第9話「決闘」

パラディオンとバルサムはまたしてもガトリングデビルズを逃がしてしまった。


爆発したファミレスには救急隊が駆け付け重傷者を病院へ搬送して行く。


アルスにはただその光景を見守る事しか出来なかった。


「クソッ……何で……何でなんだ……」


沙耶香と秀介はアルスを追ってようやく到着。

「うわ〜……酷いなこりゃ……」

「アルス……大丈夫かしら?」

「アイツならきっと大丈夫だ。早く探そう」

「……うん……」


そしてデズモアもまたガトリングデビルズが暴れたファミレスを離れた所から見ていた。

「フフフッ……中々強力なハイランクだな……奴の心の闇は思った以上に深い……これは傑作だ」


沙耶香と秀介はアルスを探し続ける。

「あっ!居た!」

沙耶香が見つける。

「良かった……行こう」

「うん!……おーい!アルスー!」


沙耶香の声が聞こえ振り向くアルス。

「沙耶香……秀介……」

沙耶香と秀介がアルスに駆け寄って来る。

「アルス、無事?」

「僕は大丈夫……だけど……」

沙耶香は周りを見渡す。

「何が……あったの?」

「うん……実は……」

アルスはこのファミレスで起きた出来事を沙耶香と秀介に話した。


落胆しマーレイハウスに帰るアルス。

「ただいま……」

「お帰り……あらっ、アルスどうしたの?」

「いや、ちょっと……」

「そうだ。アルス、天界から手紙が届いてたわよ」

「手紙?」


マーレイから手紙を受け取ったアルスが見てみると差出人は妹のシャルル·クイーザーからだった。

「シャルル?」


妹のシャルルからの手紙を早速読んでみる。


手紙にはこう綴られていた。


アルスお兄様へ、人間界の暮らしには慣れましたか?

アルスお兄様が居なくなって私は少し寂しいです。

今度私も人間界に遊びに行きますね。

人間界の楽しい所沢山案内して下さい。


母上と父上もアルスお兄様の事を心配しています。

たまには連絡してあげて下さい。

シャルルより


「シャルルの奴……手紙なんて珍しい……」

「妹さんからかい?」

マーレイが尋ねる。

「ええ……そういえばしばらく連絡して無かった。後で連絡しときます」

「そうね、そうしなさい。さぁ、まずはご飯にするでしょ?直ぐ用意するわね」

「はい……」

シャルルが来るまで、美しく、楽しい人間界を守り抜かなければならない。


アルスはそう胸に誓った。


その頃、バルサムは……。

バルサムも爆発に巻き込まれ大きなダメージを受けていた。


「ぐっ……おのれ……やはり……デビルズは全て駆逐しなければならない……人間ごとな!!」

だが、バルサムはその場で気を失い倒れてしまう。


そこへ家路に着く母娘が居た。

「未来(みく)、今日ご飯何にしようか?」

「ん〜……ハンバーグがいい!」

「オッケー、じゃあお買い物して帰ろう」

「やったー!」

「フフッ……」

「あっ、ママ!あの人倒れてる!」

「大変!?」

母娘は倒れているバルサムに駆け寄る。

「大丈夫ですか?」

「うっ……」

「未来、この人休ませてあげよう」

「うん!」


そして……。

バルサムは目を覚ました。

「ん……ん〜?」

バルサムが目を開けると目の前に未来が居てバルサムの顔を覗き込んでいた。

「ママ〜、お兄ちゃん起きたー」

「本当?」

母親が近付いて来る。

「目……覚めた?気分はどう?」

「ここは……?」

「私達の家よ。ごめんなさいね狭くて。でも倒れてるあなたを放っておけなかったから……」

バルサムが見渡すと2間程の部屋とダイニングが見えた。

「あんた達は?」

「私は須藤明里、こっちは娘の未来よ」

バルサムを助けたこの須藤母娘。

母親の須藤明里(34才)と娘の未来(6才)だ。

「そうか……世話になった様だな」

バルサムがベッドから降りようとすると……。

「うっ……」

先程の戦いで負った傷が疼く。

「まだ動いちゃダメよ。応急処置しただけなんだから」

そう言われ体を見るとバルサムの体には包帯が巻かれていた。

「これは?」

「ママが治したんだよ。ママ、お医者さんなの」

と未来が言う。

「医者じゃなくて看護師だけどね。ねぇ、お腹空いてない?ハンバーグで良かったらあるけど」

「えっ……あっ……ああ……」

バルサムは母娘と一緒に夕飯を食べる事に……。

「ごめんね、簡単な物だけど……」

「ママのハンバーグすっごく美味しいんだよ?」

とバルサムに笑顔を向けて話す未来。


バルサムは徐ろに箸を取りハンバーグに手を伸ばす。

そして一口大に切るとその一口を食べてみた。

「!!」

「どう?口に合わないかしら?」

「美味い……」

バルサムはそう言ってハンバーグをもう一口。

更にご飯や野菜サラダ等も頬張り始めた。

本来死神であるバルサムに食事は必要ない。

しかし、人間界に来て初めて食べる物に箸が止まらない。

「良かった……食欲があるなら大丈夫ね」


その頃、デズモアは新たなデビルズを生み出そうとしていた。

「ガトリングデビルズは中々の出来だった。さてと……次は……」


近くの公園で怪しげな動きをする人影……。

人影は新聞紙に火を点け遊具の方へ放り投げた。

放火だ。

火は直ぐに遊具へと燃え移った。

「ククククッ……」

この男はどうやら放火する事に喜びを感じてる様だ。

そこへデズモアが近付く。

「良い心の闇を持っているな……その心の闇……利用させて貰う……」

「なっ、なんだお前?」

デズモアは闇のエネルギーを放火魔の男に注ぐ。

悪魔が誕生し、持っていたライターと融合。

ファイヤーデビルズとなった。

「おおー!!燃やし尽くしてやるー!!」


デビルズの出現をアルスが察知。

「!デビルズだ……行って来る!」

アルスは現場に向かう。

「あっ、ちょっと待ってアルス!」

沙耶香が追い掛ける。

「か〜……またかよ!」

秀介も追い掛ける。


ファイヤーデビルズは街中の至る所に火を点ける。

そして、火災が発生し、人々は逃げ惑う。


火災が発生した事により近くの病院には怪我人が運ばれ大騒ぎとなる。

明里も手伝いの為、病院に呼び出されてしまう。

「未来、ママ病院に行ってくるけど、お留守番出来る?」

「うん、大丈夫。気を付けてね」

「ありがとう……あの……未来の事お願い出来ますか?」

しかし、バルサムはいつの間にか姿を消していた。

「あれ?……おかしいな……じゃあ、ごめん未来、ママ行ってくるね」

「うん!」

明里は未来を置いて病院へ戻る。


ファイヤーデビルズは団地へ近付いて来ていた。

それは須藤母娘が住む団地だった。


「何もかも燃やし尽くしてやるぜ!!」

「またデビルズか……その魂貰い受ける」

ファイヤーデビルズの目の前にバルサムが現れた。

「はぁ?なんだお前?死にてぇのか?」

「死ぬのはお前だ」

バルサムは死神戦士の姿に『変身』

そして、『スカルデスサイズ』を手にファイヤーデビルズに戦いを挑む。


バルサムとファイヤーデビルズが戦っていると、そこにアルスがやって来た。

「バルサム……」

アルスは『パラディンブレス』で『変身』

天界騎士パラディオンが登場。

パラディオンも戦いに参加。

「はっ!!」

ファイヤーデビルズを『聖剣·レグニス』で斬り裂く。

「うわっ!?」


「また貴様か……」

「バルサム……君のやり方は間違ってる。だけど今はコイツを倒す事だけを考えよう」

「フンッ……貴様と手を組む気等ない!!」

バルサムはパラディオンを『スカルデスサイズ』で攻撃。

「うわっ!?」

パラディオンは倒れ込む。

「悪魔に魂を売った人はそれなりの辛い経験があるはずた!!魂を奪うなんて……」

「だから貴様は甘いと言うんだ。邪魔するなら貴様から消す!」

バルサムは構える。

「僕達が戦ってる場合じゃないだろ!!」

だが、バルサムは問答無用でパラディオンに攻撃して来る。

パラディオンはバルサムの攻撃を必死にかわす。


「何だか知らねぇが今の内だ……」

ファイヤーデビルズは団地に火を点けた。

「あっ、しまった!!」

パラディオンがそれに気付くが……。

「よそ見をするな!!」

バルサムは構わず攻撃してくる。

「ぐあっ!?」

パラディオンはバルサムの攻撃を受け倒れる。


ファイヤーデビルズはその隙に姿を消す。

「くっ……バルサム……許さない!!」

パラディオンも『聖剣·レグニス』を構える。

燃え盛る団地の前でパラディオンとバルサムの決闘が始まってしまった。


続く……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る