第16話「可憐なる騎士」
レグザムとの戦いで重傷を負ったアルスはシャルルの手で天界へ運び込まれた。
早速アルスの治療が開始される。
「お兄様……」
心配そうにアルスを見つめるシャルル……。
そこにアルカエルとミシェルがやってきた。
「シャルル……」
「お父様、お母様」
「良く、アルスを見つけて来たな」
「突然人間界に飛び出して行くから驚いたわよ」
「ごめんなさい……でも居ても立ってもいられなかったの……」
「いや、それで良いんだ。困ってる人がいたら見捨てられない。本来、天使とはそうでなくてはならない」
「……お父様、お母様、私、人間界に戻ります」
「え?何を言っているの?」
「お兄様が居ない今、人間界はいつまた堕天使達に襲われるか分かりません。だから私が代わりに」
「行ってどうする?お前で堕天使達を倒せるのか?」
「それは……でも放ってはいられません!」
そう言い残しシャルルは駆け出して行く。
「あっ!ちょっとシャルル……もう……」
「ハハッ……あの子も成長してるんだ。行かせてみよう」
「あなた!」
その頃、人間界では秀介がバルサムを担いでマーレイハウスに戻って来た。
「秀介君、どうしたのその人?」
「アルスを探してたら倒れてて……」
「そう……とにかく中へ、寝かせてあげましょう」
それからしばらくして沙耶香とアデルもマーレイハウスに戻って来た。
「まさか……バルサムまで堕天使と戦ってたなんて……」
「でもコイツはデビルズを狩るのが仕事なんだろ?何でわざわざ堕天使と……」
「さぁ?……それは分からないけど……」
バルサムはアルガムから受けた攻撃のダメージが大きくうなされていた。
仮面が破損し撤退したレグザムと堕天使達は人間界のとある場所へ身を潜めて居た。
「クソッ……アルスめ……」
「仮面の修復が治るまでお前は休んでいろ。その間に俺がまた一暴れして来るからよ」
とヴァグレスが言う。
「やれやれ……お前は本当に暴れるしか能が無いな」
とカルドロが言うと……。
「何だと!?だったら今度はテメェが何かしてみやがれ!!」
「止めろ!見苦しいぞ」
アルガムが止める。
「チッ……」
「フンッ……」
「お取り込み中失礼……」
「あん?何だテメェは?」
そこに現れたのはデズモアだった。
「我が名はデズモア……悪魔さ」
「悪魔だとぉ!?何の用だ?悪魔と仲良しごっこなんかする気はねぇぜ」
「まぁ待て……デズモアとやら、用件を聞こうか」
「配下に悪魔はいかがかな?」
そう言ってデズモアは不敵に微笑んだ。
マーレイハウスにシャルルが戻って来た。
「あっ、シャルルちゃん……アルスの様子はどう?」
沙耶香が尋ねる。
「うん……直ぐにって訳にはいかないけど、大丈夫。必ず復活するわ」
「そう……良かった……」
とそこへバルサムが起きて出て来た。
「ちょっ、ちょっと待って!まだ動いちゃダメだよ」
秀介がそれを追って来る。
「うるさい……お前には関係ない」
「ちょっと……どうしたの?」
「バルサムが出て行くって……」
「世話になった様だな。だが、お前達と群れるつもりはない」
そう言ってバルサムは上着を羽織って出て行ってしまった。
「もう……」
「ちょっと待てって!」
秀介が後を追う。
「待って秀介。……私が行く」
「え?」
沙耶香がバルサムを追って出て行く。
マーレイハウスを出たバルサムは何処へ向かうのか……。
「ねぇ!ちょっと待って!」
沙耶香が呼び止める。
「何で付いてくる……」
「まだ動いちゃダメだって!」
「だから……お前に関係ないだろ」
「ねぇ、何であなたがあそこに倒れてたの?……堕天使と戦ってたんじゃないの?」
「……それがどうした?」
「あなたはデビルズを倒す為に来たんでしょ?なのに何で……人間の為に戦うの?」
「人間の為?思い上がるのもいい加減にしろ!俺は死神だ!人間の為に戦うはずがあるか!!堕天使と戦ったのは俺にとっても邪魔だったからだ」
「ウソよ!少なくともあなたは以前より変わった……」
「変わった?ただの人間のお前に俺の何が分かる?バカバカしい……」
バルサムは怒って行ってしまった。
「あっ……ちょっと……」
その頃、デズモアと堕天使達は結託し、街に繰り出す。
「貴様の言う悪魔の力とやら、見せて貰うぞ」
「ああ……まずは心の闇を持つ人間を……」
そしてデズモアが目を付けたのは……。
1人の中年男性。
「ったく……何で正月から働かなきゃいけねぇんだよ!クソッ!」
何やら正月からの仕事でイライラしている様だった。
「フンッ……丁度良さそうだ」
デズモアはその中年男性の前に現れる。
「うわっ!?なっ、何だお前!?」
「その心の闇……利用させて貰う」
デズモアは闇のエネルギーを中年男性に注いだ。
「うっ……うわぁぁぁぁっ!?」
そして近くの店前に飾ってあった門松と融合。
カドマツデビルズが誕生した。
「おお〜中々面白いデビルズが生まれたな……」
「ほぉ……人間の心の闇を利用し悪魔を生み出せるのか……アルガム様々、尖兵に丁度良さそうですね」
とカルドロ。
「うむ……中々面白い力だ」
「まぁ、使い物になるかは分からんがな……」
ヴァグレスはケチを付ける。
カドマツデビルズは両腕に備わった竹からたけのこ型の小型ミサイルを発射し、街を襲い始めた。
正月で賑わっていた街が恐怖で大混乱に陥る。
マーレイハウスでは街の騒ぎをマーレイ達が気付いていた。
「また騒がしくなって来たわね……」
「また堕天使かしら?」
マーレイと沙耶香がそんな会話をしているとシャルルが飛び出して行ってしまった。
「あっ!シャルルちゃん!!」
沙耶香と秀介、マーレイ、アデルもシャルルの後を追う。
カドマツデビルズが暴れ続けていると……。
「止めろ!!」
アルスが戻って来た。
「奴は……パラディオン!」
「今度はデビルズか……この街を……好きにはさせん!!」
アルスは『変身』
天界騎士パラディオンが登場し、カドマツデビルズと戦う。
しかし、傷が完全に治っていないパラディオンは本来の力を発揮出来ず大苦戦。
普段なら大した相手では無いデビルズに劣勢に立たされる。
「ぐっ……ダメだ……今の僕じゃ……デビルズにも勝てない……」
「おやおや……随分苦戦してるじゃないかパラディオン……」
そこに煽る様にデズモアが現れる。
「デズモア!貴様!!」
「フフフッ……レグザムとの戦いで負った傷が響いてる様だなパラディオン」
アルガムも現れる。
「アルガム!?くっ……何でお前達が一緒に!?」
「何故って?我々は結託したからさ……パラディオン、お前を倒す為にな」
「くっ……そ、そんな……」
カドマツデビルズのミサイル攻撃がパラディオンを襲う。
「うわぁぁぁぁっ!?」
そこにシャルルとそれを追って来た沙耶香達が到着。
「お兄様!?」
「アルス?」
「ぐっ……皆……来るな!」
「お兄様!まだ傷が治っていないはずでしょ!」
「え?」
「ああ……でも大丈夫……この程度で負けはしないさ……」
パラディオンは必死に立ち上がろうとする。
だが、ズキズキと傷が痛み思う様に体に力が入らない。
「くっ……」
「もう限界だろ?パラディオン……直ぐに楽にしてやるよ」
デズモアがそう煽る。
「ふざけるな!!僕は……僕は負けはしない!!」
「フフフッ……やれ!」
デズモアの指示で再びカドマツデビルズがミサイルを放つ。
「お兄様!!」
シャルルは飛び出しパラディオンの前に出る。
「あっ!」
「シャルル……戻れー!!」
カドマツデビルズのミサイルがシャルルに迫る。
その時!
シャルルの腕の花の形をしたブレスレットが眩い光を放って輝き出した。
すると、花の形のバリアが展開し、ミサイル攻撃を防いだ。
そして、ブレスレットの輝きはシャルルの体を包んで行く。
「こ……これは……」
パラディオンの驚く。
シャルルは純白の鎧を纏い騎士の姿に変身した。
可憐なる騎士エンジェルパラディオンの誕生だ。
「シャルル……?」
「可憐なる騎士、エンジェルパラディオン!参ります……」
「馬鹿な……新たな天界騎士だと!?」
デズモア
「シャルルちゃんが……変身した……」
これには沙耶香達も驚く。
いや、沙耶香達だけでは無い。
アルスも驚いていた。
「フンッ……天界騎士が一匹増えた所で!」
アルガムが黒い雷撃を放つ。
エンジェルパラディオンの防御技『フルールディフェンダー』が発動。
白い花の形をしたシールドがアルガムの雷撃を防ぐ。
「何っ!?……くっ……子娘が……」
カドマツデビルズが続いてミサイル攻撃。
だが、その攻撃も『フルールディフェンダー』で防ぐ。
「なんて防御力だ……」
そして、エンジェルパラディオンは専用の剣『聖剣·エンジェルレイピア』で攻撃する。
カドマツデビルズの両腕のミサイル発射口を破壊する。
「ぐあぁぁっ!?な、何ぃぃ!?」
更にエンジェルパラディオンはカドマツデビルズへの攻撃を続ける。
「トドメよ!」
エンジェルパラディオンは必殺技『シャインストーム』を放つ。
これは聖なる光の嵐で悪を葬るエンジェルパラディオン最大の必殺技だ。
「ぐわぁぁぁぁっ!?」
カドマツデビルズは倒され中年男性は解放された。
「チッ……引き上げるぞ……」
アルガム達とデズモアは撤退した。
「シャルル……お前……」
「お兄様の傷、今癒やします」
エンジェルパラディオンは傷を癒やす回復技『ヒーリングシャワー』を放った。
「シャルル……お前……こんな力を……」
パラディオンの傷が回復して行く。
「凄い……傷が治ってる!?」
「良かった。これでお兄様も戦えるわね」
2人は変身を解除。
素顔で兄妹は再会した。
シャルルが変身能力を得た事により、アルスには頼もしい仲間が増えた。
堕天使達との戦いはまだ続くが、負けるなパラディオン。
続く……。
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