第5話 洞窟竜と謎の人影
洞窟の奥から、ズシリ、ズシリと大きな足音が近づいてくる。洞窟の奥から大きな影が見えた。
「こいつは……まずい……」
洞窟の奥から姿を表したのは鈍く黒光る鱗に身を包んだ大きな竜。
「洞窟竜……ドラゴンよっ!」
「ドラゴンって……確か魔法に凄く強いんじゃ……」
「洞窟竜の魔法耐性はクラスA相当よ……」
グォオオオオオオ!
ドラゴンは大きな雄叫びを上げる。
「つまりそれって……勝ち目ないってこと?」
「…………」
魔子さんの表情は険しい。
「この勇者の剣でどうにか……」
「無理ね」
即答ですか。そうですか。
「風よ――仇なす者の身を切り裂け――」
魔子さんは素早く呪文を唱えた。それは、明瞭な詠唱呪文だった。
――刹那。大気は揺らぎ、無数の刃が洞窟竜を襲う。刃となった無数の風は目に見えて空間を切り裂き、無数の刃は洞窟竜の鱗に衝突し、消滅した。
グォオオオオオオ!
目の前のドラゴンが叫ぶ。明るい閃光に目が眩む。煙で前が見えない。
「遊人くん危ないっ!」
「えっ……」
魔子さんに肩を押されたかと思うと、右から熱い熱風を感じた。正面のドラゴンの口から吐かれた炎は数センチ右を掠めた。炎は後ろの岩に衝突し、岩は炎により焼け落ちた。
「間一髪……」
「遊人くんっ! 逃げないとっ! 私達の力じゃ倒せない」
「いくら魔子さんの魔法でもこいつは……」
グォオオオオ!
鱗には傷をつけたが、だが、ダメージは薄いようだ。
「ドラゴンの鱗は魔法に対する耐性がとても高いの。魔術殺しと言われている程にね」
「逃走経路を考えないと……元来た道を戻れば……」
洞窟竜との距離は約50メートル。近くに遮蔽物はない。この距離では、いつ炎を吐かれて消し炭になってもおかしくない。
「魔子さん。二手に別れて逃げよう」
左右、別々の方向に即、駆ける。
グォオオオオ!
背後から竜の咆哮。次のブレスが来るだろうとそう思われた刹那……
「待ちくたびれたぞ。洞窟竜」
洞窟竜の現れた空洞から謎の人影が姿を現した。
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