第19話 煌めくは紅き閃光と白き閃光
獣のような叫び声と共に向かいうつは白銀の剣を構えし白い髪の男。
「まるで野獣のような男だな」
「かっかっか、戦いの中で理性なんぞ必要あるめえよ!!」
紅い刀を振り切ると同時に姿をかき消す!!
「ふむ、なかなか速いな」
突如出現した斬撃をいなすと同時に白い髪の男イノセントは目の前に現われた長い黒髪の男喰刀の紅い刀に自身の剣を重ね合わせ
「飛ぶ魔力は如何かな?」
そういうと同時に白銀に光る閃光を放つ!!
喰刀は自身の体を紅い魔力を纏わせて防ぐと同時に後ろに吹き飛ぶ!!
「ちっ!!技ではなくただの魔力でこれかよ!!てめえただの剣精じゃねえな?そうか、お前は失われし世界の・・・」
イノセントは人差し指を口元にとめるとにこやかに言った。
「おっと、それはまだこの世界の意志ある者達には話す事は許されていない禁忌だ、この世界の創造神がかつての古き神に誓った聖約だ、それを語れば君は罰を受けねばなるまいよ」
「ちっ、失われし聖約か、この世界を再誕させた神との聖約、古き神が再びこの世界に戻るための誓約、まあ綻びもではじめているらしいから、その聖約も完璧じゃねえだろうがな」
「それ以上は語らない事をお勧めするよ、これ以上語ると僕個人が消滅させなければいけない」
「なるほど、なんとなくお前の正体は掴めてきたが、何も言わないでおいてやるよ、1000年ぶりの闘争だ、興が覚める前に殺りあおうぜ」
イノセントは再び白銀の剣を構える。
「やれやれそちらの人生の意志ある者達は血の気が高いな」
「戦いこそ存在理由だからなあ!!まだまだやれんだろおお!!」
叫び声と共に紅い魔力を放出させ喰刀は嗤う!!
「久々に復活したと思ったら相変わらずね」
紅い和装を着た紅い髪の紅眼の少女は青い柄の刀を腰に差しながら音もなく現れた。
「お姉さん、あのお兄さんの友達?」
「・・・うーん、どちらかというと妹かしらね」
「そう」
ミロクは突然現れた紅い髪の女性に驚きもせずにイノセントと喰刀の戦いを見ている。
「驚かないのね、僕」
「驚いてほしかった?」
「別にそんなんではないわね」
ミロクの隣に座ると
「貴方怖くないの?」
「何かするならもうすでにしているでしょ」
「それもそうね」
紅い髪の女性はふむと頷くとその整った人形のような顔を向ける。
「私はマキナ、貴方は?」
「ミロク」
「そう、よろしく」
「うん」
ミロクはにこりと笑うと同時にイノセント達の戦いにまた目を向ける。
「おや、御親戚かな?」
「まあ製造元は同じだなあ」
イノセントは焦りもせずに喰刀の猛攻をしのぎにこりと微笑む。
「・・・どうやら君の戦った相手がこちらに来そうだね、どうだい、ここらでお互いに全力で剣技を放つというのは」
「いいねえ、戦場には華がなければな、あんた、流派はあんのか?」
「流派ねえ、もう名すら消え失せた凡人が極めたなんてことのない流派さ」
「ぬかせ、俺の脳裏にある人物と同じならイノセント、あんたの流派はあんたしか全てを扱えない唯一無二の流派だろ」
「はは、それは光栄だね、だが過大評価も困るよ、この技はただ護るべき友と愛すべき誰かのために捧げただけの技さ」
「かかっ、護るための剣技か、わるかねえな、俺の剣技はただ塵とするだけの人殺しの技だからな、世界を殺し呪いすらも切り裂くそれだけの技」
「その研鑚は悔いがあるのかい?」
「後悔はない、存在も否定しない、ただ俺の同胞を護るための上等な剣技ではなかったな」
喰刀は笑いながらイノセントに抜刀の構えをする。
「問答はしまいだ、魔神飢餓の王が創りし刀喰刀!!推して参る!!」
「光と闇を司る神バルバトイの創りし聖剣イノセント、参るよ」
イノセントも静かに剣を構える。
紅い閃光と白銀の閃光が迸る!!
「散れよ、桜、血すらも散らし戦場を鮮やかな血を染まれ、血刀朱染桜!!(あけぞめざくら)」
「その身に宿るは閃光の果て、誓おうこの剣の最果て、光の先へ!!閃きの彼方!!(ひらめきのかなた)」
紅い魔力の奔流と白銀の魔力の奔流がぶつかり合い世界が紅と白に染まり揺れた。
「ちっ、俺の負けか」
パキンと赤い刀は折ればたりと喰刀は倒れた。
「なかなかに強敵だったよ、喰刀君」
イノセントの頬に紅い血の裂傷がつけられる。
「マジで、いやマジで何が起こってんの!!つうか封印したはずなのになんで復活してんのよ、喰刀」
「うるせえ、復活したんだから仕方ねえだろ、それに暫く戦闘不能だよ、本体折られたし」
ものすごく心配したマリアベルに思い切り説教を受けたミロクを見ながら喰刀はふうとため息をつく。
「てか俺が言うのも変だが、ガキ大丈夫かあ?」
「怖かった」
「あああん!!もうごめんてええ!!お姉ちゃん心配したんだよお!!!てかなんで最下層までこれたの!?」
ピンク頭をふりふりさせながらきゃあきゃあ叫ぶ!!
「喰刀・・・あの人千年前に喰刀が挑んで負けて封印されたひと?」
「うお、いきなりだな、お前、久しぶりだな、マキナ、そうだな、あんなんでも超つええから、下手な事すんなよ」
「油断しない、外側はあんなんでも油断ならないだろうし、他の兄弟と比べて私は別に戦いに存在理由は置いてない」
「あーお前はそうだったなあ」
「喰刀も多分今はそうでしょ?」
「ああ、確かにそうかもなあ」
喰刀は封印されている間、このダンジョンの街を見ながら人の営みをみて、少しずつ護る事の意味を独自に理解していった。基本的に自分達を産み出した魔神達は邪悪と分類はされるが、中には人間達と共に生き生活をしていて世界を護る魔神達もいる。当時はわからなかったが、今ではそれなりにわかるような気がしていて、そしてこのマキナも同じ魔神に同時期に創られたいわゆる妹にあたる刀霊の刀で、同時期に鍛えられた刀達の中で人間側にいち早く協力した変わり刀として認知されている。
「ならば、この街で人として生きてみればいいんじゃないかな?」
「イノセント・・・」
「誰かを斬り結ぶだけの存在ではなく、護るために生きるのもまたいいかもしれないよ」
「護るために・・・」
「この世界は命が軽いからね、君が積み上げてきた力を戦うだけじゃなくてもいいんじゃないかな」
イノセントはにこりと微笑むと喰刀は肩を竦めた。
「まさか、あんたが用心棒になるなんてねえ、抜き身の刀みたいなあんたが」
マリアベルの言葉に喰刀はまた肩を竦めた。
「マキナお姉さんはどうするの?」
「あんなでも私の兄だし、残るわ、それに」
マキナは隣にいるイノセントをみると
「貴方の剣にも興味あるからね」
マキナはにっこりと笑った。
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