トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”

鰺屋華袋

プロローグ

第1話 空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか? 1

 何が起こっている?  


 突然の出来事に思考が追いつかない。


 さっきまで僕は、地元で同窓会に出席していた。まぁ同窓会と言っても大規模な物でもなく...同じクラスの仲間だけが集まっただけのこじんまりした物だが...


 普段、会えない学生時代の仲間を相手に、つまらない愚痴をこぼしたり、出席していない女子生徒初恋の人の噂話を聞いて意気消沈したり....


 大した話題もなかったが、楽しい気分で『また飲もう!』と言ってクラスメートたちと別れ、家路に家路に就いた。


 そして...それは“あと僅かで自宅”という所を歩いていた時に起こった。少し近道になる路地を曲がって...そこまでは間違いない。


 間違いない筈なんだが....気が付いた瞬間、僕の周囲はになっていた....


 少なからず酔ってはいたが、異変は絶対に気のせいではない。なぜなら、からだ...反射的にスマートフォンの画面を確認する。時刻は22:12を表示していた。


 周囲は確かに路地だったが、明らかに自分の歩いていた所とは様子が異なっている。


 新しい元号に変わろうかというこのご時世に、一地方都市とはいえ、石を積み上げただけの壁などめったに見られない。


 そもそも、そんな風景は帰り道には無かった筈だ。


 突然の事に、酔いがまわり過ぎて...道端で夢でも見ているのか?と、いぶかしんでいる所へ....


『困った事になりました』


 突然、耳元に聞き覚えのない声が響く! 明らかに周囲に人などいないのに....大きな声ではないが、確かにで聞こえた!

 

 かなり間抜けな感じで、キョロキョロと周りを見回していると、


『驚かせて申し訳ありません。しかし幻聴ではありませんので落ち着いて下さい』


 再度の呼びかけ。遠くから聞こえる訳ではなく明らかに近くから、落ち着いた感じの男性の声が語りかけてくる。


『落ち着けと言われても難しいとは思いますが....今は時間がありません。このままだと、あなたに危害が及ぶ事態が迫っております。私ができる限りの補助設定を行いますので、合図したら(ムーヴ)と呟いて下さい』


 ??????!なんだこれ?突然の事に頭が疑問符に埋め尽くされる。


『特例次元干渉開始! 座標設定! 時間軸確認! 転換先座標および空間範囲値送信完了!  今です!!』


「 ムーヴ? 」


 耳元で囁かれた言葉になかばようにして、教えられた言葉をつぶやいた時...突然『あらががたい事態』に巻き込まれそうな予感と、『重力が無くなった様な違和感』を同時に感じて...僕はあっさりと意識を手放していた。

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