第13話 奇妙なスライムとの戦い

俺がスライムに向けて飛びかかると、同時に、魔子さんは不思議な言葉で詠唱を始めた。


 スライムに飛びかかると、スライムは変形させた禍々しい黒い刃で剣の刃を受け止めた。ぐにゃりとした感触が手に伝わる。刃はスライムの刃にめり込み、止まった。


「くっ……」


 スライムは衝突の直前に変形を解除したため、剣はスライムの刃にめり込んで抜けなくなってしまった。


「だめだ。びくともしない」


グギィイイイ!


 耳をつんざくような叫び声に思わず手を離すと、勇者の剣はスライムに飲み込まれてしまった。


「しまった!」


 勇者の剣を失った今、防御する手段はもうない。絶体絶命と思われた寸前、


「避けて!」


 と大きな声が聞こえた。その瞬間、背中に熱を感じた俺はとっさに左に体を捻り飛んだ。


ギギギギギギギ!


 魔子さんの放った大きな火の玉はスライムに直撃した。スライムの身体は溶け出し、みるみると蒸発していく、


ギギギギギギギギ!


 奇妙な断末魔を上げてスライムが蒸発すると、勇者の剣がカランと音を立てて地面に落ちた。スライムのいた場所には小さな黒い玉が生成されていた。


「間一髪……」


 俺はスライムから落ちた勇者の剣を拾い上げる。


「熱っつ! 魔子さんもうちょっと手加減できなかったの?」


「馬鹿。手加減できるような相手じゃなかったでしょ」


 魔子さんは続けて、


「でも、遊人くんがいなかったら私、心折れてたかも」


 と言ってニコっと笑った。


「俺、下手したら死んでたよこれ。死んでた。今頃、黒焦げ。ドュ―ユーアンダースタン?」


「イエー、シュア!」


 魔子さんは満面の笑みで言った。


「最初に火の呪文打つって教えて? 命いくつあっても足りないんですけど!」


「結果的に倒せたからいいじゃない」


 魔子さんはそう言うと、灯りの方へと歩みを進めた。


「さいですか」


 俺は、仕方なく、その後に続くのだった。

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