第4話「悪魔の顔を持ったアイドル」

この日、沙耶香と秀介は2人でマーレイハウスを訪れた。

「おはようございまーす」

沙耶香が挨拶をするとマーレイがドアを開けて出て来た。

「あら、いらっしゃい。早いのね」

「ええまぁ……今日は時間が掛かりますから……」

「そうねぇ、人間界で早くも頼りになるお友達が出来てアルスも幸せね。もう直ぐ準備出来ると思うから中で待ってて」

「はーい」


沙耶香と秀介が一緒にマーレイハウスを訪れた理由、それはアルスの生活用品を揃える為の買い物に行くからだ。

マーレイに案内され、リビングに行くとそこには見知らぬ男女が居た。

「あっ、紹介するわ。彼がアデルで彼女がライヤよ。二人共天界人でここに住んでるの」

「そうなんですか!初めまして、私アルスの友達の沙耶香です」

「俺は秀介です」

アデルは軽く会釈する。

「ちょっとアデル!ちゃんと挨拶しなさいよ!……ごめんねぇ、アデルは人見知りで……でもその内慣れると思うから気にしないで。私はライヤよ。宜しくね!」

「こちらこそ」

沙耶香とライヤは握手をする。

ライヤは中々コミュ力が高そうだ。


そこにアルスが階段を降りて来た。

「あっ、王子様がいらっしゃったわよ」

「辞めてよその呼び方。ただの下宿仲間じゃないか」

「あっ、アルスおはよー!」

「ああ、おはよ。二人共今日はありがとう」

「じゃあ早速出発しようか」

「うん!」

「気を付けて行ってくるんだよ?」

出掛けるアルス達にマーレイが声を掛ける。

「はーい」


秀介が車を運転し、ショッピングモールへ向かう。


東京を離れ千葉県にあるショッピングモールへ到着した一行。

「へぇ〜大きな建物〜」

アルスは結構はしゃいでいる。

「で、今日は何買うんだ?」

秀介が沙耶香に尋ねる。

「ああうん……マーレイさんがアルスの服が少ないって言ってたからとりあえず服と他に生活に必要な物があったらね……」

「確かに……あの格好じゃ目立つよな……」

アルスは初めて人間界に来た時からずっと天界人の衣装を着ていた。

上下共に白銀の布地は確かに目立つ。


早速ショッピングモールの中に入り買い物を始める3人。

だが、中に入るとカフェや洋菓子店やパン屋等が立ち並びアルスの興味をそそる。

「凄い!この建物全体が街みたいだ!」

アルスはいつになく興奮気味。

「恥ずかしいな……」

興奮するアルスを他所に沙耶香と秀介は少し距離を取り後ろから付いて行く。

「あっ、アレは何?」

アルスが指差して沙耶香に尋ねたのは……。

クレープ屋だった。

「ああ、アレはクレープよ。とっても甘くて美味しいよ」

「へぇ〜食べてみたいな〜」

「後でね……まずは買い物済ませちゃお」


このショッピングモールには食べ物、洋服、アクセサリー等も当然あるが、ゲームセンターや映画館もあり1日居ても飽きない。


アルスが興味を引かれる物ばかりだ。


まずはアルスの服を見て回る3人。

「これなんかどうだ?」

「ん〜?ちょっと地味じゃない?それよりこっちの方が……」

アルス次々に勧められた服を試着し、まるで着せ替え人形状態だ。


ある程度服も買い、買い物が一段落した所でアルスはお待ちかねのクレープを食べに行く。

だがその途中アルスの目を引いたのはイベントをやっているアイドルの姿だった。


そこには華やかな衣装を来た7人の女の子達が……。

「いつも応援してくれてる皆さーん、そして初めましての皆さーん、私達、セブンガールズでーす!」

と右手を頭の上前に突き出し手を下に折り曲げ『7』のポーズをして彼女達が挨拶をすると会場に集まったファン達は大盛りあがり。

物凄い歓声が上がる。

「アレは何?」

アルスが沙耶香に尋ねる。

「え?」

だが、ファン達の歓声でアルスの声は沙耶香に聞こえなかった。

アルスは沙耶香の耳元でもう1度尋ねる。

「アレは何ー?」

「ああ、アレはアイドルよ」

と沙耶香が答える。

だが、その後ろで秀介は面白く無さそうな表情を浮かべていた。


セブンガールズの曲が鳴り始め会場はより一層盛り上がりを見せる。

ファン達はヲタ芸を披露し全力で応援。


アルス達も何気なく見ている。


3曲程歌いセブンガールズのライブは終わる。


「皆にー、この後2時から第二部もやるから絶対来てねー!」

そう言い残し彼女達は去って行く。


「結構盛り上がってたね……さっ、私達もお昼ご飯行こっ!」

沙耶香がアレンの背中を押して行く。

「ああ……うん……」


ライブが終わり控え室に戻るセブンガールズのメンバー達。


「ふぅ〜、結構盛り上がってたね、良い手応えだったんじゃない?」

セブンガールズのリーダー、アイカが他のメンバーに話し掛ける。

「うん!ショッピングモールだけど結構ファンの皆集まってくれたしね!」

メンバー最年少で妹ポジションのマイが答える。

「午後はもっとお客さん増えるといいね」

セブンガールズの中でも高身長でモデル体型のナツキがメンバーに水を配りながら言う。

「ありがと」

水を受け取ったアイカがナツキに言う。

この3人はセブンガールズの中で人気の高いメンバーだ。

「それじゃあ、午後の部に向けてお昼ご飯にしよっ!」

アイカがそう言うとメンバー達はそれぞれお昼ご飯に向かう。

「私……いい……」

と発言したのは、メンバーの1人、アカネだった。

「アカネ……食べておかないと午後キツいよ?」

「大丈夫……ちょっと外の空気吸って来るから皆は気にせず食べてて」

そう言ってアカネは上着のコートを羽織ると控え室を出て行く。


「アカネ……大丈夫かなぁ?」

マイが心配そうな表情で出て行ったアカネの方を見る。

「大丈夫よ。アカネの事だもん、ちょっといじけてるだけよ」

そう言うのはメンバーの1人ミズキだった。

「いじけてるって?」

アイカがミズキに尋ねる。

「ほらっ、あの娘先月のメンバー人気投票で最下位だったでしょ?それでいじけてるのよ」

「あっ、そっか……結構気にしてたのね……」


その頃、アカネは……。

ショッピングモールの裏手の出入り口から出て外の風に当たっていた。

「はぁ……」

ため息をつくアカネ。


そこに近付いて来る人影……。

「やぁ、どうしたんだい?」

「え?あなたは?」

そこに居たのはあのデビルズを生み出す青年……。

「ただの通りすがりの者さ、何だか元気が無かったから」

「そう……私ね、アイドルをやってるんだけど、他のメンバーと比べて全然人気無くて……」

「人気?フッ……愚かな話だな」

「何よっ!」

「おっと失礼……君が愚かだと言ってるんじゃない。直ぐに他人と比べたがる人間の考えがさ……それで君はどうしたい?」

「私は……もっと人気のあるアイドルになりたい!」

「そうか……なら、他者を蹴落とせば良い……」

「え?……蹴落とす?」

「そう……考えてごらん……君より人気のあるメンバーが居るから君の人気が出ないんだ……だったら人気のあるメンバーを蹴落としたらどうかな?」

「そしたら……私が人気に?」

「ああ……メンバーだけじゃない……いずれは全てのアイドルのトップに君臨するのさ……」

「私がトップアイドルに?」

この青年はアカネの心の隙に漬け込み闇を増幅させて行った。

「良いねぇ……良い心の闇だ……」

青年はアカネの心の闇から新たなデビルズを生み出す。

「後は何と融合させるか……」

青年は辺りを見渡す。

そして見つけたのは……。

「面白い……アレでやってみるか」

青年は近くで横断歩道を渡ろうとしていたアイドルファンのリュックから出ていたサイリウムとデビルズを融合させ、サイリウムデビルズを誕生させた。


「うわぁぁぁぁっ!?」

アイドルファンに襲い掛かるサイリウムデビルズ。


フードコートで昼食のラーメンが出来るのを待っていたアルスはデビルズの出現を察知。

「!……デビルズか……」

アルスは走り出す。

「ちょっとアレン!?」

だがその直後呼び出しのアラームが鳴る。

「あっ……ちょっ……どうしよ……伸びちゃうよ……」

沙耶香が呼び出し機とアレンを交互に見ながら焦る。


その頃、サイリウムデビルズは先程襲ったファンに自身の魔力が宿ったサイリウムを持たせライブ会場へ……。


「さぁ、私がトップアイドルになる為のライブスタートよ!」


サイリウムを持たされたファンは洗脳されている様だ。

そして、サイリウムデビルズの歌を聞いた周りの人々は集まって来る。

「さぁ、皆も私のファンになって!!」

サイリウムデビルズは更にサイリウムを投げ渡しファンを洗脳して行く。


そこにアレンが到着。

「うわっ!?何だ!?」

大勢の洗脳された人々がアレンの方を見る。

「ダメだ……これじゃあ変身出来ない……」


「くっ……何故洗脳出来ないの!?だったらファンの皆ー、アイツをやっつけてー!」

洗脳されたファン達はアルスに一斉に襲い掛かる。

「うっ……うわぁぁぁぁっ!?」

洗脳されただけの人間を相手に戦う事の出来ないアルスは大ピンチ。


続く……。

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