゃないか。ここまで良く頑張ってくれた」

「アルス様……ありがとうございます!ありがとうございます!」

「さぁ、神殿に戻ろう。……父上に報告しないと……」


アルスとシャルルは兵士を連れ神殿へ向かう。

神殿では神殿を守る為に兵士達がまだ構えていた。


「ん?あれは……アルカエル様!アルス様です!アルス様とシャルル様が帰って来られました!」

「何っ!?本当か!」

アルカエルが兵士の指差した方を見ると確かにアルスとシャルルがこちらに向かって来ていた。


無事神殿に辿り着いたアルスは兵士を救護班に任せ、アルカエルと共に神殿の中へ……。


「何っ!?堕天使アルガムだと!?」

「ええ……堕天使の1人はそう名乗ってました」

「……」

アルカエルはその名を聞いて頭を抱えだした。

「父上?」

「あの……そもそも堕天使って……罪を犯し天界を追放された者達の事ですよね?それが何で今になって……」

シャルルがアルカエルに尋ねた。

「うむ……こうなってはお前達にも話しておかねばな……」

そう言うとアルカエルとバサフは顔を見合わせ頷いた。


そして、アルカエルはアルスとシャルルに話始めた。


そもそも堕天使とは元々は天界の住人で罪を犯し天界を追放された者達の事を指した。

そしてその中にはかつてアルカエルの友人でもあった者も居た。

その名はアルガム。

アルガムも過ちを犯し天界を追放されていたのだ。


「では……堕天使達のボスは父上の友人……」

「ああ……恐らくな……堕天使は我々に対抗する為に闇の力を身に着けている。これまでのデビルズとは違う強敵になるぞ」

「……確かにそうかも知れません……ですが、奴らは天界の明け渡しを要求して来ています。その要求を飲む訳には行きません。必ずこの戦いに勝ってみせます!」

アルスはそうアルカエルに宣言し、戦いへの決意を固めた。


「うむ……アルスよ。今のお前の力では苦しい戦いになる。そこでお前に新たな力を授けよう」

「新たな力?」

「バサフ、セイントアーチャーをアルスに」

「はい!直ぐにご用意致します」

そう言ってバサフはその場を離れた。

「セイント……アーチャー?」

「そうだ。天界騎士にのみ扱える悪しき魂を打ち砕く為の聖なる弓矢だ。お前なら使いこなせるだろう」

「そんな物が……」


その頃、一度撤退した堕天使達は……。


「アルガム様!何で一気に攻め込まないんですか?」

「ただ攻め込むだけではつまらんだろう……もっと奴らを絶望させるやり方でないとな……」

「絶望?」

「そう……我々が味わった絶望と同じ様な……いや、それ以上の絶望を味あわせて苦しめて苦しめて……そして……天界を奪うんだ」

「フフフッ……流石アルガム様……」

とカルドロがアルガムを称える。

「アルガム様、俺はパラディオンと戦いたい。先に奴と手合わせさせてください!!」

とレグザムが強く要望。

「なるほど……まぁ、奴らを苦しめる手立てを考えるのにもう少し時間が欲しい……先にパラディオンと遊んでろ。ただし、まだ殺すなよ?」

「分かっております」

そう言うとレグザムだけ出撃して行く。


神殿ーー


バサフが『セイントアーチャー』を持ってきた。

「コレです」

「これがセイントアーチャー?……初めて見た……」

「それもそのはずだ。天界騎士の間でも5000年位使われてないからな」

「え?では、父上も?」

「ああ、使った事はない」

「父上でも扱った事が無い物を……僕が扱えるでしょうか?」

「大丈夫だ。お前ならきっと……私はそう信じている」

バサフから『セイントアーチャー』を受け取ったアルスはその重みを噛み締める。

物体の重さだけでなく、これまで何代にも渡って天界騎士が正義の為に使って来た武器だ。

そこには歴代の天界騎士の信念と誇りが込められているとアルスは感じた。


そこへ1人の兵士が駆け込んで来た。

「大変です!神殿に堕天使の1人が攻めて来ました!!」

「何っ!?」

「!!父上……行きます!」

「ああ、頼んだぞ、アルス」

アルスは直ぐに神殿の外へ向かう。


神殿の前では多くの兵士達がレグザムたった1人に次々に倒されていた。

「くっ……堕天使と言うのはこんなに強いのか……」

「フンッ……お前達では俺の相手にはならん。さっさとパラディオンを出せ」

そう言ってレグザムはまた1人兵士を斬り捨てる。


「辞めろ!!」

アルスがレグザムの前に現れる。

「やっと来たか……待ちくたびれたぞ」

「くっ……よくも兵士達を……」

「弱いから負けた……それだけだろ?」

「貴様ー!!」

アルスは『変身』

天界騎士パラディオンが登場。

「お前の首を貰うと言ったはずだが?ちゃんと洗ったか?」

「ふざけるなー!!」

パラディオンがレグザムに斬り掛かる。

「フンッ!」

パラディオンの『聖剣·レグニス』の攻撃を『邪神剣·ガルドソード』で受け止める。

「その剣は……」

「コイツか?邪神剣·ガルドソード……俺はお前と同じ騎士なんでね……」

「くっ……同じ……だと……騎士の誇りを持っていないお前と一緒にするなー!!」

パラディオンはレグザムを強く押し返す。

「騎士の誇り?そんな物……とっくに失ったわ!!」

レグザムの反撃。

パラディオンの『聖剣·レグニス』を弾き飛ばす。

「あっ……」

レグザムの必殺技『ダークレクイエム』が発動。

闇のエネルギーの刃がパラディオンに迫る。

「うわっ……」

「この程度で死なないと信じるぞ?パラディオン……」

パラディオンは『ダークレクイエム』の直撃を喰らった。

「ぐはっ!?……」

パラディオンは片膝を折る。

「くっ……なんて……力だ……これが……堕天騎士の力……なのか?」

「フンッ……その程度で死なないと分かって安心したぞ……もっと戦いを楽しもうじゃないか……」

「くっ……当たり前だ……この程度で負けるかー!!僕は……僕は……必ず天界を守り抜く!!」

パラディオンは力を振り絞って立ち上がった。

そして新たな武器『セイントアーチャー』を呼ぶ。

セイントアーチャーは輝きを放ってパラディオンの元に現れる。

「ぐっ……何だ……その光は!?」

パラディオンが『セイントアーチャー』を掴み力を解放。

すると、パラディオンの姿が変化。

パラディオンはボディと右腕に紅蓮のアーマーを装着し、新たな姿『アーチャーフォーム』となった。

「何だ……その姿は!?」

「闇を貫く為の正義の力だ!!」

パラディオンは『セイントアーチャー』をレグザムに向ける。

「喰らえ……」

必殺技『シャイニングシュート』を発動。

それはエネルギーを一点に集中させ、強力な一撃を放つ必殺技だ。

「流石にまずいか……」

レグザムは間一髪の所で姿を消し攻撃をかわした。


「逃がしたか……」


レグザムを退け神殿に戻るアルス。

「アルス、良くやった。お前ならセイントアーチャーを使いこなせると信じていたぞ」

アルカエルがアルスを称える。

「ありがとうございます、父上」

「だが、堕天使達との戦いはまだ始まったばかりだ。気を抜くなよアルス」

「はい!……所で……シャルルの姿が見えない様ですが……」

「ん?そういえば……何処に行ったんだ?」

アルスとアルカエルが辺りを見回す。

しかし、近くにシャルルの姿は無い。


その頃、シャルルは……。


1人で剣術の修行に励んでいた。

「私も……お兄様の様に……」


シャルルの姿が見えない事を不思議に思っているとまた兵士が1人駆け込んで来た。

「大変です!」

「今度はどうした?」

「堕天使達が人間界への攻撃を開始しました!」

「何だって!?」


そう、アルガム率いる堕天使達は人間界への攻撃を開始していた。

「フフフッ……アルカエルを最も苦しめるには……奴らがこれまで見守って来た人間界を滅ぼすのが一番だろう……。奴らの無力感に苛まれた顔が目に浮かぶ……フフフッ……ハハハハッ……」


アルガムの人間界侵攻はアルスやアルカエルに確かに響くだろう。

果たしてアルスは人間界と天界、その両方を救えるのか?


続く……。

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