第16話 無銘の英雄
「ここどこだろう?」
「ここはそうだね、イノセントという君のお祖父さんが創り出した聖剣の内在世界という所かな?」
「剣の世界ってこと?」
「賢いね、そういう事だ」
白い空間に心休まる空気が流れ時間が緩やかに流れるようなそんな感覚。
目の前に現われたのは白く長い髪に穏やかな笑みを浮かべた紅い瞳の白いローブを纏った青年。身長は高く細身でありながらも内側に宿る力は膨大なのを感じる。
「居心地いいけど、僕にはまだ扱えなさそうだなあ」
「我が主は素直だね」
にこやかに目の前の青年は笑う。
「でもお兄さんはイノセントに宿るっていうだけで本当の名前ではないでしょ」
「そこまでわかるのか、なるほど、さすが神の末孫というだけあるね、そうだね、僕の名前、真名はミロク君、君が本当に振るうべき力を見つけた時に教えてあげるとしよう、君が言うようにまだ僕の力を扱うには時期が早い」
青年は笑う。
「だから今の名はイノセントという事にしておこう、少なくとも第一解放はできるからね、聖剣というのは質にはよるが大体三回解放と、真名解放というのがあるからね」
「そんなネタバレみたいな事していいの?」
「ミロク君の内在する力であればきっとすぐだからね」
「僕はまだこの世界にきたばかりだよ?」
「来たばかりだからね、君はまだ幼くわからないだろうが、君がこの世界に現われて、君の存在を感知した存在は皆、君に注目している、この世界を創造した創造神の血肉を与えられた祖母と創造神の盟友にして他世界にも君臨する光と闇を司る神を祖父にして、聖魔の勇者にして英雄神の父、魔女にして転生と運命を司る神の母、そしてその父の血を継ぐ人と超える種族の兄と姉、創造神の血族にして未だ未覚醒の無垢なる存在、善き者になるか魔なる者になるかわからない、そんな存在をこの世界の理を超える者達は見逃したりはしないよ」
イノセントに宿る青年は微笑む。
「それでも君は未知なる存在に心を開き友になり仲間になる事をするだろう、子供とは元来そんなものだからね、お祖父さんもそんな君の行動や想いを感じたんだろう、恐らくこれから君は子供としてではなく一人の人間として多くの苦難や悲しみも抱くだろう、この世界はそういうものもあるからね」
青年は再び笑う。
「ミロク君、君が英雄になるかどうかなんて君が決めるべきことであるし、運命を決めるのは自分自身だ、何よりもその無垢なる心はきっと変えようのないものだとおもうから、ただ個人的に思うのは英雄なんてものはなるもんじゃないとはおもうね」
「経験として?」
「そうだね、経験としてかな、名すら刻まれなかった、一部地域にだけ口伝で伝わる英雄の話」
「・・・聞かせてくれるの?」
「そのうちね、今日はここまでにしよう、まだ幼い君の意識を留めるにはちょっと時間が足らないからね、君の体力が消耗してしまう」
「なんて呼んだらいいの?」
「そうだねえ、さっきはイノセントといったけど、ミロク君が呼びやすいように」
「じゃあ白いお兄さんで」
「まんまだね、じゃあそうしようか」
そう言うとにこりと青年は笑いミロクに手を振るう。
「さあ夢から目覚めるようにあるべき場所へ」
「うん、また会える?」
「会えるとも、君を護るためにこの身はあるからね」
「じゃあまたね」
ミロクが微笑むと同時に消えたのを確認すると
「幼き少年は神と英雄の血を受けこの世界に訪れるか・・・、まるでかつての僕にようだな、異世界へと導かれ戦い抜いた終わりに悔いはないが、あの子を僕と同じようにはさせない、無垢なる魂を堕とさせはしない」
白い空間の中で青年は歯ぎしりをする。
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