第15話 ウーズ村の商人

「強さを考えると相当、魔王の息のかかった大陸には違いないわね」


 魔子さんは続けて、


「もしかして……でも、今の段階ではなんとも言えないわね」


 と言った。村の中を歩いていると、


「いらっしゃーい。いいもの揃ってるよー」


 顎髭を生やした雑貨屋の主人が村の広間で客寄せをしていた。雑貨屋には見たことのない不思議な植物の根や草が並んでいた。


「珍しい物置いてるわね」


 魔子さんが興味津々に近づくと雑貨屋の主人に声をかけた。


「お姉さんお目が高いね。回復効果の高い特薬草。どんな体の異常にも効くマンドラゴラ。最近入荷したばかりの上質な雑貨が揃ってるよ」


 魔子さんは興味津々に商品を品定めしている。


「あれもこれも。なかなかお目にかかれない上物よ……」


「魔子さん。俺、お金ないよ?」


「え? あなたお金もってないの? 王様からもらってるでしょ?」


「一ゴールドももらってないよ」


「宿に泊まるお金も無いってこと? これからどうするの?」


 どうするもこうするも、王様にもらったのは、実質、棒きれだけだ。あの王様やっぱどうかしてる。売れるようなものもないし。


「金目になるようなものはもらってないよ」


 俺がそう言うと、魔子さんは


「私も、もらってないわよ?」


 と絶望的な一言を言い放ったのだった。


「もしかして嬢ちゃん達、文無しかい?」


 店主が訝しげな表情で魔子さんに尋ねる。


「そっ。そんな事はないわよ。ほら、ここに」


 魔子さんはポケットから小さな布袋を取り出し、袋の中から硬貨を取り出した。


「おや、見たことのない硬貨だ。お嬢ちゃんもしかして、旅の者かい?」


 店主はそう言うと、続けて硬貨を取り出して言った。


「この村の通貨はエールだ。ちょっとその硬貨見せてもらっていいか?」


「なっ」


 魔子さんは驚愕の表情を浮かべている。


「この硬貨、銀だな。価値はあるが‥…」


 まじまじと硬貨を見つめながら店主は呟いた。


「文無しならそこの冒険者の酒場に行くといい。依頼を受ければ金になるはずだ」


 店主は硬貨を返すと、そう言って、広間の奥にある大きな酒場を指差した。


「…………わかったわ」


 魔子さんは数秒間沈黙した後、布袋をポケットに閉まって言った。


「行くわよ!」


 こうして、僕達は冒険者の酒場へと足を進める事にしたのだった。

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