第4話
1歳未満の赤ん坊は、
ユリネルの腕のなかで泣きだす赤ん坊は、肌着の下に布おむつを巻きつけていたが、どうやら大便のほうをもらしたようで、尻のあたりが茶色く
「替えをよこせ」
赤ん坊をハイタイプ式のベビーベッドにあお向けで寝かせ、腹部に巻いてある布おむつを交換する。トリッシュの手ぎわのよさに、ユリネルはホッと胸をなでおろした。悲しげに泣いていた赤ん坊は、すっかりごきげんなようすで、軽快に手足をバタつかせている。子育ては環境によって異なるため、一般的な参考はあっても、正解はない。
「元気な男の子だな。見たところ健康そうだ」
医者らしく
〈エレメンタリーハーツ〉は入所型の施設で、ユリネルの曽祖父の代より、未成年者を対象にした心療内科(診療所)を兼ねるようになった。グラフメロは、かつて王族に重用された家系だが、薬師としての活動は、高い水準の医療が受けられない地方を
「先生って、子どもがいたんだ」
「そう見えるか? だれかに産ませた覚えはないぞ。だいいち、そんなヘマはしない」
庭で布おむつを干していると、2階の窓からフューシャが顔をだし、トリッシュの後頭部に向かって話かけた。声の調子で少年がだれなのか判別可能につき、トリッシュはふりかえらない。かごのなかの洗濯物を干しながら、会話に応じる。
「先生は、子どもがきらい?」
「だとしたら、こんな場所で働くかよ」
「ひどい
少年の
進化の過程で
「落っこちるぞ」
フューシャは、木製のサッシに腰をかけている。風に揺れるカーテンへ、軽く手を添えていた。トリッシュにうながされて室内にもどると、こんどは階段をおりてきた。少年は衿つきの白い長袖を着ている。ズボンも下着も、無地の同系色を
✓つづく
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