第24話B29の暗い影

間もなく夕食が運ばれてきた。


 メニューは焼き魚二匹と、タクアン三切れ、茄子の味噌煮だった。


「何が食べたいか?」


酉島が聞きに来てくれて希望を言うと百%ではないが、その通りのメニューを叶えてくれた。

 米は山田町の山田錦だと言っていた。


「僕らはみんな生きている?。」


突然聴こえてきた郁美の歌声が僕の緊張を解き解した。


 郁美が居ない夏


。盆


。盆帰り。


寂しい・・・。


 父に何と言おう、なんでこんなめに会ってる? 


楽しい筈の父の盆休みに妹と二人の山登りに一頻り口ずさんだ後で正気に戻った俺は、もしかしてヴィーナスブリッジに郁美の伝言があるかもしれない。


 再三の懇願に根負けした酉島は、吐きそうになりながらもヴィーナスブリッジまで行く許可をくれた。

「絵馬の伝言だけ詠んだら帰って来い。」


そう言ってゼロ戦のプロペラを廻していた。


 夏なのにセミの声もしない。


風も吹かない。


蒸し暑くもない。

 そういえば空襲の時、敵機の音は聴こえたが上空のB29の姿は黒い影が機影だけ写していただけだった。


 酉島は銃剣を俺に向けたが、実弾を発射せず口だけパンパン!と言っていた、子供の様に・・・。


 ふざけているのかと思ったが強ちそうでもないらしい。

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