第●話 『未来のお話』

 勇者である私は魔王のお城を攻略していた。攻略と言ってもあまり大した事をしていない。たまに出会う兵士らしき魔族を倒すだけ。


 外から見てもかなりの大きさの魔王城。流石に走るのは疲れるし効率が悪いので、のんびりと歩いている。これだと、他の鍵を守護していた砦の方が攻略しにくいのでは……


「勇者様、敵が来てるかもです。気をつけてください」


 私に声をかけてくれるのは仲間の一人、魔法使いの女の子。2番目に仲間になった子だ。年上だけど背が低いので私と同い年に見える。


「ご安心を〜。私が守りますからね〜」


 のんびりとした口調で喋るのは、騎士さん。この中で最年長のお姉さん。20歳でまだまだお若い。てか、このメンバーの平均年齢がかなり低い。


「只今戻りました。恐らくこの先の敵がこの階層では最後かと……」


 いきなり私達の側に現れたのは、『シノビ』という役職(?)の女の子。口数が少なく必要最低限のことしか言わないが、お酒に弱い。転移魔法だけ使えて、それを応用して偵察とかしてくれている。


 この3人が私の仲間たちだ。皆頼もしい、けど……


「またヴァイオレットさんの事を考えているのですか? 彼のことは忘れましょうよ。まずは、戦いに専念しましょ?」

「あいつは、私達を放っといてどっかに消えた野郎ですよ〜。勇者様が気にする必要ないですって」

「私も皆と同じ意見です」


 最後の砦を攻略した後、突如消えた私の最初の仲間。彼は元からどこか傍観している感じがして、他の仲間からはかなり嫌われている。魔法使いの子は例外だけど……


 私(あと、魔法使いの子)は、彼に返しきれないほどの恩がある。それに、大好きだ。だから、また会いたいし一緒に旅もしたい。けど、消えてしまってどこに居るのかも分からない。


「敵です。気をつけてください。魔力の量が今までとは比べ物になりませんよ」


 魔法使いの子の声で、我に返る。彼のことを考えるとそれ以外考えられないんだよね……


「よく来たな、勇者よ。俺はヴィオレッタ・バレンティン。魔王の弟にして、で雑務を押し付けられていた者だ!」


 なんか、見に覚えのないことで怒られた。でも、魔王の弟か……強敵だな。負ける気はしないけど。


「はぁ……俺は戦いが好きじゃないんだがなぁ。仕方ない、兄上の敵は排除する」


 そう言って、敵……ヴィオレッタが、武器を手に取る。刀、だ。その武器に思わずヴァイオレットさんを思い出してしまう。っと、戦いに集中しなくちゃ……


「いくぞ。勇者共!」


 ヴィオレッタがそう言って武器を構えた。


「…ッ!?」


 私と魔法使いの子は思わず息を呑む。ヴィオレッタの構え。それは、私達がよく知る人物の構えに似ていた。他の二人は彼が戦っているところを見た事ないけど……


「桜流 枯桜之舞かれざくらのまい


 もう確信するしかない。ヴィオレッタはヴァイオレットさんが得意としていた『桜流』の使い手らしい。ヴァイオレットさん、貴方は一体何者なの……?







────────────────

 今回は少し未来の話になってます。アンケート結果の中で、採用したキャラの紹介という意味合いが強いですが……


 採用したのは『騎士』『忍者』ですかね。今のところは、ですが……もしかしたら、敵サイドとして他のキャラが出てくるかもしれません。


 今後、今回登場した人物が仲間になります。どのように仲間になるのか等気にしてもらえたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る