第20話 聖魔の勇者

「久しいな、ルーンディア」


銀髪の髪をオールバックにし、滞在先の国から少し離れた丘の上で欠伸をしながら目の前の白金色の長い髪を束ねた黒いドレスの女性に眼を向ける。髪と同じ色の瞳に透き通る白い肌、どことなく憂いを秘めた美しい顔。人形のような無機質な表情。太陽光を浴びても夜の気配を感じる美少女とも呼べるような姿。彼女の名はアイシア=ルーンディア。月と夜に愛されし吸血鬼の真祖。そして勇者であった時代、共にこの世界を歩んだ戦友である。



「ええ、久しいわね、真一、内在する力もまた大きくなったようね」


「ああ、エイジと同じように俺も成長限界はないからな、お前もそうだろ?」


「そうね、大概超越者になった者達は限界を超えてないものとされるからね」


ルーンディアはふむと頷く。


「それでお前が来たのはどんな用事だ?自分の国にいることの多いお前が何の用事もないのへ珍しいよな」


「別に何てことないわ、新たな神獣がこの世界に生まれたってだけ」


「ん?産まれるにはまだ早い時期じゃないか?」


「貴方がしばらく地球にいたのも影響あるみたいね、地球は魔力があっても使う人間がいない、魔力の素となる魔素が充満している、開いたのが賢神であるスピリオネとあなたと、トワ、神性を宿した神でもある貴方達が開けばこの世界にも地球の魔素が流れる、この世界の魔素はいまだかつてないほど循環しているわ」


「うっかりしてたな」


「それに聖なる力と魔なる力を持つ勇者でもある貴方の潜在的な力がこの世界に新たな理を産み出している、貴方、地球でも魔法や魔術を行使したでしょ?」


「ん、ああ」


ルーンディアはふうとため息をつき


「貴方の魔力を通じて地球の技術が魔力の中の法則として産み出されたわ、新たな世界のルールが産まれた、元々地球の技術は問題ない範囲で受け入れていたけど、それ以上の技術が発生できるようになったはずよ、今更新たな理が増えるのは問題はないとは思うけど、新たな力で少し騒がしくなるでしょうね、属性的には貴方の魔力を通してからだから、聖と魔が混じった物を基礎をするでしょうね、あと機械本来の雷の属性かしら」


「創造神の爺にいっとかないとな」


「それは私の方から伝えたわ、気にしないっていってたわよ、それと地球で育てた貴方の息子、ミロク君が地球に育った故に固有魔法を持っている可能性があるって」


「まあ確かにミロクはある意味特殊だからなあ」


「貴方とトワの息子なら貴方達の力を受け継いでいるだろうし、祖父母の方達の力もきっと受け継いでいるはずよね、私も会ってみようかしら」


ルーンディアは頷きながら顎に手をつける


「まあ、他の子供達には大分好かれているからなあ、会ってないのはうちの長男と次男だけか」


「ああ、あの二人も大分年離れているからねえ、そう考えたら私達も大分年齢重ねたわね」


「言うなよ、不死で不老になったが若者達の流行についてけんのが地味にダメージを喰らう」


「まあいいじゃない、文明が滅ぼうともきちんとまた文明が芽吹き、そのたびに私達は見守れたわけだから」


「そうだな」


真一はにこやかに微笑む。


「真一の末の息子、他の皆も興味もっているみたいよ、親友の息子ほど可愛いみたいだかね」


「お前らも親だろうに」


「娘や息子達は大きくなって自立してるからね、それに数百年も生きていたら、大人でしょ」


「まあ人間からしてみたらもう化け物の領域だけどな」


「だから、興味あるのよ、人であり神であり、そして」


「それ以上は黙っといた方がいいな」


「そうね、約束の日まではね」


ルーンディアはくすりと笑うと


「マリアベルちゃんのとこよね、折角だから会いにいくわ、トワによろしく」


「ああ、可愛がってくれ」


「ええ、勿論」


ルーンディアはくすりと笑うとその場から消える。


「相変わらずだなあ」

真一は肩を竦めて空を見た。



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