第49話 現場の事情は…偉い人には分からん物なんですよね? 7
「そんな事かい? それは単純に
うん? どういう事だ?この男、どうも言動がちぐはぐで真意が読めない。ガイアラドライトなる鉱石がどういう物かは知らないが、侵略行為に対しての正当な理由になるとも思えない。ギルムガンは事が成っても成らずとも、国際間で完全にその立場を失うだろう・・・エクスチェンジでガンディロスナイフを手元に戻しながらカマをかけてみる。
「・・・先程から何かと違和感があると思っていましたが・・・あなたは、ギルムガン王国の人間では無いのですね?」
「・・・あんたよく見てるな? 確かに俺はギルムガン王国に所属している人間じゃあない。まあ、今回のギドルガモン討伐に当たって雇われた・・・
「そのガイアラドライトなる物は一体どういう代物で、なぜ
「・・・まぁ、いいか。
随分と新しい情報が出てきたが・・・こいつわざと
「僕が知りたいのは、なぜギルムガンが “魔法の底上げ効果を持つ鉱石を欲しがっているのか?” ですよ。それに話を聞く限りでは、あなたは監視する役目を負う一族の出自なのでしょう?そのあなたがギドルガモンにちょっかいをかける理由も分かりません。」
「慌てなさんなよ。ギルムガンが欲しがっている理由は簡単さ。現国王が死病に侵されててな、余命幾ばくもないから助ける為に欲しているのさ! ギルムガンって国は、長い間王族が多数の派閥に別れて血みどろの主導権争いをして来たんだ。それを現国王が力でまとめ上げたんだが・・・今、現国王が死ねばまた元の木阿弥に戻ってしまうだろうよ。それを懸念した現国王の側近達が、まだ影響力を行使出来る間に国軍を動かした。それが今回の侵攻の真実だよ。」
「なるほど、
「・・・簡単だよ、“アルバ地方からの難民が、酷政を訴えている。難民を受け入れた以上、その言に耳を傾け、人道に乗っ取って救出する”ってのが表向きの理由だよ。・・・そんな顔すんなって、馬鹿馬鹿しい理由だけどよ、そもそも戦争なんぞ正当な理由が有る方が稀だろうよ?」
どうも無意識に辟易した顔をしていたようだ。
「・・・まあ、いいでしょう、続きを。」
「俺が自分の一族に背いて迄この侵攻に参加したのは・・・詳しい理由は省くが、ギルムガンの現国王に借りがあるのと、俺にもガイアラドライトが必要な理由があるから・・・だな。理由は聞くなよプライバシーだ。」
人のプライバシーはホイホイ喋る癖に勝手な事を言う男だ。だが、なぜか話を聞いてしまうのは何故だろう?
「・・・話を聞く限り、あなたはこの二人を解放してもギドルガモンとの接触を諦める積もりは無さそうですね?」
「・・・まあな、コレばっかりはギルムガン国王の件だけじゃなく俺個人にも引けない理由が有るしな。勿論最初はその嬢ちゃんがいない事が前提で話を進めて来たんだ。居なくても何とかする手だてはある。そもそも嬢ちゃんには魔力を込める役目をお願いしただけで、それに付いても、見返りにガイアラドライトを分けるからって事で話は付いてる。」
視線をサブリナに向けるとゆっくり頷いた。どうも、こう素直に話されると調子が狂う。まだいくつか疑問があるし、この男の話の信憑性が未知数なのだが・・・
「そもそも、ギドルガモン討伐を成す事が出来るとは思えませんが?」
「・・・ああ、仕方ねぇか!コレは俺達一族に伝わってる極秘事項だが・・・そもそもギドルガモンはこの火口が巣の筈だろ?だが見渡す限り何処にもそんなもんいやしねえ、じゃあヤツはいったい
それはここに着いた時から不思議に思っていた。見渡す限り遮蔽物も無く、今は満月の月明かりと、ギルムガン兵が設置した相当数の篝火で、大部分が見渡せるが何処にもギドルガモンらしき姿など見当たらない。それに
「さあ?さっぱり分かりませんね。」
「素直なヤツだな、問い掛けた俺が馬鹿みたいじゃねえか・・・まあいいさ。ヤツはな、普段は
――――――――――
特殊な魔法・・・
「どういう事です? 」
「どうも何も、そのまんまの意味だよ。俺達の一族が管理する古文書曰わく、ギドルガモンは太古にあって
「それはおかしいのでは? なぜギドルガモンは解放されたなら逃げ出さないんです?」
「古文書いわく、ギドルガモンはこの火口にある封印空間の中に居ないと魔力を吸収出来ず、長くは活動出来ないらしい。だから封印が弱まるタイミングで外に飛び出すが、力を使い果たすと
「・・・呆れますね。それが本当なら、あなたにもここに来るまでギドルガモンの状態は分からないという事でしょう? そんな不確かな情報でここまで大それた事をしでかしたのですか?」
「それに付いては・・・賭だったのは否定しねえよ。まあ他に手がなかったのは事実だ、流石に本調子のギドルガモンと勝負出来るとは思っちゃいないが・・・
「どれほど本調子からは遠くとも、あなた方の勝手でそんな不安定な
「引く気はないと?」
「当然でしょう。」
そう答えて男を見据える。不意に男は目深に被っていたローブを下ろした。現れたのは黒髪を短くした四十がらみの男だ。どういう訳か目を閉じている様に見えるが・・・
「まあ、簡単に説得出来るとは思っちゃいねえさ。そっちの
ヤツの目蓋が少しずつ上がっていくと、そこには・・・黒い眼球に金色の虹彩が浮かんでいた。
「あんたも相当なもんだってのは分かるがな・・・俺も普通じゃないんだよ。」
そう言った途端、グラブフットの周囲に暴風の様な
{いけません! ヤツの
まずい、ヤツのペースに引き込まれて油断した。このままだと自分はともかくサブリナとローランドが巻き込まれる!
{
{
「ムーヴ!」
二人の背後に転移する、同時に二人の目前に扉サイズの黒いゲートが現れる。
「暫く避難していて下さい。」
そう言って背中を押す。
「「 え? 」」
二人は抗う間もなくゲートに入りこんだ。と、同時にゲートその物も消え去る。その間にもグラブフットの
「随分と余裕じゃないか?人の心配をしている場合か?」
「あなたこそ、どんな魔法を使うつもりかは知りませんが・・・それだけの魔力ですと、部下やアローナさんでしたか?その方達まで巻き込むでしょう?良いのですか?」
「クククッ、お前の心配する事じゃねぇだろよ。」
ヤツがそう言って右手をかざした瞬間、凄まじい光が視界を貫いた。
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