第11話 過去の記憶

―――ねえ、大丈夫?


 聞き覚えのある声に目を開けると魔子さんが心配そうに俺を見ていた。


「ああ。大丈夫だ」


「そう。ならよかった」


 どうやら俺たちは学園の裏山の傾斜を上っているようだ。


「この先だよ」


 魔子さんは奥の洞窟を指差した。


「この先に何があるんだ?」


「秘密基地があるの」


「秘密基地?」


「うん。転校生の子。知ってる? あの子が見つけたんだって」


「聖良さん?」


「うん。あの子がそうだよ」


 そういって、裏山の傾斜を少し登った先には手を降る人影があった。


「こっちこっち~」


 洞窟に近づくと、そこには朱色の髪をしたショートヘアの可愛らしい顔つきの女の子が立っていた。


「あのね……お願いがあるの……」


 彼女は両手を合わせながら申し訳無さそうな表情で言った。


「お願い……?」


 俺がそう尋ねると、彼女は言った。


「うん。大事なお願い」


―――ねえ。大丈夫?ねえ。


「ん……」


 目を開けると、そこには見知らぬ広大な広野が広がっていた。


「変な夢を見ていたよ。ここは?」


 隣りにいた魔子さんに尋ねる。


「私もよ。一体何なのかしら」


「確か、協会の奥の部屋の隠し扉に……」


「どうやら、転移魔法の類があの扉にかけられていたようね……それに、この場所、何か嫌な感じがするわ」

 

 あたりは薄暗く気味が悪い。空気も少し悪いように思えた。


「照道はどこだ?」


 あたりを見渡すが、そこに照道の姿はなかった。

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