第32話最終話 郁美、愛してる
「係長、あ!」
酉島の掌が時子の唇を制して「分かっている時子…。」
酉島は、俺も同じだ・・・。
時子は、言えずに遠くを見詰めていた。
医療刑務所は精神を患った犯罪者達のオアシスだったが、そこの職員にもオアシス的な感覚を感じる者が、コンプライアンスを冒涜していた。
「了解しました。」
事務的にテキパキと報告をする北条時子は、酉島直樹の下半身にシンクロしていた。
「実は彼の身長が162?でウェートは89kgですが…学校では、芋虫呼ばわりされてケンカが弱いし動きが鈍いので下級生にもチビデブと、いじめられていたいじめられっ子だったそうです。」
「友達は、居ませんでした・・・。」
「しかも妹さんにもチビだのデブだの
「ド近眼の口が臭いコーダイ! 」
と、呼び捨てにされる始末だったそうです。」
「彼のご両親の聴取から判明した事実です。」
北条時子が、バインダーに挟んである調査報告書を読み上げていた。
北条時子と酉島直樹は、顔を見合わせていた。
「そうか、御苦労さん。」
係長酉島直木は旧大日本帝国陸軍出身の祖父を持っていた。
・・・。
俺はケンカが強い。
昨日も郁美に告ろうとしたヤツを校庭の裏側に呼び出し、シバキまわした。
ワンツーのストレートと、ボディボディ、アッパーのコンビネーションでヤツを沈めた。
俺はケンカが強いお兄ちゃん。学校で№ワンだもんな。
郁美にフェリーの上で告白した。
今俺達は付き合っている。
恋人として・・・。
いくみ・・・、愛してるよ。 (了)
恋する夏の日 しおとれもん @siotoremmon
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