第7話
「ちょ、ちょっとー!? 私、まだそれには追いつけないんですけど!?」
勇者ちゃんと練習する日々が始まってからもう2週間。時が流れるのは早いなぁ。
「桜流 万年桜 桜オロチ」
「だからー! 無理ですって。殺すおつもりですか!?」
最近は俺が技打っても喋る余裕があるみたいだ。思い返せばここまでの道のりは長かったなぁ。
1日目。気絶したあと、起きたと思ったら「お腹、空きました」と俺を見上げてくる勇者ちゃん。その可愛さに思わず練習は次の日から……なんてことも無く練習はした。
練習内容たが、最初はランニングと筋トレ、ストレッチ等の基礎から始めた。そもそも勇者ちゃんはスペックがその辺の女の子と変わらなかったのだ。
まぁ、そんな日が3日ほど続いた。そして気づいたのだが、勇者ちゃんは『体得効率上昇(特大)』とかいう特殊能力があって、常人の10倍くらいの速度で能力が上がっていったのだ。
まぁ、3日目には身体能力はほぼカンストしていた。(まぁ、俺の感覚だからまだまだ上限は上かもしれないけど……)
でも、人間の域から出ていなかった(強い兵士くらいかな。達人級の兵士より弱かった)ので4日目からは魔力のコントロールを上達させた。
というのも、魔力の扱いを上達すれば魔法が使えるようになるのはもちろんの事。他にも身体強化ができたり回復ができたり……『瞬間移動』なんてことも可能になる。あと、世界がスローに見えたりする。
まぁ、これは感覚の問題なので結構時間かかった。1週間と2日くらい。練習を始めてから12日目(2日前)にはほぼ魔族と変わらないくらいにはコントロールできていた。
んで、昨日からは俺の技に対処したりする練習。動体視力だったり反射神経だったりその他諸々の技術が向上する。正直、俺の技に対処出来たら人類最強は確定する。
歴代最弱の勇者はもういない。世間的には最弱のままだけど……
「万年桜 桜オロチ」
──と、まぁまぁ大技打っている俺。これは、前に説明した万年桜の意思を具現化させて万物を桜に変える
元々覇気が竜っぽい形になっていたのを、俺が改良してので覇気で作られた竜が相手に食らいつくような感じの見た目になっている。
「無理ですっ! 無理ですって!」
勇者ちゃんは半泣きで逃げ回ってますね。最初に右腕が桜になったことでトラウマになったのかな……
「分かっているなら止めてください!」
「はぁ、仕方ないなぁ」
俺は勇者ちゃんを追い回すのをやめてその場に座り込む。楽しかったのに……
「こっちは生きるのに必死だったんですよ!? もうちょっと配慮してください」
勇者ちゃんが愚痴りながら俺の隣に来て座る。座った時も不意打ちに備えて神経を尖らせるようになった。俺が休憩中に後ろから襲ったのがきっかけだったかな。『襲った』のがどういう『襲った』なのかは想像に任せます。
今の勇者ちゃんは出会った時に比べればかなり強くなったはず。まず人間卒業はした。人の域は超えてるね。
「あんまり実感がないんですけど……」
そういえば、俺の仮想世界のままだったな──と俺はふと思い出す。
仮想世界、それは術者が思い描いた世界を創る技だ。その世界の中では術者は最強で、仮想世界が展開出来るか出来ないかで勝負が決まる。
展開できる者同士だとより自分の世界に相手を引き込んだ方が勝ちになる。まぁ、展開できる奴なんて魔族でも数名だけど……
俺は、筋トレとか終わった後から魔力を感じやすい様に仮想世界を展開していたのだ。あと、展開してなかったら俺の桜オロチでこの辺り一帯は桜が咲き乱れてる。
とりあえず、解除っと…………
「あれ、なんか体が重くなったような……」
そんな勇者ちゃんの呟きに俺は嫌な予感がした。もしかしたら、今までの勇者ちゃんの急成長は俺の仮想世界のおかげなのでは……と。
「勇者ちゃん。
「え、あ、はい。分かりました」
乱咲は俺の生み出した流派・桜流の基礎となる技。ただ自分の覇気を刀に乗っけて斬るだけだけど……
「あ、あれ? どうやって体動かすんだっけ……」
どうやら嫌な予感ってのは当たるものらしい。勇者ちゃんは見事に乱咲が打てなくなっていた。
ただ不幸中の幸いがあるとすれば、それは勇者ちゃんの基礎は変わっていない事だ。筋トレやストレッチは仮想世界でやってないから。でも魔力操作とかは全然……
戦闘なんて出来ないかもしれない。動体視力とかも俺の技受けている中で培ったものだもんなぁ。
まぁ、感覚は分かっただろうし(多分)今後に期待しよう。
「さてと、今日はもう戻りますか」
「そうですね。宿屋の方も心配されているでしょうし……」
俺らはずっと、朝から晩まで練習して街に帰って宿に泊まって……を繰り返していた。宿代だが、魔王城から骨董品持ってきて売り捌いた金を使っている。
骨董品は後で魔族が買い戻しているらしく(まぁ、その金は冒険者から奪った金だけど……)特に城に影響はないので問題ない。勇者ちゃんには適当に誤魔化している。
よし、転移魔法で帰るか。どっかの門番が邪魔だから毎回面倒な帰り方する羽目になっている。勇者ちゃんにはこっちの方が早いから、と言っている。もうこの子純情すぎて何でも信じてくれるから楽だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます