第16話
トリッシュの問いかけに、グレリッヒは一瞬、変な顔をした。遠まわしに
「なにがおかしいんだ」
トリッシュが顔をしかめると、グレリッヒはひとしきり吹き、「おまえさんの勘違いを正してやろう」と云って、胸もとから四つ折りの紙片を取りだした。
「ほらよ。原因の
紙片を差しだされたトリッシュは、無言で受けとり、やや用心深く内側をひらいた。すると、繊細な筆づかいで描写された人物画と目があった。
「……これって、ユリネル?」
薬師とよく似た顔だちをしていたが、現在より少し若い印象を受けた。髪の毛の質感や衣服の皺など、細部まで丁寧に描きこまれており、胸から上を写した
「あいにく、そこに
「そんなことあるか。この顔は、どう見てもユリネルだぞ」
「双子の兄だ」
「ふた……、兄だって?」
よもやの真相に、トリッシュは息を
「
グレリッヒは、坂道を歩く彼のまぼろしを目で追った。町で暮らす庭師は、〈エレメンタリーハーツ〉が完成する前から、物資を購入するため丘をくだってくるユリネルと
✓つづく
※不定期ではありますが、連載を再開しました。物語をお読みいただき、誠にありがとうございます。今後とも、よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます