第18話 進化するダンジョン王国

四番目の姉であり、真一の末の娘である、マリアベル=ゼロ、原初のダンジョンマスターの資質を受け継ぎ真一の勇者としての資質も受け継ぐ英雄の器を持つ者。かつて伝説となったあらゆる物語での逸話にも出ており、彼女を取り巻く仲間達や腹違いの兄と妹の話も世の中に伝わっている。


遊戯の盤上の建国者であり、ダンジョンマスターの技能と勇者としての技能と父から受け継いだ異界の知恵を活用しあらゆる技術を集結した歓楽都市、それが彼女の産み出したダンジョンの中に産み出した一つの王国である。


彼女の臣下としているのはいずれもネームドと呼ばれる名持ちと呼ばれる知性ある魔物や魔人、そして人ならざる者。


そして・・・。


「ほっほっ、お嬢様の弟様という事は真一様の息子でもあり、我が創造主の孫にもあたりますね、真一様もまた創造神様の娘でもある今世ではルナティックと名乗っている方の血筋でもありますし、何より原初の神々は創造神様の力から産まれましたからね、血ではなく力では確かに繋がっておりますから」


「そうねえ、創造神のお爺様は言うなれば私達の曾祖父にもあたるかもしれないから、あっているかもね、セフィリス」


マリアベルの目の前に現われた茶髪の髪をオールバックにした穏やかな老執事はにこやかに微笑む。


「そうですねえ、弟様は?」


「ああ、ロキシルに国の案内をお願いしてる」


マリアベルはにこにこと笑う。

「なるほど、弟様にこの国を見せるのですね」


「そうね、あの子は地球で育ったから、本場の世界から来た子に見せるのも悪くないでしょ」


「真一様とお母さま、そして他のお母さま方にも会えるのが楽しみですね」


「そうね、何年もあってないから、ゼロ母さんやゼロ母さんの兄弟にはあっているけど」


召喚陣を見ながらふっと笑う。


「お嬢様の目指す平和思想を弟様にも?」


「ううん、価値観や思想は違うわけだし、まだ幼いあの子に押し付けはしないわ、それに兄や姉達も自分達の考えで動いている」


「この世界を平和に導くには家族の力も必要なのでは?」


「平和なんてものはそれぞれ違うし、私だけの思想で産み出すものではないわ、それは天使でもある貴方にもわかるでしょう?」


「天界より堕ちた天使ではありますがね」


セフィリスは黒い翼を広げ、にこりと笑う。


「私はもしかしたら英雄ではない者として呼ばれるかもしれないけれど、それが私の行く道ならば仕方ないわね、来るべき時まで私は私の世界を護るだけよ」


「それが御身の誓いならば、私は従いましょう」


「ありがとう、セフィリス」


マリアベルはそっと微笑む。





「なんだか決意ある瞳持ったお姉ちゃんだったなあ」


アイスクリームを食べながらミロクはふと先ほどのマリアベルの瞳を見た時の感想をつぶやいた。この国は地球の技術が応用されていて、東京の都心部レベルの技術が使われている。創られた空とはいえ四季はきちんとつくられ、下水道が完備され、様々な施設が産み出され、ショッピングモール、居酒屋、Bar、この世界特有の武器屋や防具屋、魔法店等が立ち並び、市場等も都会的な雰囲気に違和感なく創られている。



ショッピングモールの中にある、流行のアイスクリーム店でロキシルにアイスをごちそうされながら云々と頷く。


「・・・なんでまたそう感じたのかな?」


ロキシルもまたアイスを食べながら問いかける、ちなみにロキシルは棒つきのカカオアイスにミロクはバニラのソフトクリーム。


「何かを決意しているひとは、眼に何か色が宿るから」


「ふむ、共感覚というのがあると聞いた事があるからねえ」


ロキシルはアイスを食べながら頷く。


「優しいけど自分を燃やすような赤だったから、なんか不思議だなと思った」


ロキシルはふむと頷く。


「君は聡いな、彼女は昔からそうなんだ」


アイスを食べ終わり


「定命の者の誇りを称え、長命の者の技術を称え、傷つく者に安寧をもたらした」


「難しい言葉だね」


「ああ、簡単にいえばお人よしってことさ」


ロキシルはふむと頷く。


「彼女はこの世界を平和にすることを目的としている」


「平和はいいことじゃないの?」


「いいことだね、人が幸せになることはいいことだ、それに彼女にはそれだけの事を出来る力がある」


「・・・一部の力ある者がこの世界を護るとなると歪みが生まれるんだね」


「・・・君、本当に9歳?」


「9歳だよ、なるほど、マリアベルお姉ちゃんはよくわかんないけど、何かしようとしてるんだね」


「なんだ、この主人公属性の強い9歳」


「力ある者が安寧を司るとなったらその人に犠牲を強いる事になる、そして今進行形でなんかしら問題がある」


「ちょっと9歳、安寧なんてなんでそんな難しい言葉知っているんだ」


「なんか地下に妙な気配がするぞ!!いってきまーーーす!!」


「ちょっと待て!!はやいなおい!!」


突然走り出したミロクを追ってロキシルも走り出す!!



「ははは!!苦節1000年!!あの女の封印を破るのに時間かけたぜ!!」


遊戯の盤上の国の奥深く、国の真下。

ダンジョンの最下層の場所、黒い着物を着た長い黒髪の男が叫びながら紅い刀を掲げ

「まずはこのダンジョンをぶええ!!!」


「何か変な雰囲気なお兄さんだなあ」


「なんじゃああ!!!ガキ!!」


目の前に現れた黒髪の少年を睨みながらたちあがる。


「先手必勝はいいことだね、ミロク君」


ふっと白いローブの男が現れる。


「なんじゃあ、色男、産まれたばかりの聖剣かあ?」


「真名はまだ教えてないがね、君は魔神が創り出した堕ちた神刀だね」


「かっかっ、真名持ちか、そこなガキお守りには大層なもんだな」


「君の銘は?」


「俺の真名も解放はしてねえからなあ、そうさなあ、呼ばれているのは喰刀(がとう)」


「なるほど、名を忘れ去られた過去の魔神達の作品か」


「そうだなあ、俺の主は滅び、同胞は眠り、主の仲間はどこぞの闇に消えた」


「では君は今は抜き身の刃か」


「刀に産まれたからには斬り喰らい糧にするしかあるまいよ」


「淀みある現身を持つならば確かに強き力を持つミロク君の姉でも手こずりそうだ」


「あの女は1000年も前に戦い倒されたが俺にはもう油断もない」


「ふむ、では戦う以外のやり方も見つければいい」


「俺は魔に連なる者だ、それはできまい」


「意志があり、道筋を見通す眼があればできるはずさ」


白いローブの男、ミロクの聖剣イノセントは微笑む。


「ミロク君、ここは私に任せてくれないか、剣と刀、宿る者同士戦いたい」


「いいよ」


「抜かせ」


目の前の男喰刀は紅い刀を構え嗤った。



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