第12話 呼び出される声

「(つま・・・らん)」


ふと耳に聞こえる声、アキラの家にある自室でむくりと起きたミロクは眼をこすりながら時計を見た。時刻は夜の12時を超えている。兄と姉であるアキラ達は今日は遅くなるといって外出しているはずだから、アキラ達の声ではないのはわかる。


「こんな時間にだれだろう?」


「キュイ?」


一緒に寝ていたフォーチュンラビットのラッキーも首を傾げる。


「たまには夜の冒険も悪くないよね、ラッキー、燐火お姉ちゃん達も今日はいないようだし、いってみようか」


ミロクはわくわくしながら外へ行く準備をして外へと出た。



「うん?坊主じゃねえか、こんな夜中にどうしたあ」


街中の屋台でうどんに似た麺を食べる灰色の髪の片目に傷を負った黒いスーツの大柄な男は外に出てきたミロクを見つけて声をかけた。


「あ、マードックおじさんだ、こんばんは」


「おお、こんばんは、まあなんだ、とりあえず飯でも食いな、ここはおじさんがおごるからよ」


「かか、悪逆の都の悪名高き最上級冒険者様もミロク君には甘いねえ」


「うるせえよ、親父、弟子を可愛がるのは師匠の務めだろが」


顔を赤くしたマードックという男は屋台の親父にそう告げるとミロクを隣に座らせて眼の前に同じ麺料理を置いた。


「屋台のおじさんのごはんいつもおいしいねえ」


「ありがとうよー、しかしなんであんな兄貴にこんな可愛い弟がいるのかね」


屋台の親父はエプロンをかけなおしながら笑う。


「まあ母親が違うからな、母親の教育がよかったんだろう、アキラの母親はやばいからな」



「ああ、冒険者ギルドのはじまりを創り、初代グランドマスター、加えて暗殺者ギルドの初代ギルド長、そして伝説の傭兵にして最古の魔女、親父さんは伝説の初代勇者、アキラに関しては常識が通じん危険人物、まあミロクと住んで多少は丸くなったようだがな」


「アキラお兄ちゃんのお母さんはすごいひとなの?」


「ああ、すごいなあ、まあそのうち会うだろうから色々と話しをきくといいが、まあ身内には甘いから問題はないし、ミロクに至っては血の繋がらない母のようなもんだからなあ、寧ろアキラから聞いたら母親たちは皆ミロクに会えるの楽しみにしてるようだからな」


マードックは麺のお代わりをしながら語る。


「まあマードックに関してはアキラの母親の直弟子だからなあ」


「ああ、一度戦ってお前気に入ったから今日から弟子なって言われたのはびびったが、、まあそのおかげでソロでも生きれてるからなあ」


「僕もアキラお兄ちゃんのお母さんとお姉ちゃん達のお母さんに会いたいな」


「・・・本当になんでこんな純粋な弟がアキラにいるのかねえ、アキラ含めて他の兄姉はやばいからなあ、まともなのはアロンドくらいか?」


「いやああの嬢ちゃんもキレたらやばいぞ」


「まあなあ」

ミロクは首を傾げながら麺を食べ終わると


「ごちそうさまでした!おいしかった!」


「おお、それはよかった、またおいで」


「おじさんいくら?」


「ああ、ここはおじさんが出すよ、その代わりそうだなあ、次はなんか面白い話を見つけたら教えてくれ」


「おお、情報の重要性だね!」


「そうそう、情報は大事だからな」


マードックはそう言いながらミロクの頭をなでる、基本的にミロクは自分の事は自分でとしているので、9歳にしてちゃんと稼いだ分を貯金したり、購入したりしている。父親と母親にお金関係で人間関係はおかしくなると教わっていたそうで、マードックはきちんとした教育を受けていると判断して、対価という形でいつもミロクが納得いくようにご飯とかを御馳走しているのだ。


マードックはシシリーからの依頼はあったものの、教え子にした少年であり、この都で殺伐とした依頼を受けてばかりだったマードックに関してはミロクは自分のつまらない日常を変えてくれた少年であり、この少年の成長を楽しみにしている師でもある自分がなんだかんだ面白く感じている。マードックもまた長命種であり長き時を生きる少し特殊な人種ではあるが、恐らくこの少年は自分よりもいずれ高みにいき、神へと至る存在だろうと思っているので、これからの世界を楽しんでほしいとはおもっている。


「んで、坊主、なんでこんな夜更けに」


「声が聞こえたんだ」


ミロクは懐にいる従魔となったラッキーをなでながら言う。


「声?」


「うん、つまらんて」


「つまらんか」


マードックは頷く。


「それはどっちかわかるか?」


「多分あっち」


マードックがミロクの指さした方を向けるととんでもない瘴気を感じた。


「・・・あっちが確かなら、呪王の森だなあ」


マードックは頭を抱えた


「いやまて、坊主、そこにいくのか?」


「いく」


「あそこはな、未踏破地域で、俺でも苦労する場所なんだがな」


「でも呼ばれているから」


「ああー、もう決断したのねえ」


この短い期間で決めたら梃でも動かないということを理解しているので、


「親父、冒険者ギルドに連絡してくれ、とりあえず俺は坊主と先にいく、坊主、危険ならすぐ撤退するからな」


「ありがとう、マードックおじさん!!」


丸くなったのは俺もだなあとマードックは一人ごちる。



「つまらん」


暗い森の奥深く神社のような社にいる赤い瞳の月ような金色の髪を持つ美しい女性。纏うのは赤い着物に端正に整った美しい少女のようで妖艶な美女のような顔に退屈そうな顔を見せる。唇に紅をつけ、キセルをふかしながら。


「あの女、私をこの場所に括り付けてそのうち私の血を持つ子が現れるわ、その時貴女の退屈はなくなる、私の勘は当たるのよとのたまったがもうすでに1000年の時は重ねたぞ?」


ため息をつき。


「まあ私の言葉を聞けた者がいるようだから、多少は気がまぎれるか」


そう言いながらキセルをふかし月夜を見る女性







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