第6話 洞窟竜との戦い

「えっ……」


 魔子さんは突然現れた人影に驚愕している。


「竜殺しの名に誓い、その生命断たせてもらう。僕の名はシャイニングライト照道。天才僧侶だ」


「あの人、今自分で天才って……」


 魔子さんが呟くと同時に、


 ――刹那、ドラゴンの口元が閃光のように眩ゆく光った。


「まずいブレスだ。避けろっ!」


 僕は叫んだ。しかし、既に照道はそこにいなかった。


「甘い。実に甘い」


 照道はいつの間にか、ドラゴンの背後へと移動していた。


「180秒。それが次のブレスまでにかかる時間だ」


 照道はそう言うと、僕の方を振り返り、


「勇者殿、僕がこいつを引きつける。隙を見て、その剣で洞窟竜の尻尾を切断してくれ」


 とさらったと言った。


「なっ……そんな事できるわけ」


「できるさ。そいつは勇者の剣だろう。特性は――竜殺しだ」


「そうなの? 魔子さん」


「うん。だけど、ドラゴンに近づくなんて自殺行為よ」


「僕が竜を引きつける。その間に背後から近寄ってくれ。黒竜の弱点は――尻尾だ」


 そう言うと、照道は竜に向かって駆け出した。


「洞窟竜、貴様の相手はこの僕だ」


 照道は剣を抜き、洞窟竜の足に斬りつけた。


グォオオオオ!


ドラゴンは腕を振り上げ、照道に向かって振り下ろす。


「こっちだ」


 照道は攻撃を躱して洞窟流を翻弄している。


「やるしかないな……」


 俺は覚悟を決めて、洞窟竜へ向かって駆けた。


「うぉぉぉおおおお!」


 距離は約50m。ドラゴンは照道に気を取られている。距離を詰める。


 40……30……20……10……


 照道はドラゴンの攻撃を躱していたが、ドラゴンはこちらに気づき、尻尾を振り翳した。


「くっ!」


 薙ぎ払うかのような尻尾の動きに合わせ、俺は剣を振りかぶる。


「一か八かだ!」


 薙ぎ払われた尻尾は剣の先端に衝突した。衝撃と鈍い感覚が剣を通じて腕に伝わる。


グォォォォォオオオ……


 ドラゴンが苦しそうな叫び声を上げる。鈍い感触が手に伝わる。と、同時にドラゴンの尻尾は切断された。


グォォォォォオオオ……


 ドラゴンは叫び声を上げ終えると、地面に崩れ落ちた。


「やったのか?」


 切断された尻尾はクネクネとまだ動いている。


 俺が恐る恐るドラゴンに近づくと、尻尾は動かなくなった。


「素晴らしい。さすが、勇者殿」


 照道が拍手をしながらこちらに近づいてきた。


「遊人くん大丈夫?」


 心配した魔子さんが駆けて来る。


「大丈夫。心配ないよ」


「……あなた何者?」


「僕の名前はシャイニングライト照道。天才僧侶だ」


「…………」

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