第16話 冒険者の酒場

 雑貨屋に教えられた冒険者の酒場へと足を踏み入れると、そこには武装した剣士の集団等、旅人であろう人がたむろして酒を飲んでいた。


「ここが冒険者の酒場か……」


 俺は酒場の中を見渡して言った。


「ええ。どうやら、冒険者がたくさん集まっているようだけれど……」


 俺たちが酒場に足を踏み入れると、酒場の主人がこちらをまじまじと見て言った。


「お兄さんたち、見ない顔だね。ここは初めてかい?」


「ああ。お金がなくて、依頼を受けにきたんだけど」


 俺が酒場の主人の様子をうかがいながらそう言うと、


「あー。お兄さんたちその様子じゃあ、旅の者だな。なら良い依頼があるぜ」


 そう言うと、酒場の店主は酒場の奥の張り紙を何枚か剥がしてテーブルに置いた。


「座りな。お兄さんたちは初めての客だ。飲み物の料金はタダにしとくぜ」


「ありがとうございます」


「ありがとっ」


 俺がお礼を言うと、魔子さんは愛嬌のある満面の笑顔でお礼を言いカウンターの席に着いた。


「飲み物はなにか希望あるかい?」


「オレンジジュースはあるかしら」


「ああ。あるぜ」


「じゃあ俺もそれで」


 カウンターの後ろの棚に手を伸ばし、大きな瓶を開けると、大きな鉄製のコップを二つカウンターに置き、液体を注いだ。


「あいよ。オレンジジュースだ」


 酒場の店主は、鉄製のコップを2つカウンターに置いた。


「依頼って聞いてたけど、これって懸賞金よね?」


「ああ。大半が狩りの依頼だが、中でもこのユニークな魔物たちには懸賞金がついていてな。こいつらは生死問わずだ。まず、ユニークな異形のスライム。多くの冒険者が犠牲になっていてな……こいつには高い懸賞金がついている。赤眼の黒狼には更に高い懸賞金がついてるぜ」


「あ……」


「どうかしたかい?」


 この、スライム。さっきであった変なスライムだよな。どう考えても。どうなんだろうな。そんな事を考えていると、


「このスライム、私、倒したんだけど……」


 と、魔子さんがぼそりと呟いた。


「はっはっはっはっ」


 そう言うと、酒場の主人が大きな声で笑い出した。


「面白い冗談だね。お嬢ちゃん。スライムを倒したなんて、粘液やコアは持っているかい?」


「持ってないわ……」


 あーそういえば、なんか黒いの落ちてたなー。気持ち悪いから触らなかったけど、あー落ちてた。あれコアだ。えっと、懸賞金いくらだっけ。一、十、百、千…‥。桁凄い。


「なら、それは何かの勘違いだな。ただでさえ凶悪な魔物なスライムのユニークとなるとそれはもう化物。出会ってたなら今頃ここには辿り着けていないよ」


本当、よく辿り着けたよなー。

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