第11話/医師、かく語りき
犯罪は、断言できる。内容的にいえば、違法な
「センセー、みんなのおやつを、ないしょで食べちゃうデューイくんは、刑罰っていうのを受けなくてもいいの?」
「罪に問われて
「げんじゅうちゅういしょぶん?」
「ああ。教育的指導とかな。とはいえ、何度もくりかえすのは反則だ。注意だけで効果がなけば、次の手段を考える」
「しゅだんってどんな?」
「そうだな。たとえば……」といって、トリッシュはブランカを少し
「お絵かき禁止とか、それでもやめなければ色えんぴつを
医者は聴診器を首にさげ、まじめな顔つきで冗談をいう。だが、本気にとらえたブランカは、「そんなの、やだーっ!」と、大声をだした。やけにむずかしいことばを知っているなと思ったが、法律の勉強をするフューシャの影響だろうと察した。〈エレメンタリーハーツ〉は、訳ありの少年たちを一時的に引き受け、生きる力を養い、希望をあたえ、成長をうながす。それが、診療所を兼ねた施設が達成すべき目標なのだ。また、健康な心身を取りもどした子どもたちは、みずから将来を見据え、成人するころには旅立っていく。
「ぼく、悪いことしないから、お絵かき禁止にしないでぇ」
幼いブランカは、警告だけで涙ぐむため、トリッシュがなだめた。
「安心しろ、ブランカ。今のは、たとえ話だ。ただし、どこにいても、きびしいと思うときがある。泣きべそをかくのは眼がこごえるからで、きみのせいじゃない。心もからだも、悲鳴をあげているんだ。たくさん泣いたあとは、絵筆に力をこめて、青い空を
淡々と語るトリッシュは、そっとブランカの肩へ手を添えた。旅立ちの扉をひらくには、勇気が必要である。大地の色に暗い茶色や黒ではなく、明るい緑をえらべたとき、ブランカの心は、かならず成長するだろう。
✓つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます