第58話 外国には…外国の事情がある物ですよね? 585
それは・・・王弟ソルダート公爵が、王宮内の執務室としている、王宮南東区の一室での様子だった。
元々、ソルダート公爵には王宮の外に別邸があり、王都に投宿する際はそちらに滞在する事が殆どだそうだ。今は肝心の王が、それこそ何時“崩御”するか判断出来ない以上、寸毫も王宮を離れる訳にはいかず、南東区の区画を一部自らの拠点として“ロビー活動”に勤しんでいた。まあ、この状況でこの男の立場なら、
そんな活動の谷間、ちょうど空白となって一人きりになった時、その“人物”は現れた。ここであえて“人物”と表現したのは、タップリとした外套に“仮面”をつけて居た為、男女の判別が付かなかったからだ。
「随分、精力的に活動しておるようだな?」
突然、
「貴様! 良く
「ほう?何か問題でも?」
「抜かせ! 現在の王の
「くくくくっ、語るに落ちるとはこの事よ。我等の
「馬鹿な!
「そう、
「なんだと? 貴様らでなければ、やはり
「それは知らぬな、興味も無い。必要な事は告げた、さらばだ。」
「待て! 話はまだ半分・・・! 」
ソルダートが言い終わらないうちに、
「おのれ・・・! どいつもこいつも! 」
――――――――――
“謁見の間”は静まり返っていた。僕のスキル“テンプオーダー”を応用して、何もない空間に、大きなスクリーンを展開し“盗撮”したソルダート公爵の証拠映像を流したのだが・・・
殆どの人間は、内容もさることながら・・・映像を記録する
「ソルダート公爵、何か言いたい事が有れば聞こうか?」
まるで、声に弾かれた様に・・・その身を震わせて公爵が振り向く。これまでせっせと作ってきた派閥の取り巻き達は、
「・・・兄上、こうなったのは・・・
なんと、双子である。二人とも健康的とは言い難い状態(方向性は真逆)ゆえ気付けなかった。当然王国の人々はそんな事で驚く事はなく、じっと聞き入っている。
「・・・もう終わりかの? 」
「・・・なんだと? 言うに事欠いて“終わりか?”だと! 他に言う事は無いのかぁ!! 」
「ふん! そんなに同情して欲しいか? 情けない! おぬしが、
「なんだと!」
逆上するソルダート公爵を、子飼いの護衛が素早く押し包む。四人の剣士、一人の魔法使いが公爵を守る形に陣形を組み、
「ソルダート公! 最早ここ迄! 引きます!」
剣士の一人が、素早く最低限の
衝撃的な映像に続いて・・・王と公爵の余りにも“明け透け”な舌戦に、毒気を抜かれた謁見の間では、誰も公爵が出て行こうとするのを止める事が出来なかった。それこそ
肝心の王は
出口に辿り着いた公爵は・・・最早その叛意を隠そうともせず振り返り、
「王・・・いや
セルディック4世は、猛烈な激情でその身を震わせて宣言する
「いや、そなたと会うのは
王のセリフに公爵の表情が更に歪む、最早何も言わず扉より出ていった公爵一行だが・・・
「カナタよ・・・問題ないか?」
「ええ、“公爵御一行”には、扉の向こうで
実は扉の外にはミネルヴァがあらかじめ“低酸素結界”を張っていた。
「全く・・・お主は“自分の事”をどう考えておる? わしに限らず・・・どんな王でも
今のいままで・・・飄々としていたセルディック4世が不意に
「陛下・・・どうも“権威の
セルディック4世は何も言わず・・・じっと僕の瞳を覗きこむ。この
「・・・ふう、アローナよ!」
「!はい、陛下。」
「わしとカナタの約定は
「・・・ハッ! 陛下の御心のままに! 」
そこで・・・不意に
「アローナよ、今まで・・・そなたには不自由をかけた。故に褒美を与える! ・・・今度の仕儀を・・・そなたの最後の
・・・何を言い出しやがるんですか陛下? アローナさんも・・・何をモジモジしてる? 誤解されるから
「・・・陛下、今は時が惜しいので・・・
トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?” 鰺屋華袋 @ajiya
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