第5話
パトリッシア=ハーツィーズこと、トリッシュ青年の役割は、主に、
「トリッシュくん、トリッシュくん、この子、きのうから少し
患者と向かいあって診察するユリネルに、「どけ」と云うトリッシュは、れっきとした医者である。
「微熱だな。……ブランカ、
薬師と席をかわり、子どもの
「軽度だが、
トリッシュに
「さすが、トリッシュくん。いつもながら見事な診断ですね。わたしも、そう思っていたところです。さあ、ブランカくん、きみはこっちへおいで。今からわたしが、秘密のおくすりをつくってあげよう!」
ユリネルは両腕をひろげ、ブランカを
「そろそろミルクの時間か」
子育ての経験をもたない男性にも、母性本能は存在する。生まれつき中性的な容姿のユリネルを、母代わりと思いこむ乳児は、シェリィと名づけられた(かわいいという意味らしいが、どちらかといえば、女の子にあたえるべき名前だろう……)。診察室をでると、柱の陰にフューシャがたたずんでいた。念のため、
「どうかしたのか」
と、声かける。施設のなかで年長者にあたるフューシャだが、少年の情緒は不安定になりやすい。ときどき、トリッシュのようすを追ってくる。庭で洗濯ものを干すとき、背後から視線を感じてふり向くと、かならず2階の窓にフューシャの姿があった。なにか伝えたいことがあって向こうから寄ってきても、とくに相談されるわけでもなく、ふらりと去ってしまう。トリッシュ的にも気になる挙動だが、少年の心は
「なあ、フューシャ。シェリィの
「ぼくが?」
「ああ。育児用に調整した
なにを思ったのか、トリッシュは急にそんな提案をした。
✓つづく
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