第50話 現場の事情は…偉い人には分からん物なんですよね? 8
グラブフットが魔法を解放した瞬間、視界を確保するべく、モノクルが急速に光量を絞っていくが・・・
{露光調整の限界です!
モノクルの通信機能を通して、ミネルヴァからの警告が響く、と同時に
「クククッ さっきのアローナへの対処をみれば、お前さんが “戦闘を生業とする人間” じゃあないのは十分に分かっていたが・・・回避を最優先にするスタイルが裏目に出たな。」
激しい光の奔流が収まった時、既にグラブフットは
さらに、彼の周囲には半径3m程の半透明の球体が形成されている。装置の成り立ちから考えれば、恐らくはオペレーターを保護する機構が作動したのだろう。
「・・・目眩ましだったんですね。騙されましたよ。」
グラブフットの行動を見て、すぐにエンター1から出たが・・・時既に遅しだった。
「ああ。さっきも言ったが、あんたの基本戦術は回避
{ミネルヴァ、あの球体は結界の一種か?}
{はい。スキャンした構造式から考えて、魔力の遮断性能を第一に構築されたものと推定されます。恐らくあの中には転移も難しいかと・・・この結界を破るには、高威力の物理攻撃こそ最も可能性が高いと思われます。}
「・・・このままギドルガモンの召喚を見逃すとでも思っているのですか?」
「はったりは止めとけよ。アローナ以上の物理攻撃力がなきゃこの結界は破れんよ。仮に破れたとしても、その前に俺の用は終わってる。正直なところ俺でも全魔力の3割は開封召喚にもってかれるからな・・・あの嬢ちゃんを取り戻されたのはこっちにとっても痛手だが・・・おっとそろそろだぜ。」
グラブフットがコンソールを操作し始めた時から、火口の中が少しずつ振動し始めていた。
同時に・・・金色に輝く巨体を丸めた
「あれは?・・・ありえません!
「何を言ってる? 奴の事を知ってるとでも・・・ いや、今はそれはいい。奴こそが15年振りに顕現した
実は・・・ミネルヴァのデータには、伝承や目撃談からの予測スペックは記載されていたが、その姿を確認出来る映像はなかった。
徐々にハッキリとして来る姿を、もう一度良く確認する。そこにいたのは・・・全長50mはある巨体を持った、三首の
「・・・どう見てもキン○ギドラじゃないか! 」
――――――――――
ギドルガモンは黄金に輝く鱗に覆われ、背に巨大な翼を広げて鎮座していた。
三首の先には、それぞれ4対の異なる大きさの角と、凶悪な牙を揃える顎を持った竜の頭部が、色違いの瞳を持ってこちらを
キング○ドラとの相違は一対の腕が有ることだが・・・奴の爪を見ると、どうみても悪い要素にしかならないだろう。
「さあどうする? このままこいつが暴れ出すのを待ってみるかい? 俺はそれでも構わんがね。」
グラブフットがうそぶく。正直な所、ローランドとサブリナを連れて転移しようかとも思ったが・・・大公領の事を考えるとそれも悪手だ。
「ここに至っては是非も有りません。領の事を考えれば、ここで
どうも “奴の思惑通り” に進んだ様な気がする・・・なんとも業腹だが、現時点では奴の力も
「ああいいぜ。元よりその
とても信用出来ないが・・・
「とりあえず・・・ヤツの事を知っているのでしょう? 弱点等は無いのですか?」
「そんなもんがあるなら、神獣なんて呼ばれるかよ。敢えて言うなら
そんな益体も無いやり取りをしている内に、首の一つが
{ブレスが来ます! 退避して下さい!! }
{ミネルヴァ! 倒れている兵士達の下に、エンター2の入り口を設定してくれ!}
{
ミネルヴァの返事と同時に、無数のエントランスが、兵士達を真下に飲み込んで消える。アローナも一緒に収容した。正直な所、助ける義理など1mmも無いのだが・・・
グラブフットを見ると、さほど慌てた様子もない。人の事をとやかく言える程、高潔な人間では無いのだが・・彼等を簡単に見捨てたグラブフットに苛立ちを禁じ得ない。苛つきを抱えたまま、もう一度エンター1に逃げ込む。
エンター1の中から外の様子を見ると、今まさにヤツがブレスを吐き出した所だった。超高熱のブレスが有ることはデータから知っていたが、想像していた炎の奔流のような物とは異なり、巨大なレーザー状の熱線が、僕らの居た付近に着弾する。
瞬間的に、その熱線の範囲にあった物は全て消滅する。さらに、熱線のよって深く穿たれた穴へ、周囲の地面を溶解させたマグマが流れ込んでいく。
周辺にも熱波が押し寄せるが、グラブフットは結界の性能の
{ミネルヴァ、こいつは一筋縄ではいかない様だ。
ミネルヴァにそう言うと、同時に一羽のドローンオウルが姿を表す。今まで隠蔽魔法で隠れていた
しかも、転移座標として待機しながら
{了解です!
「
――――――――――
ヴィルヘルムと対峙した時・・・彼の召喚した
その後、当然だが空間の中で消え失せた訳では無い。魔力回路による
そして昨日・・・グラブフットの使い魔を尾行する際に、テンペストワイバーンの魔晶石を核にしてドローンオウルを召喚した。本来なら魔晶石の元になっている魔獣以外を召喚する事など不可能なのだが・・・
テンペストワイバーンを形成していた “
これで表面的な行動規範はドローンオウルとして行動し、万が一の際には“テンペストワイバーンとして解放可能な使い魔”が誕生した訳だ。サイズについては、基本魔力量の高い僕が使役する事によって調整可能である。
「さあ、勝負はこれからです。例えあなたが“伝説の神獣”だとしても・・・最後には倒される運命なんですよ・・・
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