第16話兄妹
話題と言えばアイドル歌手とトレンディドラマだけで、精神年齢は仕草や思考に差が出ていた。
しきりに広大が汗を拭いているスポーツタオルは、もう絞ったらボタボタと水滴が落ちそうで顰め面をして横目で睨む郁美のお洒落で綺麗好きには、旅行に出る度に広大は陳腐で、デリカシーの無さをマザマザと教え込まれていたのに小豆代の汗をニキビが赤い顔面に浮かべ、詰襟の前をはだけてマンガ模様のティーシャツが透けて見える白いカッターシャツの胸を張るなんて時代遅れなチビデブだと一生、生理的に合わないと思う郁美にとって広大の存在は、しかとするに値すると、決意を新たにデッキフェンスの立端をググッと握り締めていた所だった。
デッキに並んで、正面から潮風をうけている。
潮風で乾いた汗がベタベタしてテカテカに光る顔面を洗おうとせずチョコレートを食べている広大が郁美の様子を伺いつつも表情を盗み見ていた。
幾度と無く声を掛けかけては、思い留まり、体温で溶けたチョコレートが指の間をヌメヌメと這い回っていた。
気持ち悪い男・・・。郁美の思考が縦横無尽に走る。
もう三十分も無言で微かに見える六甲山の頂を睨み・・・言うとしたら今だ! いちに、のさん!
「い、」緊張して言葉を噛んだ!
「なによコーダイ?」
「お兄ちゃんと呼べやコラ!」頭の後ろを小突くと郁美は、前のめりになりフェリーから落ちそうになるアクションを二回もした。
「それ、流行ってんのか? 全然面白くないよ。」噴き出る大量の汗を首に掛けたスポーツタオルで拭った後、素っ気なく言うと「ちえぇっ!」口を尖らして俺を睨んだ。
それがキュン!と胸の奥底で何時までも何時までも響いていた。
可愛いやつめ・・・「好きなやつ、いるのか?」緊張で声が掠れて聞こえないかと思っていたが、「いるよ一人だけ、」思わせ振りにフェンスから腕を伸ばし斜め懸垂の様な格好で首を僕の方へ向けてニヤニヤ笑っていた。
「だ、誰だよ?」焦る俺を観て楽しんでるのか?
「それはね…。」急に真顔になった。
タン!
上顎に舌を着けて思い切り良く鳴らしていた。
ヤンキーかオマエ? 俺の真似すんなよ・・・。
「みんな良く知ってるヒト。」出た! 答えを溜めて言わない。
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