死神戦士

第6話「死神現る」

アルスが人間界に来て1ヶ月程が経過した。


その夜、また1体のデビルズが誕生していた。


「こっちだ!」

アルス、沙耶香、秀介は現場に向かって走る。


「てか、何で俺手伝ってんだろ?」

秀介は自分でも何故か不思議に思っていた。


「ぎやぁぁぁぁっ!?」

と夜の閑静な住宅街に悲鳴が響き渡った。


「何っ!?今の悲鳴!?」

「あっちだ!」

アルスが悲鳴の聞こえた方へ急ぐ。


すると、そこにはサラリーマン風の男性が倒れていた。


「これは……」

アルスが倒れている男性に近付く。

「ダメか……」

アルスの後ろからそっと沙耶香が近付く。

「ねぇ、アルス……それって……」

「ああ……外傷は無いがまた魂を抜かれてる……」

「マジかよ……これでもう3回目だぞ……」

「一体誰がそんな事を……」


彼らがそんな話をするのには訳があった。

この1週間の間に似たような事件か3件も起きていたからだ。


マーレイハウスに戻った3人は話し合う。


「一体何が起きてるんだろう?デビルズの気配を感じても行った頃にはもう居なくて魂を抜かれた人が倒れてるなんて……」

沙耶香がアルスに話し掛ける。


「ああ……うん……」

「アルス、何か心当たりがあるのか?」

秀介が尋ねる。

「もしかしたら……死神が現れたのかも知れない……」

「死神?」

「うん……昔、まだ天界で修行してる頃に聞いた事があるんだ……死神について……」


その頃、デズモアは……。

「くっ……またしてもデビルズが……おのれ……一体何者だ!!」

次々にデビルズが排除される事に苛立っていた。


アルスから話を聞き終えた秀介は帰り支度をする。

「悪いが俺はもう帰らせて貰うぜ?」

「え?秀介帰っちゃうの?」

「ああ、明日は朝からバイトだし。遅くまで付き合ってられないからな」

「そうか……ごめん……遅くまで付き合わせて」

「アルス、お前がデビルズと戦うのは勝手だが、俺達には俺達の生活があるんだ。これ以上俺も沙耶香も巻き込まないでくれ」

「ちょっと、秀介そんな言い方……」

「そうだよね……2人共、今日はもう遅いし帰って。何かあったら自分でなんとかするから」

「え〜っ!?遠慮しなくていいよ!私、ヒーローのサポートって好きだし!」

「沙耶香はヒーロー好きだからな……でも明日大学なのも事実だろ?」

「うん……まぁ、それはそうだけど……」

「じゃあ帰ろうぜ」

「沙耶香、秀介、今日はありがとう」

「うん……じゃあ今日は帰るね……」


沙耶香と秀介は帰って行く。


翌日ーー


沙耶香は大学へ、秀介はバイトへそれぞれ出発する。


アルスは死神の手掛かりを探しに街へ出る。

しかし、闇雲に探しても見つかる訳は無く……。

アルスは少し休憩をする事に。


その頃、秀介はコンビニでバイトをしていた。

品出しをする秀介。

レジには秀介と歳が近いのバイト仲間の里中が立っていた。

里中はボサボサの頭でボーっと立ってダルそうにしていた。

そこに1人の中年男性が会計にやって来た。

「お願いします」

客の中年男性がそう言うと。

「……しゃせー」

里中はやる気の無さそうな声で対応し商品を打ち始めた。

里中の態度に客の中年男性もイラッとしている様だ。

「え〜……690円になります」

「じゃあPayPayで」

と客の中年男性はスマホの画面を見せた。

チッ……と里中は舌打ち。

里中はまたダルそうにハンドスキャナーでスマホのバーコードを読み取る。

「おい、何なんだその態度は?」

中年男性が里中に向かって怒り始めた。

「あー……さーせん」

「おい!」

中年男性は更に声を荒げ始めた。


「あ〜……どうも申し訳ありません」

秀介が慌てて間に入る。

「おいおい、この店員の教育どうなってんだよ?」

「申し訳ありません、彼には後からキツく言っておきますので……」

「ダリぃな……店長でもないのにしゃしゃり出てくんなよ」

この一言に秀介もイラッと来た。


「あのね……里中君、これで注意されるの何回目?今日店長が居ないからって気ぃ抜き過ぎだよ!」

「歳下のくせに偉そうに……」

「え?」

「俺、辞めますわ」

里中はそう言うと仕事を放りだして店を出て行ってしまった。

呆気にとられる中年男性と秀介。

「あっ、大変申し訳ありませんでした」

秀介は深々と中年男性に頭を下げた。


店を出た里中は……。


「ったく……どいつもこいつも……」

苛立つ里中を見つけたデズモア。

「良い心の闇を見つけた……」

ニヤリと笑みを見せる。

「良い心の闇を持っているな……その心の闇……利用させて貰う……」

そう言って里中に近付くデズモア。

「何だ……?あんた……」

デズモアは里中に闇のエネルギーを注ぐ。

「うわぁぁぁぁっ!?」

里中は心の闇を増幅され悪魔へと変貌。

そして近くで寝ていた野良猫と融合しキャットデビルズが誕生。

「凄い力を感じる……俺を馬鹿にした奴は全員ぶっ殺す!!」

「さぁ、暴れて来い……欲望の赴くままに……」


キャットデビルズはバイトをしていたコンビニに向かう。


その様子を見ている謎の影……。

「またデビルズか……」


その頃、アレンはデビルズの出現を察知。

「!出た!デビルズだ!」

アレンは急いで現場に向かう。


秀介のバイト先のコンビニではさっきの中年男性がまだクレームを入れていた。


秀介にはただ謝る事しか出来なかった。

だが、そこにキャットデビルズが現れコンビニを襲撃。

「うわぁぁぁっ!?」

「俺を馬鹿にしやがって!!絶対に許さねぇ!!」

キャットデビルズは先程の中年男性に襲い掛かる。

「うわっ!?」

「まずはテメェだ!!」

キャットデビルズは鉤爪で中年男性を引っ掻き大怪我を負わせる。

「ぐぁぁぁっ……いっ…痛てぇ……」

中年男性の左腕から大量の出血。

それを見た女性客が悲鳴を上げる。

秀介は恐怖心を必死に抑え怪我をした中年男性の救護に向かう。

「だ……大丈夫ですか!?」

「大丈夫な訳……ねぇだろ……」

「田戸ぉ……次はテメェだ!!店長でもねぇクセに偉そうにしやがって……」

「!……まさか……里中君?里中君なのか?」

「だったらどうした?俺はもう里中じゃねぇ!!力を手に入れた悪魔だ!!」

キャットデビルズは秀介の首を掴み締め上げる。

「あっ……や……やめ……」

「死ねー!!」

キャットデビルズが秀介に向かって鉤爪を振り上げる。


だが、そこにアルスが現れキャットデビルズに飛び掛かる。

「うわっ!?」

キャットデビルズは秀介を離す。

「秀介……大丈夫?」

「がはっ……あっ……アルス……ああ……助かった……」

「良かった……」

アルスはキャットデビルズを外に追い出す。

「ぐっ……何だテメェ……邪魔しやがって!!」


「皆さん、今の内に逃げて下さい!!」

秀介は必死に叫び客達に避難を促す。


「アルス……お客さんは避難させた。大丈夫だよ!」

「ありがとう、秀介……デビルズ!!お前の非道な悪事許す訳にはいかない!!」

「フンッ……だったら何だ?」

「お前の悪しき魂を滅す!」

アルスは『パラディンブレス』で『変身』

天界騎士パラディオンが登場。


「天界騎士!パラディオン!降臨!!」

「何だお前は……死にてぇのか!!」

キャットデビルズはパラディオンに襲い掛かる。

パラディオンはキャットデビルズと戦い始める。


その様子を物陰から見ている謎の影……。

「アレが天界騎士パラディオン……まずはお手並み拝見……」


パラディオンは『聖剣·レグニス』を手にキャットデビルズとの戦いを続ける。

しかし、キャットデビルズの素早い身のこなしに苦戦している。

「くっ……早い……」

「オラオラどうしたー?そんなもんかー?」

キャットデビルズはパラディオンを挑発する。

「クソッ……」

キャットデビルズは更にパラディオンに怒涛の連続攻撃を仕掛ける。

「うわっ!?」

ダメージを受けるパラディオン。

「くっ……」

何とか立ち上がろうとするもキャットデビルズが迫る。

「トドメだ……」

だがそこに、物陰から見ていた人物がゆっくりと歩み寄って来た。


その足音はコツコツとこちらに向かって来る……。


「誰だ?」

そこに現れたのは若い男。

中々のイケメンだ。

「誰だ君は?ここは危険だ!」

パラディオンはこの男を避難させようと声を掛ける。


「悪魔め……その魂貰い受ける……」

「何?」

男は異形の戦士へと『変身』


「あっ!アレは……まさか!」

ドクロの仮面、そして全身を骨の様な装飾で覆った黒い戦士。

死神戦士バルサムが現れた。


「死……神……お前が……」

「我が名はバルサム。悪魔を狩る死神だ」

「死神だと?ったく、どいつもコイツも目障りだ!!消えろ!!」

キャットデビルズはバルサムに攻撃を仕掛ける。

「フンッ……」

バルサムは手にした大鎌『スカルデスサイズ』でキャットデビルズを斬り裂く。

「ぐはっ!?」

すると、キャットデビルズの体は粒子となって消滅。

野良猫は悪意を持たない為解放された。


だが、里中はその場で意識を失い倒れる。

「里中君!!」

秀介が里中に駆け寄る。

「里中君、しっかり!里中君!!」

「無駄だ。ソイツはもう魂の抜け殻……空っぽの器にすぎない」

「何だって!?」

「お前が……死神……」

パラディオンはバルサムを睨み付ける。

「天界騎士か……お前達の様な生温いやり方では悪魔には勝てん……俺の邪魔だけはするな」

バルサムは立ち去ろうとする。

「待て!その人の魂を返せ!!」

「フンッ……こんな悪しき人間には必要ないだろ……」

「それは違う!この人の心の闇がその人をデビルズに変えたんだ!その人はきっとやり直せる」

「だから言うのだ。貴様は甘いと……」

バルサムはそう言い残し去って行く。


「バルサム……恐ろしい奴だ……」


続く……。

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