第4話 西の洞窟に潜む主

 しばらく歩くと、洞窟の入り口が見えてきた。


「あの洞窟ね。行きましょ」


 魔子さんに言われるがままに、洞窟へと足を踏み入れる。


「あれは……バッドねっ!」


バサッ……バサバサッ……


 洞窟の中に入るとコウモリの形状をした魔物が飛んできた。魔子さんは素早く呪文を詠唱すると、バッドは真っ二つに裂け、ぽとりと地面に落ちた。それを見た近くの魔物は顔を見合わせて、一目散に背中を向け、逃げ出した。


「骨のない魔物たちばっかり。つまんない」


 地面に横たわってピクピクと動いている切断されたコウモリのような形状の魔物を見ながら、俺は考える。骨あっても流石にあの呪文見たら逃げるよなぁ。一瞬で真っ二つ……そんなことを考えていると、魔子さんから声をかけられた。


「先に進もっか」


 魔子さんはニコっと笑って言った。


 すごく頼もしいけど同時にすごく恐ろしい。そんな考えを巡らせながら洞窟の最深部を目指すのだった。魔子さんの魔法を駆使しながら、バッドやスライムを撃退しつつ、洞窟の奥へと足をすすめると、大きな空洞に出た。そこには大きな湖が広がっており、湖には一本の橋がかけられていた。中央の大理石の上には剣が置かれている。


「どうやらここが最深部みたいだね」


「あの剣……明らかに罠だよなぁ?」


「考えすぎじゃない?」


 魔子さんは湖に近づく。俺は仕方なく魔子さんについていく事にした。


「この橋を渡ってあの剣を手に入れるのよ遊人くん」


「罠だったらどうするんだ?」


「その時はその時ね」


「ったく他人事だなぁ」


 俺は覚悟を決めて、橋に足をかけ、前へと足をすすめる。


「頼むから何も起きないでくれよ……」


 剣に向かって足を進めるが、何も起きる気配はない。


「特に何も変わった様子はないな……」


 あっさりと剣の前までたどり着いた俺は剣をじっくりと観察する。何処かで見たことのある剣だ。


「こいつは……」


 剣を手に取り、まじまじと剣を眺める。どこか、既視感のある光り輝く剣だった。


「遊人くん! はやく戻ってきて」


「ったく勇者使いが荒いなぁ」


 俺は文句を言いつつ、元来た橋を戻る。


「この剣がこの洞窟へ来る目的だったってことね」


「部下の兵士に命令してここまでこの剣を持ってこさせたんじゃないのか?」


「私達を試したってこと?」


「おそらく」


「はぁ……私達も見くびられたものね」


 ため息を付いて彼女は言う。


「でもこの剣、凄くしっくり来るんだよな。握りやすいというか」


「遊人くん。それ勇者の剣だよ」


 魔子さんは目をキラキラさせて剣を見つめて言った。


「勇者の剣? これが?」


「うん。数百年前に世界を魔王の闇から救った聖なる剣」


「その話、信じられないんだけど。本当?」


「勇者の伝記に載ってた剣と特徴が一致してるから間違いないわ」


「遊人くんの先祖が勇者だから手に馴染むんじゃないかな?」


 そういうことか。やっと話が繋がった。つまり、勇者の血筋のあるって事で、俺が勇者として旅に出ることになったと言う訳か。


「勇者の剣ねぇ……」


「鬼に金棒だねっ!」


 魔子さんは満面の笑みで言った。鬼に金棒か。なら、賢者の子孫に賢者の杖は竜に翼だな。


「後は元来た道を戻るだけ……」


 そう俺が言うと、魔子さんの足が止まった。


「ねえ……あれって……」

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