第26話 盗賊の極意<<ツインダガー>>
「凄いね! こんな大魔法見たの初めてっ!」
「そんな大それた魔法じゃないわよ」
興味津々な風花に対して、魔子さんはぶっきらぼうに答えると、
ワォーン!
遠くで狼の遠吠えのような鳴き声が聞こえた。
「まずいかも……」
「まずいって何が?」
狼狽えている風花に折れが声を掛けると、風花は続けて、
「これ、黒狼の鳴き声だよ。ほら……」
風花が丘の上を指さして言うと、丘の上に黒い獣のような魔物の群れが姿を表したのだった。
「魔子さんの魔法もあるし何とか……」
「ごめん……さっきので魔力切れちゃったみたい」
一難去ってまた一難である。現状の戦力は、魔力切れの魔法使い。戦闘経験のない盗賊と後は、勇者の自覚がない剣士。うん。前途多難だ。
ワォーン!
再び雄叫びを上げる黒狼、緑の丘から黒狼の群れが魔子さんの方へと唸り声を上げて向かっている。数は五頭。
「しっかたないなぁ」
風花はニヤリと笑って、腰のダガーを抜いた。ダガーは鈍く光り輝いていて少し不気味な雰囲気を宿していた。
「あなたそのダガー……」
魔子さんが驚いた表情を浮かべている。
風花は姿を消したかと思うと、魔子さんの方へ向かってきている黒狼の内、一頭が倒れた。
「疾っ……」
俺は狼の群れに向けて剣を構え突撃し、黒狼に剣を向けた。飛びかかってきた黒狼を切り払うと黒狼は血を流して倒れた。黒狼の群れの中心で踊るように舞う風花の姿は美しく、黒狼の倒れていく様子は幻想的だった。正直、盗賊を舐めていた。
「終わったね」
風花はニコリと笑って、言った。残りの四頭の狼は既に倒れていた。
「これで依頼は達成だけど……凄いね」
風の身のこなしと武器の威力。とても戦闘経験がないとは思えない。
「凄いのかなぁ」
風花はそう言ってダガーを腰の鞘に収めた。
「そうだね。魔子さん大丈夫?」
俺は魔子さんに声を掛ける。
「大丈夫よ。そのダガー、レリックよね?」
魔子さんは風花のダガーを指さして、興味津々そうな表情で言った。
「うん。そうだよ」
風花は得意げな表情で誇らしげに答えるのだった。
「レリックって何?」
「あなた知らないの? 刻印の入った特級武器よ」
「って事は俺の武器と同じって事?」
「そうよ。脳ある鷹は爪を隠すって言うけれど、滅多にお目にかかれる代物じゃないのよ。全く……」
「依頼たっ……」
「風花ちゃん!」
風花はこっちだよと人指し指を来た道の方向に刺したかと思うと、言葉を言い終える前に、ドサリと地面に倒れてしまった。
俺が勇者で幼馴染が魔法使いなんて俺は認めない~へたれ勇者とおてんば魔法使いの旅〜 桜桃ナシ @variablemist
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