歴代最弱・最強コンビ?! 〜歴代最弱の勇者と歴代最強の魔王は共に旅をする〜

黒兎 ネコマタ

0章『魔王と勇者の出会い』

第1話

魔王と勇者は対峙する。この二人の因果関係は今も昔も変わらず……ただ、例外がない事もない。


「よく来たな、勇者。まさかアイツが敗れるとは思わなかったぞ。」


魔王は妖しげに笑う。自分の悲願が叶う時がすぐそこにある事に興奮する。魔王の出鱈目な覇気オーラは常人なら即死れべるだが……


「私は……貴方を倒します!」


勇者はその覇気に気圧される事なく逆に自身の覇気をぶつけ返す。そして、今最終決戦が始まる。


「あの〜……私はお二人と違ってただの人間なので、ちょっとキツイかもです」


そう言ってぶっ倒れる魔法使いがいなければ……


「「大丈夫!?」」


魔王と勇者は叫ぶと両者ともに音速を超える速度で魔法使いに駆け寄る。決戦が始まるのはまだまだ先だ。


事の始まりは1年ほど前……


◇ ◇ ◇


俺の名はヴァイオレット・バレンティン。数百年前にこの世界に転生した元日本人。本名は桜田 瑠斗サクラダ リュウト


この世界に転生した時、俺はチートスキルみたいなものは持っていなかった。しかし、魔王の息子に転生した俺は幼い頃から次期魔王として鍛えられたのでかなり強い。歴代最強の魔王と称されるくらいには強い。


俺の戦闘スタイルは前世で習っていた剣道を自己流に魔改造した剣術が基本。この世界には何故か刀も存在していたので丁度良かったのだ。たまに魔法も使うが刀の方が格好いいので刀がメインだ。


まぁ、そんなことは置いといて……俺はとある事で頭を悩ませている。それは、


勇者が現れない。魔王になってから二百年が経ちそうだが全然現れる気配がしない。それどころかこの魔王城の城下町に人間が現れたこともない。


魔族と人間が仲良い、というのはあり得ない。何故なら俺の父親でもある先代魔王は勇者に命を奪われているからだ。それに普通に魔物や俺の配下達は人間を襲っているし……


故に、人間にとって魔族や魔物、その筆頭の魔王は恐るべき存在で勇者の出番だと思うのだが……


なぜ、いつまで待っても現れないのだ!!


「兄上、怒りで覇気が漏れてるぞ。別にいいじゃないか、平和だし」


この平和主義の魔族らしくない魔族は、俺の弟ヴィオレッタ・バレンティン。あまり人間と争う事を好むタイプじゃないが、俺や魔族に敵意を向ける者を一番に始末しているのもこいつだ。基本的には優しいが怒らせたり逆鱗に触れると怖い、それがヴィオレッタだ。


ヴィオレッタは次男だからという理由で魔王になれなかったのだが、正直こいつでも大丈夫だと俺は思っている。街のみんなからも親しまれいるしな。


「俺は自分の意志で魔王にならなかったんだ。そもそも兄上は魔王を辞めて何するんだ? 勇者に会いにいくのか?」


魔王が勇者に会いにいくってどんな状況だよ……まぁ、今頃勇者がどこで何をやっているのかは気になるが。


「まぁ、兄上くらいになれば人間に擬態するのも容易い事だろうしな」


……あれ、意外と簡単に出来るのか?人間の言葉も話せるし。そもそも魔族の言葉と同じなので問題ない。

よし、我が弟よ!


「嫌だ」


まだ何も言っていないのに断られた。何故だ。ただ、君に王位を授けよう、って言おうとしただけなのに……


「そう言うと思ったから断ったんだよ!」


内心喜んでいるのに形式上断っているのがバレバレだ。嫌だけど、どうしてもと言うなら的な。まぁ魔王はコロコロ変わるものじゃないからな。


「都合よく解釈するな。あんな面倒な事やりたくないわ」


安心しろって。お前は俺が帰ってくるまでの間、政治関連をしてくれればいいから。勇者と戦うのは俺がやる。


「俺には面倒事せいじだけやっていればいいと? それが一番やりたくない事なんだが?」


はいはい、と俺はヴィオレッタの文句を聞き流しながら、幹部達に一方的に魔王位をヴィオレッタが継ぐことを伝える。

一時期だけだがその時の民たちの反応次第で今後のことも考えようかな、と思ったのだが意外といい案かもしれない。


とりあえず、ヴィオレッタ君。今から君は魔王ヴィオレッタだ。それじゃ俺は旅立つから、後の事は任せたよ。


「いつの間に擬態したんだよ。いやそれよりも、ちょっと待て! 本気で行く気かよ?」


こういうのは返事したら負けだ。俺はヴィオレッタに微笑むと何も言わずに転移した。目指すは勇者の元。さて、どんな旅になるかな。


 ◇ ◇ ◇


「さぁ、貴様ももうおしまいだ。大人しく捕まるんだな」


 門番が俺に詰め寄ってくる。この街に着いて早々、俺は門番と一戦交えることになってしまったのだ。


「はぁ……ほんと、面倒くさい奴だなぁ」


 事の始まりは十数分前、転移した直後まで遡る──






◆────────────◆


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