第20話 三人寄れば討伐の依頼

「丁度良かったわ。風花ちゃん、良い依頼が入ったのよ」


 そう言って、お姉さんは席に着くと、俺に耳打ちした。


「今回の討伐依頼なんだけど、風花ちゃんも一緒に連れて行ってあげてくれない?」


「・・・・・・」


「報酬は弾むわよ?」


 ふっくらとした感触を肩に感じる。まずい。


「分かりました。任せてください」


 俺は断るような理由もなかったので、応えることにした。


「あら、ありがとう。話が早くて助かるわ。宿は用意しておくから、よろしくね」


「魔子さん。今回の討伐依頼、俺たち3人で行く事に決まったよ」


「あなた正気? 子どもを連れて行く余裕なんてないわよ?」 


 魔子さんはむっとした表情で言った。 


「風花だよ! こ・ど・もって言うな!」

 

 風花は顔を真っ赤にして怒って言った。


「まあまあ、落ち着いて、報酬はその分弾むって話だからさ」


「はぁ……仕方ないわね」


 こうして、俺たちは黒狼の討伐へ三人で向かう事になったのだった。


 俺は、酒場から出て宿へと足を進める途中、重大な事に気づいた。


「宿を用意してくれるって話なんだけど、宿ってどこにあるんだろう?」


「はぁ? あなた宿の場所ぐらい確認しておきなさいよ」


 魔子さんは呆れた表情で言った。


「亜美の手配してくれた宿だよね。ならこっちだよ」


 風花はそう言うと、俺の手を引いて、そそくさと足を進めるのだった。


「ありがとう。助かったよ」


「ありがと」


 俺と魔子さんが例を言うと、


「お礼なんていいよ。ここらは私の家みたいなもんだからさ」


 風花は満更でもない表情でそう言った。


 宿へ着いて主人に話をすると部屋に案内される。どうやら一人部屋と二人部屋で予約されているらしい。


「部屋の振り分けなんだけど……俺が一人部屋で、風花ちゃんと魔子さんが二人部屋で大丈夫かな」


「ええ。大丈夫よ」


 魔子さんは即答。


「風花ちゃんは……」


 風花の方を見ると、涙目で首をふるふると横に降っている。


「大丈夫だよ。風花ちゃん。何かあったら俺の部屋に来ていいから」


「別に何もしないわよ。じゃ、行きましょ」


 風花は涙目で首をふるふると横に降りながら、魔子さんに連れられて二人部屋の方へと姿を消した。


「なんか罪悪感がすごいな……」


 そうして、俺は一人部屋に向かうと、ベッドへと身をうずめ、夜が明けるのを待つのだった。

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