第10話「使命と想いの間に……」

ファイヤーデビルズが放火した団地の前でパラディオンとバルサムの決闘が始まってしまった。


パラディオンは『聖剣·レグルス』でバルサムに斬り掛かる。

「はっー!」

バルサムは『スカルデスサイズ』でその攻撃を受け流す。

「フンッ!!」

バルサムの反撃がパラディオンにダメージを与える。

怯んだパラディオンにバルサムは怒涛の連続攻撃を仕掛ける。

だが、パラディオンも臆せず反撃を繰り出す。


お互いの刃が擦り合い金属音が鳴り響く。


パラディオンもバルサムも互いに引かず激しい攻防を繰り広げる。


だが、その時!


「助けてー!」

燃え盛る団地の中から助けを呼ぶ声が響いた。

「あっ!」

それに気付いたパラディオン。

留守番をしていた未来が窓から助けを求めていたのだ。


「待ってろ!」

パラディオンは直ぐに助けに行こうとする。


だが、それよりも早くバルサムが動いた。

バルサムは高くジャンプし未来の待つ窓まで登る。

「何っ!?」


「あっ……あっ……」

死神の姿を見た未来は恐怖で涙を浮かべる。

6歳の女の子からしてみればバルサムは恐ろしい怪物に見えただろう。

「下がってろ」

「え?」

バルサムは窓ガラスを破り中に入る。


それを見ているパラディオン。

「あいつ……」


バルサムは後退りする未来を有無を言わせず抱き抱える。

「行くぞ」


そしてバルサムは脱出。

団地の3階から飛び降りる。

なんと、死神であるバルサムが未来の命を救ったのだ。

この行動にパラディオンは驚く。


バルサムは未来を降ろすとその場から離れさせた。

「さぁ、続けるぞ!」

バルサムはパラディオンに『スカルデスサイズ』を向ける。

「いや……僕達が戦う理由はないよ。デビルズも逃げたし……それに君は今、あの女の子の命を救った」

「それがどうした?」

「君だってわかってるんじゃないのか?命の尊さを……」

「……はぁ……興冷めだ……」

バルサムは戦うのを辞めその場を去る。


「僕達が……戦う理由なんて……」

パラディオンは去って行くバルサムを見てそう呟いた。


マーレイハウスに帰ってきたアルスは直ぐに部屋に入ってしまった。

「おや?どうしたのかね?」

マーレイが心配する。

「デビルズとの戦いで何かあったんじゃないですか?」

「心配だね……」


その頃、暗い部屋でベッドに横たわったアルスは考えていた。

バルサムの行動について。

本来死神であるバルサムが人の命を助ける等あり得ない事だ。

バルサムには何か考えを改める出来事があったのかも知れないと。

だが、それはバルサムとアルスは手を取り合い共に戦える可能性もあると考えアルスは少し嬉しかった。


一方のバルサムは戦いの後、夜の街を彷徨い歩き続けていた。


バルサム自身もアルス……いや、パラディオンに言われた事が引っ掛かっているのだろう。

バルサムはボヤボヤと考え事をしながら歩みを進める。

その時、前からガラの悪い連中が騒ぎながら歩いて来た。

「そんでよー!ソイツ涙と鼻水が入り混じったぐちゃぐちゃの顔で『もう止めてくだーい』って騒いでんだぜ?ダッセーよな?」

と誰かを馬鹿にしながら笑う金髪の男。

「ハハハハッ!!なんすかそれちょーおもしれぇっすね!ダッセーw」

と笑う連れの男。

と、そこへバルサムと金髪の男の肩がぶつかる。

「ってーなコラっ!!テメェ何処に目ぇ付けて歩いてんだ!!」

「……」

バルサムは無視して先に進む。

「おい!待てコラ!!」

金髪の男はバルサムの肩を掴み振り向かせる。

「チッ……貴様如きに興味は無い……」

「んだとコラァ!!痛い目に遭いてぇのか!!」

金髪の男はバルサムに殴り掛かる。

だが……。

バルサムは『スカルデスサイズ』を取り出し金髪の男を斬り裂く。

金髪の男は怪我こそ無いものの、魂を抜かれ倒れる。

「汚らわしい魂だな……なんの価値も無い」

「テメェ……何なんだ?」

連れの男達3人がバルサムを囲む。

「失せろ……ゴミが……」

バルサムは残りの3人の魂も奪う。

「やはり……悪意を持つ人間に生きる価値等無い……」


バルサムはそのまま夜の闇の中へと消えて行く。


翌朝ーー


この男達の事は事件としてニュースで取り上げられていた。

キャスターがニュースの内容を読む。

「昨夜、都内の路上で4人の男性が倒れているのを発見され、病院へ搬送されました。男達に外傷は無く、まるで魂を抜かれた様に昏睡状態に陥っています。警察は事故と事件の両面で捜査し……」


「人間界も変な事が起こる様になったねぇ……」

マーレイがニュースをみて呟くと……。


「まさか……」

アルスには嫌な予感がしていた。

「俺、ちょっと行ってくる!!」

アルスは飛び出して行く。

「ちょっとアルス!どうしたんだい!?」


アルスはバルサムを探した。

「どこだ……?どこに居るんだ……?」


その頃、昨夜逃がしたファイヤーデビルズも動き出していた。

「さて……この力があれば警察なんて相手じゃねぇ……白昼堂々放火してやるぜ……」

ファイヤーデビルズは早速街に現れそこら中を放火し始めた。


アルスはファイヤーデビルズの出現を察知。

「!……こんな時に……」

アルスはファイヤーデビルズが暴れる現場へ向かう。


だが、一足先にバルサムがファイヤーデビルズの暴れる現場に到着した。

「今度こそ滅す……」

バルサムがファイヤーデビルズに歩み寄る。

「ん?ほぉ……お前か」

「貴様の魂……貰い受ける!!」

バルサムは『変身』

死神戦士の姿となり『スカルデスサイズ』を構える。

ファイヤーデビルズはバルサムに向かって火炎を放つ。

バルサムは『スカルデスサイズ』で防御。

「ぐっ……」

「フンッ……俺様の炎に何処まで耐えられるかな?」

だが、そこにパラディオンも到着し『聖剣·レグルス』でファイヤーデビルズを斬り裂く。

「ぐあっ!?」

「貴様……」

「バルサム……今は協力してコイツを……」

「笑わせるな……誰が貴様と協力など……」


バルサムはファイヤーデビルズに攻撃を仕掛ける。

ファイヤーデビルズも応戦。

接近戦に持ち込むバルサム。

「やはりダメなのか?死神と手を取り合う事は出来ないのか……」

バルサムはファイヤーデビルズを追い詰める。

「ぐはっ!?」

「トドメだ!!」

バルサムは必殺技『デス·スパーダ』を発動し『スカルデスサイズ』に集めたエネルギーの刃でファイヤーデビルズを斬り裂く。

「ぐわぁぁぁぁっ!?」

ファイヤーデビルズは消滅。

放火魔の魂もバルサムに奪われた。


「そんな……」

「悪魔に魂を売った人間に生きる価値等ない……」

「やっぱり君のやり方は間違ってる!!」

「フンッ……所詮天使と死神では手を取り合う事等出来ん」

パラディオンとバルサムは互いに構える。

この2人の戦いをもう誰も止める事は出来ない。


再び戦い始めるパラディオンとバルサム。

お互い一歩も引かず激しい攻防が繰り広げられる。

「バルサム!!君は人の命を何だと思ってるんだ!!」

「人では無い……悪魔だ!!」

「違う!!君が奪ってるのは悪魔に利用されただけの人間だ!!」

「変わりない……悪意を持つ物に生きる価値など……」

「でも……君は命の尊さを知ってるはずだろ!!」

「フンッ……死神の俺に命の尊さを問う等愚かな……」

「でも、君にも救いたい命はあるだろ!!」

「!!」

この時、バルサムの脳裏に未来の顔が過ぎり一瞬動きを止めた。

「くっ……そんな物……」

バルサムは再び必殺技『デス·スパーダ』を繰り出す。

パラディオンはそれに対抗する為に必殺技『ジャッジメントスラッシュ』を発動。

お互いの必殺技がぶつかり大爆発を起こす。

「うわっ!?」

「ぐあっ!?」

爆風に吹き飛ばされる両者。


互いに大ダメージを受け変身が解除される。


「ぐあっ……お……おのれ……パラディオン……」

「バルサム……もう一度考えてみてくれ……君が本当に守りたいモノを……」

お互いに力を振り絞り立ち上がろうとする。


「バカバカしい……俺は……死神だぞ……」

そう捨て台詞を吐きバルサムは姿を消した。


アルスはその場で力尽き倒れる。


続く……。

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