第15話 祖父と末孫
「ぐははははっはははっはは!!その子がミロクか!!」
月神教の総本山を占拠し、あらゆる問題を終わらせた後、その場にいたミロクを見ながらバルバトイは嬉しそうに豪快に笑った。
「祖父ちゃん、神気抑えろよ、泡ふいてんぞ」
「すまんすまん」
アキラに言われてバルバトイは頷くと、信徒達を見ながらふむと頷いた。
「粗方、洗脳は解除されているとはいえ、この総本山にいる者の9割は洗脳されていたようだの、ばあさんは?」
「ああ、ミロクのお友達の呪いの王様と一緒に事故処理しているよ」
「なるほど、この呪い共はミロクを護るためにいるのだなあ、さてミロク、祖父ちゃんだ!!よろしくなあ!!」
呪いと遊ぶミロクは振り返るとにっこり笑って
「はじめましてお祖父ちゃん!ミロクです!!」
「ううん!!!百点満点じゃああ!!」
「祖父ちゃん、また神気が漏れ出てるから、いやマジで創造神のおっさん並に強いんだから、吹き飛ぶから落ち着けよ」
「アキラ、儂は赤子の頃からの写真と動画を真一とトワからもらっておるが、生身はやばいな!!」
アキラは薬草煙草に火をつけると
「もう神とかそんなん問わず末っ子に弱いのはどこも同じだなあ、俺も人の事言えないけど」
ため息をついた。
とりあえず月神教の総本山の問題はルナティック達が治め、暫定的にルナティックが総本山を預かる事になった。健全な宗教運営がなされない宗教というのはある意味軍隊よりもたちが悪いという認識をルナティックは考えているからだ。
寄る辺なき思想と心の安寧を持つ事が基本的には宗教や神に祈る事の思想だとルナティック自体は思っていて、そこに金銭という欲が入るとなるとまた別の優遇が生まれ、俗世による圧政にも繋がるとも考えているからだ。
勿論宗教と神の信心と国として結束するのも有効ではあるが、神から産まれた人とはいえ、国と宗教は分かたれるものだと考えているし自分を産み出した父である創造神も元は人間であることから、基本的には国とは人が運営するものであるし、神の力は必要な時にあればいいと考えている。
この世界には神の加護や神が顕現できるとしても基本的には人である以上の事は基本はしないし、神の力を振るうにしても基本的に人の身で顕現できる以上の力は振るわないだろう、それでも人には過ぎた力ではあるし、世界の均衡を崩すに足りえる力ではあるので、常に加減はしているが、勿論孫達にも力の使い方は個人的に教えているし、ミロクに関しても教えるつもりではいるが、兄であるアキラやアキラの仲間達が個人的に教えているのも聞いてはいるので、あまり心配はしていない。
それよりもミロクに会えるのを楽しみにしていた夫がミロクに対してこの世界で顕現できる限界までの力を込めた聖剣をあげた事が非常に問題だ。
夫は非常に豪放磊落で竹を割ったような性格ですごく好きなのではあるが、自分が愛情を注ぐ者には際限なくこの世界における伝説級の神器を与えてしまうくらいの男で、アキラも眉間に皺を寄せながら詰め寄っている。
「祖父ちゃん、これ俺の誕生日の時よりも性能やべえ奴じゃん、鑑定したけど、いくら末の孫が可愛いからって9歳が扱いきれない聖剣を与えるとかやべえだろ」
「大丈夫だ!ちゃんと力を制御できるようになってから発動できるように力を封印しているからな!!ミロクの成長に合わせてその剣も力を解放できるようにしてある!」
「だからってやべえだろ・・・」
アキラの鑑定結果にはミロクに与えられた白銀の煌めく剣にはこう記されている。
聖剣イノセント
光と闇を司る神バルバトイが世界が耐えうる限界まで力を注ぎこみ産み出した聖剣。
末孫の成長を願いあらゆる邪悪と正義を破壊し、護るべき者を護るために産み出された。
その剣には意志があり、末孫の成長を見守るために創り出された。末孫ミロク専用。
ミロクが内なる力を解放する度に真価を発揮していく。
解放1段階
自身の全ステータス10パーセントUP
常時回復10パーセント
HP増強10パーセント
MP増強10パーセント
速度20パーセントUP
自己修復
意志疎通
固有アビリティ
剣精の庭
「お祖父ちゃんありがとう!この剣話せるの?」
「ああ、話せるぞ、この世界にある剣に宿る意志を重ね合わせて産み出したちょっと特別な精霊だからな、わくわくするだろう!!」
「マジ神の力でやりたい放題じゃん」
アキラはため息をつく
「普段は加減しかできんからのう、なあばあさん?」
「私は貴方みたいにそこまで力に拘りはないですが、そうですねえ、普段は加減してますからねえ、でも末孫に与えるにしては大きい力だとは思いますよ?」
「なあに、儂らの孫だ、すぐ力をつけるさ、それにこの世界で護る力はあって損はないだろう、それに喜んでいる、主を見つけてこやつ、創り出したのは儂なのに儂よりもはやくミロクに会いたいと念話しおったわ」
「まあ貴方がそのように創ったわけですから、それはそれでいいんじゃないかしら」
「そうじゃなあ、イノセント、無垢なる末孫にふさわしく産み出した聖剣よ、末孫と共によき旅路を進んでくれよ、さてばあさんはこの総本山を整理してからいくだろう?」
「そうですねえ、色々と教義も整理しないといけませんし、そうね、呪夢ちゃんにもお手伝いしてもらおうかしら、貴女の呪いは有用だし」
「呪いの王にお願いなんて貴女くらいだよ」
「あら、いいじゃない、基本的に魔祓いの力持ちなんだから、それに今なら重要なポジションと美味しいお菓子をつけるわよ?」
「ポジションはいらないけど、現代のお菓子はきになるね」
「そうねえ、最近のおやつは美味しいわよ」
「はあ、じゃあそのおやつ楽しみに手伝いますかあ」
「なんだかんだ、貴女いい子よね」
ルナティックはクスクスと笑いながら呪夢を伴いながら法王室に足を向けた。
「とりあえずこれで終わりかなあ、冒険者ギルドにはもう連絡したらしいし」
アキラは肩を竦めながら薬草煙草を携帯灰皿に詰め込む。
「煙草やめたのか」
「ん、ああ、まあ子供の前だしな」
「なんだかんだ、アキラは子供と女性には甘いからなあ」
「うっせーよ、祖父ちゃん、それよりも、ミロクはあれだな」
「ああ、どうやら招かれたようだな、意識をもってかれてる」
「じゃあ抱っこして戻るか」
「クーロンか、なれば儂もいくぞ、他の孫達もいるのだろう?」
「ああ、そうだなあ、兄さん達はいないけどな」
「一番末の妹もおらんだろ」
「ああ、なんか連絡きたけど、弟を歓迎するために自分の国を新しくリニューアルしてるとかっていってたなあ」
「あの子も不思議な奴だからなあ」
「祖父ちゃん譲りだろ、それは」
アキラはミロクを抱きかかえると肩を竦めた。
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