第15話妹の名前は郁美
「妹の名前は郁美だよ?」妹の名前を教えた。
郁美とはぐれてしまったと気付いた時は、もう空襲が終わってアパッチの編隊が東の空目掛けて、去った後だった。
もしやゼロ戦製造工場が焼け落ちて郁美も一緒に被害に遭っていたとしたら?
今時のJKは、スッキリと腰が括れてオマケに臍を丸出しにしている。
しかも惜し気もなくだ。
南沖州から積乱雲を幾つも潜り抜けて来た海南フェリーのデッキに高校生の兄妹が佇む。
微かに見える六甲山の頂きにちょこんと乗っかる様に北側の積乱雲が中央を取り、今にも飽和の量から雨粒が溢れ出そうな湿度が高過ぎだと感じる兄の方は、然程背は高くはなく、妹の眉に頭が届く程度で体型は兄の方が抜きん出て巾と厚みがあった。
二人とも高校の一年生と三年生で歳の差は僅差だった。
話題と言えばアイドル歌手とトレンディドラマだけで、精神年齢は仕草や思考に差が出ていた。
しきりに広大が汗を拭いているスポーツタオルは、もう絞ったらボタボタと水滴が落ちそうで顰め面をして横目で睨む郁美のお洒落で綺麗好きには、旅行に出る度に広大は陳腐で、デリカシーの無さをマザマザと教え込まれていたのに小豆代の汗をニキビが赤い顔面に浮かべ、詰襟の前をはだけてマンガ模様のティーシャツが透けて見える白いカッターシャツの胸を張るなんて時代遅れなチビデブだと一生、生理的に合わないと思う郁美にとって広大の存在は、しかとするに値すると、決意を新たにデッキフェンスの立端をググッと握り締めていた所だった。
デッキに並んで、正面から潮風をうけている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます