第12話 異形な魔物

「あっちの方角に灯りが見えるわね」


 魔子さんはそう言って橙色の光が見える方を指差した。


 その刹那――


グギィィィー!


奇妙な魔物の鳴き声が聞こえたかと思うと、黒光りする異形なスライムが、目の前にあらわれた。


「スライムだ!」


 俺が剣を抜いて構えると、魔子さんは杖を取り出して即座に呪文を唱えた。


「風よ……切り裂け!」


その瞬間――ガキンと、大きな金属音が響いた。


「嘘――」


 風の刃は確かに放たれた。だが、しかし、体の一部を刃のように変化させ、スライムは呪文を防いだ。魔子さんは杖を構え直し、もう一度呪文を唱える。


「風よ……仇なす者の身を切り裂け」


 スライムは刃を前に構えた。


――ガキンと、再度、とても大きな金属音が響いた。


グギィィィイ!


 スライムは叫び声を上げる。


「……」


魔子さんは驚き、絶句している。


 スライムは変形させた鎌を振りかぶった――その瞬間、スライムは耳をつんざくような叫び声を上げ、鎌が放たれた。


「危ない!」


 俺はそう言うと、とっさに魔子さんに飛びかかり押し倒した。


すると、間一髪、身体一つ離れた場所に鎌は突き刺さった。


「ありがとう。助かったわ……」


「油断している暇はなさそうだ」


 俺は体制を立て直しスライムの方に向き直す。


「……呪文を弾くなんて、どうかしてるわ」


 魔子さんは杖を持つ手が小刻みに震えている。


「魔子さん。落ち着いて。敵は一匹だ」


 見かねた俺は、魔子さんの手を握って言った。


「うん……そうよね」


 俺がそう言うと、魔子さんの手の震えは収まった。覚悟を決めたようだ。


「スライムがこんなに強いなんて知らなかったけど、やるしかないわね」


 魔子さんは杖をスライムに向けて言った。


「遊人くん。時間稼ぎ。おねがいできるかしら?」


「それは、勝算があるってこと?」


「ええ」


「わかったよ」


 俺は、剣を構えると、スライムに向けて飛びかかった。

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